特集 ● 内外の政情は”複雑怪奇”

立憲民主党の地方議員出身女性議員の新しい風に期待する

高木真理・立憲民主党参議院議員に聞く

語る人 高木 真理(泉「次の内閣」ネクスト厚生労働大臣)

聞き手 住沢 博紀(本誌代表編集委員)

1.佐々木毅ゼミから東京銀行を経て枝野幸男秘書に

住沢: 高木真理さんは、さいたま市議2期、埼玉県議3期を経て、2021年から立憲民主党参議院議員です。女性議員でこうした長い期間、地方議員の経験を持つ人は少ないですが、参議院議員一期目にも拘わらず、立憲民主党のネクスト厚生労働大臣に就任しています。女性政治家の躍進が日本でも期待される現在、高木さんは若い世代の女性にとっても、一つのロールモデルになるかと思います。

まず東大法学部での学生生活、卒業されて旧東京銀行に入り、それから地方政治家に転進された経緯から聞かせください。

高木真理さん

高木: 最初は司法試験を受ける人が多いコースにと思ったのですが、政治学系の授業を聞いているうちに、こっちの方が興味あるなと思って政治コースに移りました。89年の都議選では、友達が最終日だから手伝いに行こうよといって連れていかれた候補者のところで、行ったら面白くなっていきなりマイクを持って練り歩きをしてしまったりと、後々の人生で選挙にかかわり続ける最初の機会もありました。

その後、東京銀行に就職するのですが、1年生も全員加盟だから組合活動もやりなさいというところでした。ある日参加したら、ちょうど育児休業法が入るタイミングで、うちの銀行ではどう展開していったらいいかを話し合う会で、俄然議論が面白いと思ってしまい、2年目の配属希望先に労働組合も書いてしまったりしました。後で知ったのですが、銀行における組合はエリートルートで、超優秀な一部の人しか出向しないそうです。希望するとはおこがましい。

結果的には銀行は結構早く辞めてしまい、次にどうするか考える間に京都に行って、京大で聴講生となるのですが、その中で細川護煕さんの日本新党ブームの選挙があるわけです。で、全然知らない京都で選挙だというので、候補者を調べて前原さんという人がいいな、と思って選挙ボランティアに行きました。そして後々、その時の知り合いに誘われて、当時導入が検討されていた介護保険の話を聞きに行き、そこにいらした国会議員のお一人から「あなた埼玉から来ているなら、枝野さんという若くて頑張っている議員がいるから、応援してあげて」と言われ、それがきっかけで枝野さんの秘書になったという流れです。

住沢: ゼミの先生はどなたですか。

高木: ゼミは佐々木毅先生です。佐々木先生のゼミで勉強させてもらったのは、すごい経験でした。

住沢博紀

住沢: 政治改革の旗振り人ですからね。その当時、90年代政治改革の時代ではあったとはいえ、政治学専攻の女性はかなり珍しかった。なんかその時に佐々木教授から言われましたか。

高木: 女性ということで特には言われませんでした。ただ、私の世代は改装された安田講堂で卒業式ができた年なのですが、それまで本郷では学園紛争以来封鎖されていた安田講堂を見ていて、政治への興味で動いたりすると、学生運動みたいなことになっちゃうんじゃないかという空気はあったと思います。そういう中だったので、女子学生で、政治に興味ある人は少なかったかもしれません。

住沢: よく考えると、90年代に、政治改革の幾人かの主要人物に会ったわけですよね。佐々木さん、前原さん、それに枝野さんとか。高木さん、当時は20代ですよね。政治のイメージってどういう風でしたか。

高木: 最初、怖いと思いました。枝野事務所の門をたたいた時も、政治家の秘書になろうというより、地域の人たちと地域で活動する、選挙ボランティアさんのコーディネーターの仕事をしたいというものでした。政治は怖いけれど、怖くない部分なら大丈夫だろうという感じです。

