編集委員会から

編集後記(第22号・2020年春号)

―――新コロナとともに安倍政治を終わらせよう

◆昨年10月に山口二郎さん(法政大学)が『民主主義は終わるのか』(岩波新書)を出され話題になっている。今の安倍政治を見るまでもなく民主主義とは、議会制度とは、政治改革とは何であったのかと考えさせられる昨今である。今号特集のテーマでもある「問われる民主主義」。戦後世界の中心的基軸であった自由や民主主義、また議会制民主主義とは、そして日本においても熱く語られた政治改革をイギリスと日本を比較し論じる。そして「民主主義を終わらせないために」、今の日本の政治に求められているものは、私たちの課題は何かを明らかにする。本号巻頭の山口さん、高安健将さん(成蹊大)と本誌・住沢さんの渾身の鼎談。

◆新コロナウイルスが世界を覆いつつある。英知を絞っての封じ込めが必要である。同時に我われの理性的対処も求められる。それにしてもアベ晋三は悪運が強いのか。命運が尽きようとしていたアベだが新コロナが悪運に味方するかもしれない。この間の「桜」問題や「検事長の定年延長」問題、側近(補佐官)の河井克行法相の辞任、自民党現職への私怨から、河井の妻の案里を対抗馬で擁立し1.5億投入が発覚。案里は公選法違反で連座・失職必至。あるいはカジノでも自民党議員の逮捕・起訴と醜聞の続発。政権を支えた菅官房長官との関係悪化などアベの黄昏が語られていた。そこに新コロナ騒動である。勿論、アベが冷静な対処ができるはずは無く、例の小中高の一斉休校の要請も、菅はもとより側近の厚労相、文科相にも相談せず側近の今井尚哉の入れ知恵だけで判断したようだ。この今井は影の総理といわれアベを操っている。江戸時代の“側用人政治”の現代版。さらに3月9日から実施された中国・韓国からの入国制限も、極右コピペ作家の百田某とネトウヨ有田香らとの酒席で煽られた結果とまことしやかに語られる始末だ。記者会見で質問から逃げ回るアベ。一方で情報の統制や強権発動をしたがるアベ。関東大震災時の朝鮮人大虐殺は悲しい教訓だ。歴史の彼方ではない。先日も不足するマスク配布で、さいたま市が朝鮮学校を除外、批判に撤回されたが、極めて危険な一里塚だ。

◆まさにアベ自身が国難か。話題にすらならなくなったアベノミクスの破綻。誰しも認める外交のアベの皆無の成果、あるのは反中反韓の排外主義。トランプのポチ姿だけは全世界で際立つ。側近重用の悪しき官邸政治、そして“空気を吐くように嘘をつく人格”。まさに「歴代最長・歴代最低・歴代最悪の政権」であり、その存在自体が“国難”なのだ。新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案の成立で、アベは自らの手で非常事態宣言、さらには憲法を変えて自らの手で「戒厳令」実施をと夢想しているのではないか。また、取りざたされるオリンピックの延期や中止問題で、アベは新コロナ対策・国難突破の解散・総選挙を画策する危険性大。野党は反アベの統一戦線の構築・深化が急務だ。本号巻頭の鼎談で山口二郎さんは、「『現代の理論』の読者には全共闘世代が多いと思うので、安倍政権打倒のために、死ぬ前にもう一度戦えと言いたいですね。安倍政権を倒すために総力を結集するというのは、人生最後の大きなテーマでは」、と。

◆民主主義とともに問われる“現代の労働”。昨今、働き方改革が、はやり言葉のようになっているが、その実態は。この現代的問題に正面から取り組むお三方に正面から論じていただいた。そして働くものの代表としてある連合が結成30年を迎えた。ややもすると“正社員クラブ”と揶揄されているが、「労働組合はどこへゆくのか」と田端博邦さん。働き方改革を積極的に提言されている水町勇一郎さんが同一労働同一賃金の労使の課題を語る。「働き方改革の進むドイツと日本の違いは」と田中洋子さん。これらをコーディネートし一文の本誌小林さん。それにしても労働組合運動に関わった身としては、“連合よ正しく強かれ”“社会的労働運動を連合は担うべし”、“全ての働く者の代表たれ”と思う。

◆春闘の最中であるが、今春闘は大手の一部では、賃上げのあり方・配分をめぐって話題となっている。“生活できる賃金を寄こせ”など格差の是正を正面に据えた要求や戦いの必要性は逆に高まっていよう。一方、大手の黒字企業で、さらに儲けるために希望退職募集がまかり通る昨今。企業の雇用責任はどうなっているのか、と叫びたい。企業の雇用責任はもう死語か、そんなバカな話があるか。戦後、曲がりなりにも働く者、労働者保護の役割を果たしてきた労働関係の諸法が解体の危機に瀕していると指摘されて久しい。今回の新コロナでも話題となったが、企業との雇用関係のないフリーランス問題。自由な働き方などと綺麗ごとで語られるが、企業と雇用関係の無い請負制度で働く人の激増である。要するに面倒な保護制度(法律や慣行)のある労働者をなくしてしまえという経営側の露骨な姿勢があり、更には厳しい制限がつけられている解雇も、金銭で処理できるようにとの動きも強まっている。そして非正規問題。ユニオン系労組が苦労しながら全国で頑張っているが、組織も財政力もある連合が、自らも非正規問題に真剣に取り組むと同時にユニオン系労組との連携や支援に乗り出すべきである。本号資料欄で連合の笹森清会長時代の2003年に出された「連合評価委員会<最終報告>」を全文掲載した。当時も大きな話題となったが、現在もますます重要性のある報告であると思う。労働問題に関心ある方は是非一読を。

◆読者、筆者の皆さんにお詫び。本号(22号)は、本来2月1日発行・発信予定でしたが、制作を担当しています編集委員が視力障害などの体調不良で12月に入院。発行を遅らせ5月1日発行予定号との事実上の合併号として3月中旬の発行といたしました。お詫びし報告いたします。なお次号(23号、夏号)は、8月1日発行を予定いたします。(矢代俊三)

季刊『現代の理論』[vol.22]2020春号
   (デジタル22号―通刊52号<第3次『現代の理論』2004年10月創刊>)

2020年3月17日(火)発行

編集人/代表編集委員 住沢博紀/千本秀樹
発行人/現代の理論編集委員会

〒171-0021 東京都豊島区西池袋5-24-12 西池袋ローヤルコーポ602

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