編集委員会から
追加発信
謹告 ―― 「偽・現代の理論」が最高裁での全面敗訴をうけ、
ついに題字を「言論空間」に変更する
2024年12月6日 現代の理論編集委員会
一貫した私たちの抗議にも拘わらず、私たちの『現代の理論』(WEB版)と同じ名称の雑誌を後から発行していたNPO現代の理論・社会フォーラム(ことの性格上、以下「偽・現代の理論」とします)が9月10日に関係者にメールを送って、《「現代の理論」誌は名称を変更し、「言論空間」誌として発行を継続することになりました。》と題号の変更を伝えています。
偽・現代の理論の「編集長 山田勝」は「裁判結果に左右されることはありません」と強がりを言っていますが、すでに本誌39号(2024年夏号)編集後記でもお伝えしましたように、私たちの訴えが最高裁で認められ、山田勝・古川純(発行人)らの敗訴が確定したからです。
この訴訟は偽・現代の理論に対して2度目に提起したものでした。偽・現代の理論は最初の訴訟でも完全に負けたのですが、私たちが話合いの余地を残すべく「発行済みの本の廃棄やその後の発行差止め」にこだわらなかったのをよいことに、居直って発行を続けたので、やむなく私たちが同じような訴訟を2度目に起こしたのでした。
それに対して東京地裁の判決が2023年8月24日に出され、その主文は、偽・現代の理論を発行しているNPOと販売している(株)同時代社に対して、「現代の理論」との標章を付した出版物の出版、販売若しくは販売のための展示又は頒布をしてはならない、またそれまで出した出版物を廃棄せよ、損害賠償金を払え、と命ずるものでした。
当然の判決でしたが、勝ち目がないにも拘わらず偽・現代の理論が控訴し、知的財産高等裁判所の判決が2024年3月6日に出たのです。もちろんこの判決でも、直近に発行された出版物まで廃棄の範囲を拡張し、損害賠償金も増額して、当方の全面勝訴でした。それでも懲りない彼らは最高裁に上告したわけですが、最高裁はわずか4か月で7月11日に上告棄却、上告受理申立ても認めませんでした。いわゆる門前払いです。
しかしながら、偽・現代の理論はその決定には直ちに従わず、HPでの宣伝も続けていました。こちらからの廃棄状況を説明せよとの問い合わせにも全く応じず、「取次を経由して流通している本はすでに売れたものだから廃棄できない」と、出版界の実際にも反する言い訳をする始末でした。そもそも最初の訴訟結果で法的判断は確定しており、全くそれに従わない彼らの態度には、正直あきれるばかりでした。
実は、今回このお知らせが偽・現代の理論の「題号変更」の発表から3か月も遅れたのは、当然、彼らから今後の措置について何らかの連絡があると考え、私たちが待っていたからでした。しかし、3か月経っても音沙汰はなく、やむなく現時点で、この形でお知らせすることにしたものです。
偽・現代の理論は、「争いごとの発端は2018年10月、デジタル版『現代の理論編集委員会と大野隆』両者(原告)が・・・・東京地裁に提訴したことに始まる」と、その「声明」で言っていますが、この認識が全くずれています。
私たちが紙媒体の季刊『現代の理論』の発行をやめ、WEBでの発信を始めたのをみて、「紙ならいいだろう」と、彼らが発行する「フォーラムオピニオン」と呼んでいたリーフレット誌の表題を一方的に「現代の理論」に変更したことが問題の発端でした。私たちは事前にそれをやめるように丁寧に申入れをしましたが、彼らに聞く耳はなかったのです。現代ではWEBと紙媒体が一体で運用されており、それを区別する方がおかしいということがわからなかった、彼らの頑迷固陋さにこそ問題があったのです。ですから、問題の基本は、同じ名称の紙媒体とWEB媒体が異なる主体によって発行・発信されているとき、それが混同されることが「言論」にとって致命的に問題だというところにありました。その認識が偽・現代の理論には皆無だというところがポイントでした。
実際に、私たちの筆者や読者が、両者の関係が分からずに混乱されるということがありましたし、偽・現代の理論の筆者から私たちに問合せや原稿の送信が来るという間違いも何度もありました。
彼らの「声明」では、「商標権などを振り回さずとも、雑誌とデジタル版との競争的共存を基本とすれば十分」と言っていますが、そこで言っている「競争的共存」とは、ただ「紙ならいいだろう」という彼らの気分に過ぎません。当方からの話し合いの申し入れにも全く応ぜず、「共存」など全く考えていなかったことはどう振り返るのでしょうか。都合の良いときにだけ普通の市民社会に戻り、日ごろは“勝手な観念の世界に生きている人たち”の、文字通りのご都合主義の表明です。
また、「声明」は、
「知財高裁は・・・・新自由主義システムの一つとして商標などの「商品」(市場価値)の有用性を認めるという発想が強く、・・・・商標権の重要性を日本社会に定着させるとの意欲が強い。『現代の理論』訴訟において、紛争当事者の実態に踏みこむことなく商標登録を根拠に商標権優位判決を下したのはこうした背景があるように思う。商業的権利を理由に歴史性や固有性を有する文化的創造物の存在を抹消する風潮を野放しにしてはならない。」
などと、必ずしも意味が分からないことを身勝手に言っていますが、そうした大言壮語こそ野放しにしてはならないように思われます。
繰り返しますが、そもそも今やWEBと紙媒体は一体として扱われており、裁判規範もそのようになっている以上、紙媒体だけに関する「権利」は主張しがたく、紙に関する商標登録がなくとも私たちの主張は十分通用するものでした。そうした社会の「常識」も、彼らの観念の世界では通用しないのでしょう。
さて、裁判の後始末ですが、同時代社は、今なおホームページに偽「現代の理論」を掲載しており(2024年夏号も出てきます。一時は「絶版」の表示がありましたが、12月6日現在、その表示も消えています)、「廃棄」してはいません。バックナンバーも表示しています。当面、取次などのどの範囲に「廃棄」の連絡をしたのか明らかにせよ、WEB上で購入可能になっているところへも廃棄を伝えて、掲載をやめさせよと、申入れをすることにしています。場合によっては、取次に対して直接の申入れをすることもしなくてはなりません。
以上、正直のところうんざりしながらお伝えしているのですが、誠に恐縮ですが読者の皆様にはどうか事情をご理解いただきたく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。