ただ、そのうち地元事務所全般にかかわる仕事をするようになると、20代女性秘書では赤子の手をひねるように騙してくる人がいるかもと思いましたが、枝野さん自身が信念がしっかりしている政治家であったことと、私自身も信念で突破していけば、悪い人は寄りついて来ないだろう、巻き込まれないだろうと腹を固めました。

住沢: 個人史として、東京銀行に入られて、組合活動に関心持たれて、しかしそこを早期に辞められ政治の世界に入ってくる、すごい飛躍がありますが。

高木: そうです。だから、なかなか説明がつかない。いろんなことがあって、風が吹けば桶屋が、というわけじゃないけど、いろんな段階が全部繋がっていくうちに、最終的には枝野事務所にいるという。

住沢: 若い学生に自分の経歴を話して、政治の世界に入ってくださいという時、どういう風に説明しますか。自分の個人的な体験と合わせて。

高木: 今、状況も変わっていますから、女性がチャレンジするのもそんなに構えずにできると思います。政治のイメージは怖いかもしれないけれど、本当に自分で信念を持ってやっていけば、怖いことに巻き込まれない、ということは身をもって伝えてあげられる。むしろワクワクしながらチャレンジしてほしいなって思いますね。

2.分権の時代のさいたま市議、埼玉県議としての議会経験

住沢: それではさいたま市議会。たまたま2003年ですので地方分権が始まった時ですよね。当時、分権に対するちょっと過剰な期待感があったんですけども、その辺は今から考えてどうですか。

高木:はい。そういう意味では、その期待感もすごくわかるし、そうするんだという思いも強かったですね。ただ、既存のものを分権仕様に変えるんだというより、さいたま市自体が合併した大変な時期で、そこから政令市になり、岩槻区も加わるという大きな波の中にあったので、それらの具体化を進める中で、「地方主権」じゃないですけれども、自治体主導で自分たちのことは自分たちでやっていこうということだったと思います。気概に満ちていました。

議会での最初の頃の質問は、枝野さんの丁々発止の野党質問のイメージでやってしまい、二元代表制の市議会にはふさわしくない責め方になってしまって、職員さんとの関係も含め、後から反省したりもしたのですが。

住沢: その時の1番のテーマはなんでした。

高木: それは立候補の原点でもあるのですが、「一人一人の声が届く市政に」ということでした。合併で声が絶対届きにくくなる、100万人という大きい所帯になるので。それをできるだけ一人ひとりの、あるいは地域ごとの意見が通りやすい仕組みをどう作るかというところに関心がありました。 加えて任期途中で出産をしたので、子育ての環境整備などにも力を入れました。

住沢: 議員として問題なかったのですか。出産を巡り休業というのは、当時。

高木: なんと欠席届が事故扱いでした。国会では橋本聖子さんが会期中に出産されたりしていましたが、当時の市議会の欠席届は理由が「病気」か「事故」の二択でした。休みの制度がない。おかげさまで産後の体調は良かったのですが、これですぐ私が復帰してしまったら、本来労働基準法ですべての産婦に産後休暇を使用者は取らせなければならないところ、休ませなくても大丈夫じゃないかとなってしまう、それはいけないからしっかり休もうと、出産という事故で議会を休みました。

住沢: 多くの地方議会などで、子供を出産する人も当時はそんなに多くなかったと思うんですが、そういう方々との連携とかなんかされましたか。

高木: それはなかったです。今は色々、ママ・パパ議連だったり、育児の連携というのはあるのですけど、当時、周りの仲間と繋がっていうところまでは、ちょっとなくて、目の前のことで手一杯すぎたのかもしれません。

住沢: 埼玉県議の3期の体験と課題に移ります。県会議員の役割で、市議会と県会議員はやってみて、一番どういう風に違いましたか。

高木: どの側面をお答えするかで難しいのですが、一番辛いのは市民からの関心が、市政にはあるけれど、県政にはほぼないというところですね。有権者の皆さんも、身近な話題の市政のことは関心を持っていて、近所の噂話にも上ったりします。でも、県はちょっと遠くてやっていることが見えにくく、議会の登場人物もほぼ知らない。報道も少なく、何が起きているかわからないし、興味が持ちにくい側面があります。

