特集 ● トランプの末路

反人権的国家犯罪の再発防止のために(1)

公訴時効の廃止と不適切な栄典(褒章と叙勲など)の取り消し

韓国・聖公会大学研究教授 李昤京(リ・リョンギョン)

韓国の南西に位置して世界自然遺産にも登録されている火山島の済州島。春の済州島は緑に彩られた自然に、地面には黄色の菜の花が、青い空に向けては淡いピンクの桜が咲き誇る。その中でいっそう目を引くのが赤い椿だ。春を迎えると人々の胸元にも椿(のバッチ)が咲く(下の写真)。

筆者が撮影したバッチのイメージをAIで調整

椿は4・3(1947年3月1日から1954年9月まで済州島で発生した民衆蜂起と鎮圧過程で2万5千~3万人の民間人が犠牲になった事件)で命を落とした人を象徴する花で、その死に対する追悼の意味が込められている。4・3については真相究明のための特別法(2002年1月公布)ができ、法に基づき行われた真相調査結果をまとめた政府真相調査報告書が採択され(2003年)、2006年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が現職としては初めて慰霊式に参席して公式謝罪を行い、50周年の2008年に慰霊と教育のための場として4・3平和公園も開園した。そして2014年からは4月3日が国家追悼日に指定される。写真の椿のバッチは毎年追悼式の参席者に配られている。1998年から東京と大阪でも4月に追悼式と祈念集会が行われている。

4月に済州島へ行かなければどこか落ち着くことができない私は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政府の時も4月3日の追悼式に参加していた。私は、2023年と24年続けて尹錫悦氏の追悼辞(しかも、歴代保守政権の大統領と同様、現職大統領尹錫悦はあれこれ理由をつけて出席せずに、国務総理が代読)に怒りを通り越して呆れていた。分量の少なさはともあれ、内容の面においても問題が多かったからだ。追悼辞で「政府は4.3犠牲者と遺族の名誉を回復するために最善を尽くす」と言っているものの、慰霊式を控えて済州島一帯に掛けられていた4・3の歴史を歪曲する横断幕と与党の政治家の妄言、虐殺勢力に追従する極右団体の集会などに対する大統領としてのメッセージはなかった。「国民統合」のためのメッセージの代わりに、文化観光の活性化や「ITコンテンツ」、「デジタル企業の育成」など4・3とは特に関連のない場違いな言葉が追悼辞の大半を占めていた。そのような経緯もあって、今年の李在明(イ・ジェミョン)大統領の慰霊の出席と追悼の言葉を楽しみにしていたのは私だけではなかっただろう。

今年は五日前倒しの3月29日から30日まで李在明大統領が済州島を訪ねた。本来は李大統領も4月3日の78周年追悼式に出席する予定だったが、国賓として来韓するフランスのマクロン大統領との外交日程が入ったので事前訪問となった。李大統領のこの不参加について4・3遺族や済州島地域社会から不満の声はあまりなかった(ohmynews、2026/04/03)。その背景には李大統領の誠意ある態度と約束がある。李大統領は遺族を慰めながら、依然として勢いが強い済州4·3の歪曲行為の処罰を求める遺族の要望を受けて処罰規定の策定に取り組むと述べ、済州4・3記録館の建設支援や犠牲者補償申請期間の延長なども約束した。具体的で実質的な4・3解決策だ。のみならず、もっと人々を驚かしたのは国家暴力の根絶への約束と決意だった。

反人権的国家犯罪の時効廃止

李在明大統領が国家暴力の根絶のために打ち出した約束は、①国家暴力犯罪の時効廃止、②「拷問技術者 李根安(イ・グナン)」などの国家暴力犯罪者はもちろん、済州での4·3当時の虐殺に関与した者たちに与えられた不適切な栄典(褒章と叙勲など)の取り消しだ。今回は①国家暴力犯罪の時効廃止について検討して、②については次回に紹介しよう。

3月29日に妻の金恵景(キム・ヘギョン)氏と共に慰霊塔に献花して死者たちへ深く頭を下げた李大統領は、位牌が祭られている位牌室の芳名録に「済州4.3事件を記憶しながら国家暴力の再発を防ぐために、民事と刑事時効制度を廃止致します」(図1)と書き残す。

