編集委員会から
編集後記(第43号・2025年秋号)
―――2025年11月、後世の歴史にどのように語られるのだろうか
▶それにしても昨今の世界―日本をどのように表示すべきか? これだと納得できるものになかなか見当たらない。読者諸氏もそうではないだろうか。まさに“混沌たる世界”である。それを作り出している間違いない張本人の一人が米大統領のトランプだ。小生など「どう考えても、この男は*****と」思うが。それにつけアメリカとは、これ何やの思いがつのる昨今である。そのトランプが最近、支持率最低・不支持率最高を更新しているのは、残されたアメリカの良心かとも思う。
アメリカ分析で本誌で健筆を奮って頂いている金子敦郎さんは、「トランプのスロークーデター第2幕――米民主主義、ほとんど無抵抗/全権掌握・独裁の強権国家へ」と提起。現局面を、「中間選挙へ1年、衝撃波」と分析されている。
▶転じて日本、これまた混迷の度合いを一層強めている。“右翼”の高市政権の登場。一挙に“働き方改革か”ד働き方改悪か”が浮上する始末である。この高市政権、「はじめての女性政権の誕生と」などと評価するだけではダメだ。極めて危険な要素を内包しての出発である。その日本政治に、本誌の住沢さんは巻頭で、「高市・延命自民党よりも野党に課題――政権交代へ、後戻りできない『転換のための政策』による野党結集を」と訴える。自民党が少数与党に転落し、我々一人一人の日本政治への関りが極めて近くリアルなものになってきている。一方、野党にも課題これまた多し。
その他、特集欄・論壇欄・コラム欄に多彩な論考を頂きました。なるほど、と思うもの多しです。是非ゆっくりご覧ください。(矢代 俊三)
▶高市首相の「ワークライフバランスという言葉を捨てます。働いて働いて働いて働いて、働いてまいります」との発言が注目され、批判が集まっている。だが私は、11月5日の国会答弁「残業代が減ることによって、生活費を稼ぐために無理をして副業することで健康を損ねてしまう方が出ることを心配している」の方に注目したい。この発言は、賃金が低いので止むなく長時間労働をするという労働者の実態を捉えてはいると思うからだ。賃金がまともな水準なら、残業の必要はない。要するに賃上げこそが過労死防止への道筋なのだ。しかし、高市はそれには無関心だし、政府も経団連も、労働時間と賃金の結びつきを語ろうとはしない。
▶政府・経団連が労基法解体を目指していると思われる労働政策審議会労働条件分科会の議論では、労働時間問題に大きな時間が割かれている。定額働かせ放題の裁量労働制拡大を求める一方、勤務間インターバルの規制には反対する使用者側は「本人の意思に基づき、健康を確保して、労働者が自由に働く」との「働きたい改革」を言い募るが、賃金と労働時間がリンクしており、賃上げこそが問題解決の鍵だとの議論は皆無だ。私はこれまで、最低賃金が現実の賃金を決めているという実態を繰り返し述べているが、26春闘ではこの国の低賃金状況を、正面から問いたいと思う。長時間労働は低賃金の結果であり、大幅賃上げは生活実態から見て絶対に必要なのだ。(大野 隆)
季刊『現代の理論』 [vol.43]2025年秋号
(デジタル43号―通刊72号<第3次『現代の理論』2004年10月創刊>)
2025年11月12日(水)発行
編集人/代表編集委員 住沢博紀/千本秀樹
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