例えば国会のことは報道もされ、国民も関心持って世論をつくるので、少数であってもその少数の方が正しい、変えるべきだと世論が動けば多数を正す力が働きます。しかし県議会は、すごくおかしいことが県議会で起こっていてもそうはならない。おかしいことがあっても、「それでもなお諦めない」と自分を鼓舞して頑張ろうと思うしかないみたいなところが一つですね。

県でこそと取り組んだテーマは医療の問題。人口当たりの医師数が全国一少ない埼玉県の現状を何とかしなければならない、さいたま市一市では解決できない広域の問題で、医療体制を含めて、充実に向けて取り組みました。

3.政党と総支部活動の関係-政治資金問題もふくめて

住沢: ちょうど県会議員をされている時期は2011年から2022年までですから、民主党政権ができて、党が分裂して、安倍自民党が復活して菅政権まで、激動の時期ですよね。その時に中央が分裂したり再結集したりして、地方がどうするかと。例えば希望の党の時には、枝野さんが決意して立憲民主を立ち上げましたが、地方の方ではどうでしたか。

高木: 埼玉は少し特殊かもしれません。全国的には、私たちの仲間の地方議員は当時民進党に所属をしていて、最終的には希望の党の解散時に民進党も解党となり、立憲民主党か国民民主党に所属を変えるという流れでした。しかし、私のようにずっと枝野さんの総支部所属できている議員はとにかくまず、離党手続きがどうとか地方議員の入党手続きがどうとか、そういうのはともかく枝野さんの選挙を立憲民主党として応援しますみたいなところから始まりますよね。

その過程を見ている県議会の会派のメンバーも、高木さんがそう動く事情はわかるという感じだから、特にそこで割れたとかっていう感じにはならないし、その後、立憲に来る人、国民民主党に行く人、あるいはどちらにも行かずに無所属で両党と友好関係を保つ人と、いくつかのパターンがありました。でも、みんなそれぞれの事情がわかるので友好的だし、政策面ではそれぞれ背負っている政党や応援してもらっている労働組合の違いから、意見が対立することもあるのですが、そこは会派としてまとまるためにどうしたらいいかを毎回考えながら、合意をなんとか図りながら進んでいました。

住沢: 現在の政治パーティと裏金問題で、自民党が典型的ですけども、小選挙区と政党支部、政治家が三位一体となり、とりわけ世襲議員の選挙区では、政党の選択ではなく、家業としての政治家の選出となっています。そしてその小選挙区を維持するために、多くの現地秘書が必要とされ、その地域の自民党系、あるいは保守系の市町村議会、県議会の議員との密接な関係を維持するために、多くの資金が必要であるといわれています。

つまり何が言いたいかと言いますと、政治改革の時のモデルにされた、ヨーロッパでの政党選択選挙という場合、その地域の党員の集会とか決議とか議論とかが前提として存在しており、その集約として候補者選定や政策提示があるわけですが、日本では全部ヌキにされています。その点で、立憲民主党の支部活動は、自民党とは異なりますか。

高木: ヨーロッパ型の政党選択選挙をモデルとする時、政党組織、党員と政党組織が最初にあって、その中で候補者になる人、総支部長とかも決まっていくべきだというのもわかるのですが、日本の場合、何もない最初に党員や組織をどうやってそこに作るのかという問題があります。そこに党員も党組織も何もなければ、私たちとしては、やはり総支部長になる人が人としてそこに行って党員を集め、というところから順番としてやらざるを得ないという感じですね。

自民党も聞くところでは、国会議員や候補者によっても違うのでしょうが、国会議員が小選挙区内の全地方議員を押さえているというより、どちらかというと地方議員はすでに存在する豪族みたいな感じで、彼らのうちどのくらいが上から降ってきた大将を支えたいと思うかで、その支部のあり方が決まるところもあるそうです。

