本誌編集委員の本

語りつぐ 東京下町労働運動史』刊行される

小畑精武著(旬報社)

このほど本誌編集委員である小畑精武さんの著書『語りつぐ 東京下町労働運動史』(旬報社、2200+税)が刊行された。例えば東京東部の下町・亀戸は100年前、有名な「女工哀史」の町だった。彼女たちは苦境から脱出するため立ち上がり、血のにじむような苦闘の末、団結権や外出の自由、労働協約などを勝ち取った。また東京市電のストライキが決行された地でもある。

著者が設立や運営に参画している下町ユニオンの山本裕子前運営委員長は「2011年から、下町ユニオンのニュースに100回・10年にわたって連載された小畑精武さんの力作は、江戸川を中心とする東京東部の労働運動に精力を注いできた強い思いに貫かれている」「下町ユニオンが活動するこの地域こそ、ここで働き生活し、ギリギリの要求を掲げて立ち上がった数知れぬ工場労働者や女工たちの怒りと汗がしみこんでいる町である。『祖母が明治通りデモする女工たちを見た』という文房具屋の店主。団地は紡績工場跡地であり、小学校で女性労働者の決起大会が開催された熱い息吹が吹く町」「東部労働運動の歴史を知ることで見えてくる<現在と未来>がある」と。本誌でも2018年夏から10回にわたり「温故知新ー下町の労働運動史を探訪する」として連載した。

労働運動が停滞し、原点に戻るべきだと指摘される昨今、本書に描かれた数多くの事例は歴史の知見のみならず、現在をどのように生きるべきかを読む人に問いかける貴重な示唆に富む一冊であり、小畑さんの心からの訴えの書です。是非手に取っての一読をお勧めします。(矢)

 
『語りつぐ 東京下町労働運動史』

目次

はじめに

江戸時代に下町で「ストライキ」⁉ ――労働運動の始まり

Ⅰ 明治時代

1 労働組合への道

2 東京市電ストライキ一〇〇周年

3 労働者保護・工場法への道

Ⅱ 大正時代――震災前

1 闘う東部労働運動の成立

2 東京モスリン吾嬬工場ストライキ

3 山内みな 東京モスリン女工から運動へ

4 世界大戦と米騒動、大島製鋼所争議

5「江東に生きた女性たち」

6 第一回ILO労働会議

Ⅲ 大正時代――関東大震災「亀戸事件」

1 亀戸事件 前夜

2 関東大震災「亀戸事件」その日

3 労働組合(総同盟)の救援活動

4 朝鮮人・中国人虐殺

 

Ⅳ 大正時代――震災後の労働運動

1 東大セツルメントの建設

2 南葛労働会から東部合同労組へ

3 震災後の労働運動

Ⅴ 昭和時代――戦前

1 あいつぐ労働争議

2 女性たちの闘い

3 北原白秋の大川風景

4 東大セツルメントのその後

5 渡辺政之輔のその後

6 下町の朝鮮人労働者

7 東洋モスリンの争議

8 大島製鋼所の争議

9 反ナチ反ファッショを貫く 山花秀雄

10 打ち続く東京交通労組の争議

11 賛育会とあそか会

12 玉の井の〝女性労働〟

13 「華やかな女性の憤慨」

14 保育所をつくり働く

15 地下鉄争議・もぐらのうた

16 東京電燈の組合争議

17 東武鉄道の争議

18 東京瓦斯(ガス)労働組合の歴史

19 打ち続く東京交通労組の闘争―2

Ⅵ 昭和時代――軍国主義へ

1 日本主義労働運動

2 東京モスリン亀戸、金町の闘い

3 東京印刷争議と出版工クラブ

4 広がる中小企業の闘い

5 東大セツルメントの閉鎖

6 労働者消費組合運動と戸沢仁三郎

7 木下川《きねがわ》地区の労働史

8 産業報国会への道

Ⅶ 昭和時代――戦時下

1 嵐をついて・戦争下での印刷工

2 戦時体制下の「活動家」

3 書き残した争議

4 戦時下のたたかいと抵抗

5 東京大空襲の下で働き続けた

下町労働史(戦前編)を終えるにあたって

過去を知り、未来への歴史を拓く

 

おばた・よしたけ

1945年生まれ。東京教育大学卒。69年江戸川地区労オルグ、84年江戸川ユニオン結成、同書記長。90年コミュニティユニオン全国ネットワーク初代事務局長。92年自治労本部オルグ公共サービス民間労組協議会事務局長。著書に「コミュニティユニオン宣言」(共著、第一書林)、「社会運動ユニオニズム」(共著、緑風出版)、「公契約条例入門」(旬報社)、「アメリカの労働社会を読む事典」(共著、明石書店)

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