<図1>
済州4.3事件を記憶しながら国家暴力の再発を防ぐために、民事と刑事時効制度を廃止致します

(2026.03.30 大韓民国政策ブリーフィングより引用)

 

1948年の大韓民国樹立以降、権威主義政権や軍事政権の時代を通じて反人権的国家犯罪が頻繁に発生した歴史がある。例えば、済州4・3と朝鮮戦争前後における民間人虐殺、5・18光州民衆抗争に対する武力鎮圧と虐殺、民主化運動に対する拷問と事件の捏造、内国人や在日韓国人を拷問など過酷な行為による北朝鮮スパイの捏造などが、その代表的な例である。このような反人権的国家犯罪は、国家・権力機関が拷問、違法拘禁、殺人、虐殺など様々な形で国民の基本的権利を侵害したり、法律に違反して行う犯罪、つまり国家の公権力の濫用によって発生する点において一般犯罪と区別される。

1987年6月民主革命後、韓国では多くの国家暴力による犯罪の真実の究明と再発防止のための制度的措置の整備が重要な課題として浮上した。主な制度的措置は、刑事裁判、真実究明委員会の設置と調査、賠償などがあるが、とりわけ刑事裁判と賠償においては公訴時効をめぐる議論が欠かせない。公訴時効とは、検察官が一定期間公訴を提起せず、刑事事件を放置した場合に国家(検察)の訴訟権が消滅する制度だ。しかし、国家犯罪の場合は加害側の国家が証拠を隠蔽または操作することによって被害者の適切な権利行使と真実究明が難しくなる場合が多く、被害当時者は二重の苦しみに苛まれてきた。したがって被害者の救済と真実究明のために、公訴時効を廃止するか、延長しなければならないという声が絶えなかったのだ。

この点については実のところ、1995年12月に一部進展があった。「12・12軍事クーデター」(1979)をはじめ「5・18内乱事件」(1980年5月17日、全斗煥・盧泰愚を中心とした新軍部が政権掌握のために既存の非常戒厳の範囲を済州島を含む全国へ拡大して、政治活動の禁止、休校令、報道検閲などを通じて民主化要求を無力化しながら、28日まで光州で起きた民主化運動を不当・不法な方法で鎮圧、人権蹂躙と暴力・虐殺・死体遺棄などをおこなった事件)を司法的に処理するため、1995年12月に「憲政秩序破壊犯罪の公訴時効等に関する特例法」と「5・18民主化運動等に関する特別法」が制定されたのだ。「憲政秩序破壊犯罪の公訴時効等に関する特例法」は、内乱、外患、反乱、利敵等の「憲政秩序破壊犯罪」および「集団殺害罪の防止と処罰に関する協定」に規定された集団殺害に該当する犯罪について公訴時効を廃止した。「5・18民主化運動等に関する特別法」公訴時効停止の特例を定めた。この二つの法に基づき、内乱首謀者である全斗煥(チョン・ドゥファン)と内乱主要任務従事者である盧泰愚(ノ・テウ)らを罰することができた。市民が勝ち取った成果だ。

自宅で「安全な逃亡生活」をしていた拷問技術者 李根安

しかし、公訴時効の廃止や停止は、5・18のような、極めて一部の反人権的な国家犯罪にしか適用されていない。だから、その他の事件や加害者は時効で処罰を免れることができたのも現実なのだ。

80年代に「拷問の技術者」と呼ばれた男がいた。元京畿道(キョンギド)警察公安分室長警察官、李根安(イ・グナン)。1938年生まれの李は、1974年から京畿道警察公安分室で勤務を始める。彼は警察公安分室や治安本部の対共捜査団の勤務の際に「スパイ」の検挙などで手柄をたてて特進を重ね、16回にわたり国務総理表彰と勲章や褒賞を受賞した。捜査中、李根安は絶対に名前を明かさなかったという。その李根安の名前と顔を初めて世に出したのが、民主運動活動家の金槿泰(キム・グンテ)だ。