立憲の方が、総支部長が決まったら地方議員はその総支部長と協力しながら選挙をとにかくやっていくイメージはあります。中選挙区制の時代に比べて、党本部の公認決定権が強くなったというのはよく言われますが、地域支部のあり方やそれが中選挙区の時代と比べてどう変わったかっていうのは、ちょっとわかりません。

住沢: 地方議員を体験されてそういう目で見た時、現在の政治資金をめぐる議論で見えてくる光景はどうですか。

高木: 現在の議論は、これもまた政党によって全然違うと思いますよ。政党として交付されているお金の中から、政党活動の範囲内で地方議員の活動に出してもらう部分、一緒に広報してもらったりとか、あるいは選挙の時にももちろん公認をもらうんで応援してもらう部分ってあるんですけど、自民党さんみたいに、金配るとかこの金渡すからこれやってこいとかっていうことは立憲にはないので、それは全くなんか違う話なんですよね。

だから、自民党でこういうことが起こるのは、地方議員と総支部長との関係が 全国の仕組みとしてこうなってるから、裏金問題が起こるという話ではないと思います。彼らにはお金を配るカルチャーがあって、そのためにお金を集めなきゃいけないという彼らなりの現実がある。しかしお金を配ってはならない、それを絶つということになれば、この問題は解決する。私たちはそこが断たれても何も困らないから、早く政治資金をきちんと規制しろといっているわけです。

4.立憲民主党の参議院議員として、ネクスト厚生労働大臣に

住沢: では、立憲民主党議員になられてからのお話を伺います。 注目しましたのは、1期目でネクスト大臣になられた。参議院と衆議院の議員の割り当てもあり、女性の割当てもあると思うんですけども、その辺はどういう背景があったのですか。

高木: 拝命した時には大変びっくりしました。まだ一期目だから、背景も何もあまりわからないような状態でいただいたお話なので、頑張ってやらせていただきますっていうことだったんですが。

おそらく前任の大臣をなされていた方、早稲田ゆきさんが地方議員が長くて、まだ2期目の衆議院議員ですが、すごく一生懸命取り組まれて成果も出して何の問題もないんだけど、この厚労のネクスト大臣って、ものすごく国会でやらなきゃいけないことのボリュームが多いのです。それで ここは違う人に担当させて早稲田さんも地元で活動できるようにした方がいいんじゃないかってことじゃないかなと、私は思っています。なので、私の発信とか議会での活動がとびきり目立っていたからここを差し替えようとかっていうことより、育てる人事の中で勉強して、もっとできるように今ネクスト厚労をやりながら頑張ってこいという党の御下命かなと思っています。

住沢: 高木さん個人が重視してきた政策と、立憲民主党がチルドレン・ファーストとか安全・安心な生活とか言っていることが重なりますよね。ということは、立憲民主党が次の総選挙になって基本政策とか党のイメージを出す時に一番軸になるようなことをネクスト厚生労働大臣として担当されていますよね。自民党なり維新の会と区別され、国民に鮮明な印象を与えうるようなものを構想されていますか。

高木: 今、厚労部会で1つのビジョンを出そうとしていまして、それは介護の分野です。1内閣っていうのもおこがましいですが、1部会長のもとで何か1つ政策を打ち出せたらいいのではないかということで。

これから後期高齢者、85歳以上の人がずっと減らない年代が延々続きます。介護は本当にこの人口減少の社会の中で大変な問題で、これを財政面でもどう考えていくのかも大きいし、介護、今いろんな分野で人手不足の状態になっている中で、介護にさらに人が来てくれなくなったら、どうやっていくんだろうなど、すごく大きな問題なので、ここに対する中長期ビジョンを出そうっていうのをやっています。

いろいろな先生方をお呼びして勉強することをしてきて、それらを聞いてきた部会メンバーの頭の中には色々考えがありますが、それをまさに議論をぶつけあいながら、9月の頃までに提出して、ネクストキャビネットの閣議にかけて了承を得られるように、進めていきたいと思っています。

