編集委員会から
編集後記(第39号・2024年夏号)
内外の政情は“複雑怪奇”ではすまされない。今日も罪なき人々が殺されている/最高裁がニセ理論の上告を却下―門前払い
▶結果には必ず原因があろう。欧州各国に見る極右勢力の伸張。人権・民主主義派はかろうじてフランスやイギリスの政局に見られるように対抗してるのか。かたやアメリカをみると。
バイデンとトランプの如何ともしがたい大統領選から、バイデンの撤退で急転直下新局面を迎え不謹慎ではあるが“面白くなった”と言える。あのトランプがアブついているとか。確かにトランプは悪運が強い。あの銃弾があと2センチずれていたら即死だっただろう。生き残ったトランプが圧勝気分に浸ったのはは分かるがほんの一時だった。バイデンの撤退―カラマ・ハリス登場でにわかに情勢急変・緊迫の様相だ。
▶トランプで一言触れておきたい。この男、よく“トランプがウソをついた”とメディアでも報じられ、多くの人が理解するところである。深刻な問題なのは、“トランプのつくウソ”ではなく、“トランプはウソつきだ”と言うことだ。この表現を使うには注意すべきだが、“嘘つき”というのは人格に関わることだ。それはいわば病的な現象なのであって、アメリカの優秀な精神医学の専門家の分析対象ではないのか。その人物が大国・アメリカの40%の支持を集めていることが、現代アメリカの深刻な病理現象と思わざるを得ない。暗澹たる気分の日々が続く。
▶今号執筆陣の論稿タイトルを見ても、「闘うヨーロッパ――合理と非合理の決戦へ」「トランプ氏の夢は専制支配者 特異な自己崇拝主義」「緑の党が失墜、極右AfDが勢力拡大するドイツ」「世界は大転換の兆しーそれは迫りくる破局への警鐘でもあるのか」など。目を転じてわが日本も惨憺たる状況に変わりなし。要するに政治や社会の“劣化”の一言に尽きるのではないか。今号筆者は、「新自由主義を終わらせ、社会を立て直す」「立憲民主党の地方議員出身女性議員の新しい風に期待する」「自国第一主義者は舌の数に限りがない」などが論じられている。
そして先の都知事選に象徴的に表れたSNSなどによるネット社会の病理があらわになりつつあること。何よりも新聞やテ レビなど既存メディアの劣化は深刻と言わざるを得ない。“心あるマスコミ人よ決起せよ”と訴えたい。このような日本・世界の動静は我々世代はともあれ、子供や孫たちにとっては深刻、今を生きる我われの責任の重さを思う昨今である。
(矢代 俊三)
偽・現代の理論の提訴を最高裁が上告棄却、当方の完全勝訴確定する
▶読者の皆さんにご迷惑をおかけしている「偽・現代の理論」問題について、本誌31号「謹告」で編集委員会の立場をお伝えしたが、そこに記載した第2次訴訟(2022年8月5日提訴)が当方の全面勝訴で決着したことをお知らせする。東京地裁の判決が昨年8月24日に出され、その主文は、偽・現代の理論を発行しているNPOと同時代社に対して、「現代の理論」との標章を付した出版物の出版、販売若しくは販売のための展示又は頒布をしてはならない、またそれまで出した出版物を廃棄せよ、損害賠償金を払え、と命ずるものだった。
▶勝ち目がないにも拘わらず彼らが控訴し、その知的財産高等裁判所の判決は今年3月6日に出た。もちろんこの判決でも、直近に発行された出版物まで廃棄の範囲を拡張し、損害賠償金も増額して、当方の全面勝訴だった。それでも懲りない彼らは最高裁に上告したが、最高裁は7月11日に上告棄却、上告受理申立ても認めなかった。門前払いである。しかしながら、偽・現代の理論はその決定にも従わず、HPでの宣伝も続けている。こちらからの廃棄督促にも全く応じない。そもそも最初の訴訟結果で法的判断は確定していたのに、全くそれに従わない彼らの態度には、正直あきれるばかりだ。
▶問題の本質は簡単で、「謹告」でも述べた通り、独自に政治的・思想的な情報を発信する媒体が別々に同じ名称(題号)で出されることがおかしい、まずいという社会常識上の問題であるが、彼らはその常識を理解できない。彼が、ひたすら自己の主張を繰り返す「独善的」頑迷から抜け出さねば、この国の民主主義の危機を語る資格などない。(大野 隆)
季刊『現代の理論』[vol.39]2024年夏号
(デジタル39号―通刊68号<第3次『現代の理論』2004年10月創刊>)
2024年8月7日(水)発行
編集人/代表編集委員 住沢博紀/千本秀樹
発行人/現代の理論編集委員会
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