1988年12月21日「ハンギョレ新聞」(図2)に「金槿泰の心身を追い込んだ 名も無き電気拷問の技術者 京畿道警 公安室長 李根安」の題で写真付きの記事が載ったのだ。1985年8月24日に、民主化運動青年連合(民青連)の議長金槿泰はソウル大学の民主化推進委の背後操縦容疑で連行される。1983年9月に結成された民青連は、1980年光州抗争以後の初の独自的・公開的社会運動団体だった。民青連は機関誌である「民主化の道」を発行し、軍部独裁の暴力的本質を暴露し、民主化運動の理論的指針を提供しながら各種政治闘争を組織するなど、先導的闘争を行った。光州以外の地域では初めて光州民主抗争の記念式を開催し、大胆にも、5・18民主墓域への参拝に踏み切った。このような民主化運動に邁進していた金槿泰は、逮捕されてソウル駅近くに所在する治安本部の南営洞分室に連行され、李根安ら9人の捜査官たちに23日間8回の電気拷問と2回の水拷問を受けた。この時の拷問の後遺症は生涯、金槿泰を苦しめた(金槿泰財団のホームページより)。

金槿泰は当時の裁判過程で「死の影が間近に感じられるたびにアウシュビッツ収容所が思い浮かび、その都度、人間的な絶望に身をすくめた」と法廷で陳述している。李根安が金槿泰を拷問取り調べした事件を基に制作した映画がある。2012年に公開された「南営洞1985~国家暴力、22日間の記録~」(図3)だが、ここでは虚偽自白を引き出すための拷問=権力犯罪の凄まじさがリアルに描かれている。私は2013年7月に東京で、この映画の上映会を行った。関西と東京の上映実行委員会の中心メンバーは、拷問などによって北朝鮮のスパイにでっち上げられた在日韓国人スパイ捏造事件の被害当事者と、彼らを救うために青春を捧げた救援会のメンバーたちだった。

1988年12月21日のハンギョレ新聞(図2)

https://newslibrary.naver.com/ より引用)

「南営洞1985~国家暴力、22日間の記録~」ポスター(図3)

https://www.amazon.co.jp/南営洞1985/dp/B076YWC64Cより引用)

金槿泰は1986年1月に李根安などを告訴したが、当時は顔のない拷問技術者の実名を知らず「氏名不詳の電気拷問技術者」と告訴したため、検察はこれを嫌疑無しとして不起訴処分を下した。検察の決定を不服とした金槿泰は、2年後の1988年に裁定申請をする。88年になって裁定申請をした理由は、85年の拷問取り調べ後、国家保安法違反などの嫌疑で起訴されて1986年に懲役5年と資格停止5年の刑が確定したため、1988年6月30日に特別仮釈放されるまで監獄にいたからだ。自由の身になるや否や、金槿泰は「名も無き電気拷問の技術者」を探し続ける。そして6ヵ月にわたる調査でやっと「李根安」という名前を確認し、李根安から拷問を受けた他の民主化運動の同志たちの証言も得られた。12月15日に裁判所も「李根安」という名前を明記した裁定申請を受け入れて、強制捜査が可能となる。

12月21日の報道で「顔のない拷問技術者」李根安の顔と悪行が明らかになると、「私も、私も」と同じく拷問を受けた被害者たちが次々と現れた。そして、拷問の被害者たちが告発をすると報道される(『ハンギョレ新聞』1988/12/23)と、李根安は12月24日に辞表を出して身を隠して逃亡する。1998年6月、裁判所で11年ぶりに金槿泰が申請した裁定申請事件の最初の審理が開かれたが、李根安は出席せず、8月15日付で公訴時効が期限切れとなり、内部捜査は終了する。警察は李根安を逮捕しないのか、逮捕できないのか、という非難の中で李根安は1999年10月28日に自首するまで11年間、のうのうと自宅で「逃避生活」をしていたらしい。李根安の自首後の11月11日に「民主社会のための弁護士の会」と「民主化実践家族運動協議会」が、ハム・ジュミョンに対する瀆職暴行(日本の特別公務員暴行陵虐罪に当たる)および偽証の容疑で李根安をソウル地方検察庁に告訴する。捜査の結果、拷問などの罪状の事実は認められたものの、「1990年4月19日時点で時効が満了し、起訴する権利はない」と処理された。他の告訴、告発もすべて時効の満了でどうにもできなかったが、唯一公訴時効が残っていた拉北帰還漁師キム・ソンハクに対する違法拘禁及び拷問の容疑(瀆職過酷行為等)のみで起訴され、大法院で懲役7年および資格停止7年が確定した。李根安は、2006年12月に満期出所して、2026年3月25日に死亡した。88歳だった。