住沢: 総選挙の目玉になる。

高木: そうしたいと私の部門では思っていますけど、最終的にどうなるか。政権交代に向けて発していくメッセージとして何が響くものになるか、難しい問題です。私は枝野さんが言ってきたような、「お互いさまに支え合う社会」がものすごくこの日本にとって必要な政策の基本だと思うけれど、これ、有権者にわかってもらうのが、結構難しいんですよ。 福祉はわかったから経済どうするんだ、ともなりがちです。

そうするとやっぱり、理念としては繋がっているのだけど、経済の切り口から入っていって、お互い様に支え合う世界を説明しなきゃいけないかもしれない。そうすると、公約のトップに介護が来るのか。今回の都知事選で蓮舫さんもそうですけど、若い人を支援する、そこは凄く大事で、そうじゃなきゃ少子化も止まらないし、少子化止まらなかったら高齢者も大変になってしまうというすごい根本なのですが、これを言った時に、どのくらいそれがどの人にも関わっている政策で、自分にとってもそうなった方がいいんだって思ってもらえるかというのは難しい。介護はこの国の大問題だから絶対やらなきゃいけないので、厚労部会は推していくんですけど、最終的に党の政権戦略のどの辺にどう入ってくるかちょっとわからない。

住沢: そうであれば立憲民主党の覚悟というのを聞きたいですね。介護保険を作る時に1つの議論になったのは、自宅介護に対して報酬を払ったドイツモデルですよね。日本ではその制度は採用しませんでしたが、事実上家族介護をやっている人がヤングケアラーもふくめているわけです。その辺もう一度制度設計を考えなければいけないと思う。

もう1つは、非常に無責任だと思うのは、介護保険を設計した大先生たちが、最初から介護保険が破綻するのはわかっていたと今頃言っているんですよ。財務省の増税政策だったという人もいます。そういう中では抜本的なことを出さないと現実問題として難しいと思いますけれど、立憲民主党がどこまで、例えば介護のために外国人を入れるとかという覚悟っていうのはあるんですかね。

高木: ことの深刻さは十分わかっているので、最終的なところではそういう抜本的なことも必要になってくると思います。人材供給の面で外国人の力を借りるというのは、日本が今後外国人から働き先として選ばれる国にしていく必要があるのですが、必要な選択肢の一つですし、介護従事者の負担を減らす介護ロボットの活用もあります。介護が、必要とするすべての人に届けなければならないベーシックサービスであることを考えると、地域によっては、足りない働き手の確保を公が責任を持って確保すべきではないかという議論も出てくると思います。少ない働き手でも可能な介護を考える中での施設介護のあり方も、考えるべき論点です。

あとは、この難事に取り組む覚悟はもちろんベースにあるのですが、その取り組みの必要性をどう段階的に有権者の皆さんに分かっていただくかっていうのも大事なので、その辺りも党内で議論しつつ、中長期でこういうものを目指す必要があるねというところまでは出したいと思っています。

また、そういう方向が必要だとなった上で、どういうステップを踏んで次第にあるべき姿にしていくのかも、国民の皆さんに安心して改革の方向を理解していただくには必要なことだと思います。

5.女性の躍進と政権交代を担う立憲民主党の「新しい」イメージのために

住沢: 統一教会問題、裏金問題、それに岸田首相の「やっている感政治」への批判など、自民党自身が政権政党としての統治能力を失いつつあります。じゃあ何に変わるかという時に、この変わる選択肢が難しい。立憲民主に期待はあるんだけども、その中身が見えない。

今、蓮舫さんが、子供や若い人への投資が大事だと1つの軸を出しているわけですよね。高木さんはこれから続く高齢者の介護問題という、もう1つの重要な課題を出されています。それでも今までの政党とは違うんだというイメージがなかなか立憲民主には出てきません。

それともう1つはやはり女性の活躍をめぐる問題だと思うんです。私たち『現代の理論』は、立憲民主党に対して男女共同代表制の採用を提案しています。以前、枝野さんと話した時に、人材がいないんです、誰がやるのですか、辻元さんなどに限られているじゃないですかって話になるんですけども、その辺で西村智奈美さんが幹事長をされましたが、短期間で重鎮の岡田さんに交代されました。女性が活躍する新しいイメージって出てこないんで、その辺はどういう風に考えられますか。

高木: 出そうとしているんですけどね。立憲民主党もご存じだと思いますけど、ネクスト内閣NCも男女同数にするということもありますし、参議院は 会派でいくと男女は同数になっていて、38のうち16女性ということです。参議院は想定候補者の段階で半数にしていますし、そこを意識して候補者の擁立も含めてやっているので、気持ちは自分たちでは一生懸命取り組んでいるつもりです。

結果的にその姿がそうは見えないというのは、女性で目立つ論客の数がまだ少ないということかなという風には思います。枝野さんが候補者不足というのもわからないでもない。そのクラスで本当に競える人となった時に、数で比べたら女性が少ないでしょうねと思います。ただ、これも女性の国会議員が増えていく中でまた変わっていくとも思います。

住沢: 高木さんもその1人として期待されているのではないですか。

高木: 頑張らなければ、ですね。今回予算委員会の委員をやって、国会論戦の中でどういうやり取りをするかというのは、技術の側面もあるんですよね。私は地方議会出身で、一般質問では作りこんできた原稿を読み上げると執行部の答えが返ってくる、という形でやってきました。市議会の時も県議会の時も、首長を応援した側の会派にいたので、野党の立場で食い下がって、時間をどう使ってどこまで引き出すかというのは、今回予算委員会で直接準備の段階から含めて先輩たちを見ていて、大いに勉強になったので、ここからさらに磨いていこうと思っています。

住沢: 先ほど話を聞きました、女性の優秀な人の候補者、リクルートの問題で、一時期、立憲民主は難しかったと思うんですよね。しかし今、風向きが変わって、比較的有利な状況だと思うんですが、高木さんも含めてね、その女性議員の中で優秀な方をリクルートしていって立憲民主の1つのイメージを作っていくということで、なんか方針ありますか。

高木: 女性の活躍は党としても求めているし、そういう意味では今、女性候補者を応援するキャラバン、「全国女性キャラバン」をやっていまして、去年から展開しています。擁立した女性候補を研修で支えたり、相談できるメンター制度を設けたりして支援もしています。

住沢: 「全国女性キャラバン」は、市会議員とか県会議員も含めて。

高木: そうです。党企画なので、国政候補の女性総支部長のところでやることが多いですが、地方議員の応援もします。私、去年の仙台の市議選、県議選の時にも、その女性キャラバンで応援に行きました。そうやって、こうみんなで応援しようと。

住沢: で、どうですか、成果は。

高木: いや、増えていますよ。統一地方選挙では60名の新人女性議員を誕生させました。先ほど女性が一時期集まらなかったっていうお話があったんですけど、その時は男性も集まらなかったのであって、別に女性に特に嫌われていたわけではないと思います。その期間もずっと一貫して女性の候補者を応援し続けたし、あまりイメージにはないっていうことでしたけど、我が党は女性半分にしようという方針をいろんなところでやっているんです。LGBTもだし、そういう多様性とか女性活躍は相当頑張ってはいます。でも、それが期待してくださっている方にも、まだ姿としてあまり見えてないのだなっていうのが、このご質問いただいて改めて思うところです。

住沢: 話は極めて具体的で、選挙区の空白のところにどれだけ有力な女性を入れられるかっていう、目標ははっきりしていると思うんですけども、

高木: おかげさまで、公募に優秀な女性が手を挙げてくれたりとか、政治スクールの告知をしたら500人近くの応募があったということです。なかなかの経歴の人もチャレンジしたいと思ってくれているという情報がありますので、そうした中から女性を積極的に立てていきたいということです。