拷問捜査官李根安のような存在は、警察にのみいるわけではない。軍事独裁政権下、できないことはない全能の力を持っていた情報機関、中央情報部―安全企画部と陸軍・国軍司令部の捜査官によって拷問取り調べを受けた人は一人や二人でないことは、多くの再審裁判でも明らかになっているのだ。

李在明大統領、済州4・3の単なる追悼を超えて国家暴力の再発防止を約束

李根安のような加害者を処罰して反人権的国家犯罪の再発防止を求める被害者と市民の要望に応えて、表1に整理したように、国会議員たちも反人権的国家犯罪に対する公訴時効停止・廃止に関する法律案を発議してきた。なかでも、尹錫悦勢力による「12・3内乱」を市民と国会議員らが食い止めた2024年の年末に発議された下表8番の「反人権的国家犯罪の時効等に関する特例法案(代替案)」は、当時民主党の代表李在明が党論として推し進めた法案だ。

表 反人権的国家犯罪に対する公訴時効除外等に関する法律案
議案番号法律案名発議の時期成立可否
1第17222号反人権的国家犯罪の公訴時効等に関する特例法案 2005.7.11任期満了による廃案
2第177478号  反人権的国家犯罪の公訴時効除外等に関する特例法案2005.9.21同上
3第1800291号反人権的国家犯罪の公訴時効除外等に関する特例法案2008.7.16同上
4第2012244号刑事訴訟法の一部改正案2018.2.28同上
5第2011989号反人権的国家犯罪の公訴時効除外等に関する特例法案2018.2.19同上
6第2101129号憲政秩序破壊犯罪の公訴時効等に関する特例法の一部改正案2020.6.29同上
7第2101583号反人権的国家犯罪の公訴時効除外等に関する特例法案
(5番と同じ法案)
2020.7.7同上
8第2207082号反人権的国家犯罪の時効等に関する特例法案(代替案)2024.12.302025.4.17.国会で否決

(*筆者整理・作成)

 

「反人権的国家犯罪の時効等に関する特例法案(代替案)」は、国家権力による反人権的犯罪及び捏造・隠蔽行為に関連する犯罪について公訴時効を排除し、国家権力による反人権的犯罪等に起因した被害について損害賠償請求権の消滅時効に関する特例を決めることで、国家権力の道徳と正当性を確保して社会正義を具現することを目的とする。

同法案でいう「反人権犯罪」とは、公務員が職務遂行過程において正当な理由なく犯した殺人罪および軍の指揮官・指揮者が職務遂行過程で正当な理由なく犯した軍刑法第62条の罪(①職権を濫用して虐待または過酷行為 ②威力を行使して虐待または過酷行為)を犯して人を重傷または死亡に至らした場合である。

そして同法案における「捏造・隠蔽行為に関する犯罪」とは、捜査または公訴の提起及び維持に関する職務を遂行する公務員が職務遂行過程で事件の実体を捏造・隠蔽するために違反した刑法第123条から第125条まで、第151条、第152条、第155条および国家安全保障法第12条の罪(職権乱用、違法逮捕、不法監禁、暴行、加害行為、犯罪隠匿、偽証、虚偽告訴等)を指す。ここ15年間行われた再審裁判を通じて捏造の事実が明らかになっている在日韓国人スパイ捏造事件が、まさにこの「捏造・隠蔽行為に関する犯罪」に当たる。

ところが、12月31日に国会の本会議で可決した本法案を、2025年1月22日に当時大統領代理を務めていた崔相穆(チェ・サンモク)副首相が国会に再議を求める、大統領の拒否権を行使した。政府が再議を求めた主な理由は、「捏造・隠蔽行為に関する犯罪」に関す内容だった。すなわち、捜査の公平性侵害、捜査活動の縮小、捜査の遅延、司法制度の崩壊等が生じる「懸念」および憲法上の基本権侵害の「可能性」があるという主張だ。

幾多の再審で警察と情報機関(中央情報部―安全企画部、陸軍・国軍司令部)による捏造・隠蔽犯罪と人権侵害が明らかにされたにもかかわらず、謝罪するどころか再発防止のための責任すら放棄していた政府が、しかも、内乱という反憲法的な犯罪をはたらいた政府が、言うことではあるまい。あげく、同法案は、2025年4月17日の本会議で否決された。与党「国民の力」の反対が多く、一般議決の要件(在籍議員の過半数出席+出席議員の過半数賛成)より厳しい再議決の要件(在籍議員の過半数出席+出席議員の2/3賛成)を満たすことができなかったからだ。

3月29−30日、済州島で4・3の遺族らと会った李在明大統領は、この否決について言及しながら、「永遠に大韓民国では国家の暴力により国民が犠牲になることがないよう、そのような事が起きた場合はナチス戦犯の処罰と同様に永続的に責任を負わせるよう必ず作ります」と約束した(2026.03.30 大韓民国政策ブリーフィングより引用)。

李在明大統領の意思は固いようだ。4月16日李在明大統領は済州4·3事件を扱った鄭智泳(チョン・ジヨン)監督の映画『私の名前は』を観た後、再び国家暴力犯罪に対する公訴時効の廃止および民事訴訟の保障方針を明らかにした。ちなみに、鄭智泳は上記で紹介した「南営洞1985~国家暴力、22日間の記録~」を作った監督で、映画を通じて韓国現代史に通底する国家の暴力性を正面から告発している。

李在明大統領は自身のX(旧ツイッター)アカウント(左のイメージ)を通じて「歴史の真実は覆い隠されても埋もれず、隠蔽された歴史はむしろ現在の生活を妨げる」と書き込み、映画が描いた4·3の傷跡に言及しながら「主人公の胸にある深い傷は忘却を突き破り、苦痛なトラウマで現在を苦しめ、その苦痛は血脈を通じて遺伝し、現在化する」と言った。続いて「真実を告げ、歴史の軌道を正すのに遅すぎることはない」と述べ、過去事の真相究明の正当性を強調した。李大統領は「国家暴力に対する公訴時効を廃止し、民事訴訟の道を保証する」と述べ、「暴力や嘘によって不当な利益を得た者がいるのなら、それを被害者の補償へと充てられるようにします」と明言した。そして、最後に「永遠の責任は正しい記憶から始まる」と述べ、「映画の主人公が名前を取り戻したように、済州4・3の傷に相応しい『名前』を見つけるよう努めます」と付け加えた。

4月6日には国会も再び「反人権的国家犯罪の時効等に関する特例法案」を発議して、現在関連委員会で審査・議論中だ。何回も挫折した反人権的国家暴力による犯罪に対する時効の解除・廃止が、李在明政府の誕生で可能になろうとしているのだ。であれば、これまで屈せず、闘ってきた被害者たちと良心的な市民の努力が、今度こそ実を結ぶのを期待したい。そして、4・3平和記念館に横たわっている「白碑」(白碑の意味は「何らかの理由があって碑文を刻めなかった碑石」で、記念館の案内文には「いつの日かこの碑に名前を刻み立てられるだろう」と書かれている)に相応しい名前が刻まれて立てられる日を迎えたい。

り・りょんぎょん

韓国・聖公会大学研究教授。立教大学平和・コミュニティ研究機構特別任用研究員、非常勤講師を経て現職。2011年2月から2024年まで韓国国家記録院海外記録調査委員。政治学専攻、現代韓国の人権、済州島と日本をつなぐ生活圏と人の移動などを研究。共著に進藤榮一編著『中国・北朝鮮脅威論を超えて東アジア不戦共同体の構築』(耕文社、2017)、訳書に『草 日本軍「慰安婦」のリビング・ヒストリー』(キム・ジェンドリ・グムスク著、ころから、2020)、『在日韓国人スパイ捏造事件――政治犯11人の再審無罪への道程』(金祜廷著、明石書店、2023)など。

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