住沢: それを早めに出せばすごいイメージ変わるんじゃないですか。例えば30人の新しい女性候補者が決まりましたとかいって出せば。これまでの自民党政治への批判でこれだけ集まりましたっていうことで、立憲民主党がその受け皿になることを世に示せれば、効果は大ではないですか。

高木: どうしても決まったところから発表していくのでね、数のインパクトがないのですが、なるほど。ちょっと選対に提案してみたいと思います。ありがとうございます。

住沢: 地方議員としてはベテランだが、国会議員としては新人の高木真理さんも、そうした女性議員の1人として大いに期待されている気がしますが。

高木: ずっと地方議員でやっていこうと思っていたところ、女性候補者を擁立しようとした県連から思いがけなく声をかけてもらって、国政に身を置くことになったわけです。

今、こういう立場になって、地方議員さんや若い議員さんと話していると、「高木さんが市議の時に、子どもも産んで育てて議員活動もやってきたらしいから、なんかやれば自分にもできるんじゃないか」と思ったという人に出会います。

だから、そういう影響力も見える範囲ではあったのかなっていうことだし、それを国会議員として全国で色々応援できればと思います。候補者になっている人が色々迷ったり、悩んだり、立ち止まったりする時でも、こうやれば大丈夫だよみたいなのをアドバイスしていくことで、また新たな女性議員を生み出していく力になればいいなと思いますね。

住沢: ロールモデルとして、蓮舫さんや辻元さんが本来期待されたんでしょうけども、このお二人、批判キャンペーンも凄く、ネガティブなレッテルを貼られましたからね。高木真理さんは異なるタイプのロールモデルとして、立憲民主党の幅を広げられるのではないでしょうか。

6.追加質問:都知事選結果への個人的なコメント

住沢: インタビユーの直後の都知事選、都議選補選では、蓮舫候補は第3位に終わりました。石丸伸二元安芸高田市長は、SNS選挙と若者世代・無党派の支持を受け第2位、また都議補選では自民党は2勝6敗で終わりました。この選挙結果に対して、立憲民主党参議院議員として高木さんは、どのように考えられるのか、簡単なコメントをお願いします。

高木: 蓮舫さんの議員として質問に臨む準備のすごさと実力を知っている者として、ぜひ知事として活躍してほしかったので、残念な結果です。批判ばかりと言われる蓮舫さんですが、下野後の十数年、野党として鋭い政権チェックに力を注いだ結果、蓮舫さんに執行者側の提案して実行していくイメージが持たれにくかったのかもしれないと思います。石丸候補の躍進は、選挙戦における情報発信のあり方を変化させていく必要性を感じました。幅広い政策を伝えていくには、AIの活用も今後注目すべきと考えています。

たかぎ・まり

1967年8月12日、栃木県日光市生まれ。浦和市立(現・さいたま市立)常盤中学校、お茶の水女子大学附属高等学校、東京大学法学部卒業。東京銀行(現菱UFJ銀行)勤務、衆議院議員枝野幸男秘書を経て、2003年4月、さいたま市議会議員(北区)初当選、以後2期連続当選。2011年埼玉県議会議員(さいたま市北区)初当選、以後3期連続当選。党県連政調会長。県議会会派政調会長。2022年参議院選挙において、埼玉県選挙区より初当選。現在泉「次の内閣」ネクスト厚生労働大臣。党県連副代表、党埼玉県参議院選挙区第2総支部長。

すみざわ・ひろき

1948年生まれ。京都大学法学部卒業後、フランクフルト大学で博士号取得。日本女子大学教授を経て名誉教授。本誌代表編集委員。専攻は社会民主主義論、地域政党論、生活公共論。主な著作に『グローバル化と政治のイノベーション』(編著、ミネルヴァ書房、2003)、『組合―その力を地域社会の資源へ』(編著、イマジン出版2013年)など。

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