論壇

沖縄県の辺野古承認撤回支持、米軍の新基地建設の中止を求め、海外の識者が声明

ジョン・ダワー、ノーム・チョムスキー、オリバー・ストーン氏ら133人

翁長雄志知事の急逝で9月30日に投開票された沖縄知事選はオール沖縄派の玉城デニー氏(社民、共産、沖縄社大、立憲、国民、自由、一部経済界などが支持)が、自民・公明・維新・希望推薦の佐喜真淳候補に396,632  対316,458  と8万票の大差をつけて当選した。安倍政権が強引に推し進めている辺野古新基地建設の是非を問う事実上の県民投票であり、前回の翁長知事の勝利に続く県民の意思表示であった。

自公は、文字通り安倍政権の総力を挙げての選挙戦。業界への強引な締め付け、利権誘導、安倍総理の代理人・菅官房長官や小泉進次郎、二階幹事長が3度も沖縄入り、竹下派会長が沖縄張付け、また公明党・創価学会が幹部や本土から数千人を動員しての総力戦。期日前投票が約35%に上るという異様な選挙戦であった。ヤマト(本土)とウチナー(沖縄)との戦争とも言われた。安倍政権の強圧を沖縄の人々は、心の底からの魂の叫び、沖縄のことは沖縄で決める自決への叫びで打ち砕いた。

この知事選直前の9月7日、米国や世界的に有名な学者や文化人、退役軍人などの識者ら133人が、沖縄県が行った、辺野古の埋め立て承認の撤回を支持する声明を発表した。辺野古の新基地建設が「国民主権、自治権などの原則に反して行われており」、トランプ米大統領と安倍晋三首相に、新基地の建設を即時に停止し、沖縄を非軍事化するよう求めている。

声明は、戦後の日本の民主化過程を論じ『敗北を抱きしめて』で有名なピューリッツアー賞受賞のジョン・ダワー氏、言語学者のノーム・チョムスキー氏、アカデミー賞受賞の映画監督オリバー・ストーン氏、ノーベル平和賞受賞のマイレード・マグワイア氏らが名を連ねた。チョムスキー氏らは、2014年1月にも普天間基地の辺野古移設に反対し、即時無条件返還を求める声明を発表している。

声明では、2014年の声明発表以降も、日米両政府が県民の民意を無視し、土砂投入を予定するなど新基地建設を強硬に進めている現状に「状況は良くなるどころか、悪化しているので、今再び私たちは声を上げる」と表明。辺野古への新基地建設に加え、宮古島や石垣島、奄美大島など南西諸島への自衛隊基地配備を指摘、「沖縄の要塞的役割を考え直し、離島を含めて東シナ海周辺につくるべき非武装共同体での中心的役割を語るべきだ」と指摘し、沖縄の非軍事化を訴えた。

さらに「新基地建設に対する沖縄県民の反対は一貫しており、その民意は選挙でも繰り返し示されている」とし、9月30日の県知事選の候補者に対し「沖縄の人々が表明した普天間飛行場閉鎖と、辺野古基地建設中止という民意を実行に移す意思を明確にすることを促したい」と強調した。

沖縄の地元紙「琉球新報』は、9月8日付けの社説で「海外識者の新声明 沖縄の民意に力強い支持」と題し、この声明を次のように評価している。「辺野古の海が土砂投入の危機にさらされる中、改めて世界の目を沖縄に向けるよう促したことを高く評価したい」。世界の知性と認められる人々が沖縄に深い関心を寄せ続けていることは心強いと。

2014年の声明では「米国の独立宣言や公民権運動に沖縄を重ねたことは、新鮮な驚きだった。18世紀、英国の植民地支配による『権力の乱用や強奪』を糾弾したのが独立宣言である。また自由と平等、人間の尊厳を求めた20世紀の公民権運動を挙げて、沖縄の粘り強い非暴力の運動、数万人単位で繰り返される県民大会などへの共感と支持を表明した」。

「今回の声明は、状況がよくなるどころか悪化しているので、今再び声を上げる」とし「その後進んでいる南西諸島での自衛隊基地の建設・拡張の中止も求めた」。そして「翁長知事が表明した埋め立て承認撤回への支持を表明し、新基地建設中止を主張した」。そして世界の人々にも「平和に生きるための沖縄の人々の闘いを支持することを求める」と呼びかけている。「海外でも国内でも沖縄への基地集中政策に批判が強まっている。日米両政府はこの良識の声を受け止め、今こそ新基地建設を断念すべきだ」と結んでいる。(現代の理論編集委員会)

声明全文

安倍晋三首相
ドナルドトランプ大統領
謝花喜一郎沖縄県副知事
富川盛武沖縄県副知事
世界の人々へ

2018年9月7日

2014年1月、世界中の100人を超える学者、運動家、文化人が、人口が密集した街中にある米海兵隊普天間飛行場を閉鎖して、北部沖縄の辺野古集落近くに海兵隊新基地を造るという計画を非難する声明を出した。我々は普天間基地閉鎖は歓迎したが、沖縄県内に移設するという計画には強く反対した。

沖縄は、日本と米国により一世紀以上苦しめられてきた。前近代の日本からは1609年に武力侵攻され、1879年に強制併合された。1945年には第二次世界大戦最後の激戦地とされ、人口の3人か4人に一人が亡くなった。その際米国は沖縄を日本から切り離し、以降27年間軍政下に敷き、日本の潜在主権や、沖縄の地元感情に左右されることもなく、基地を増設した。1972年に沖縄は日本に復帰したが、基地はそのまま残った。継続するポスト冷戦の時代において、辺野古基地の建設だけではなく、北部沖縄のやんばるの森の海兵隊用の「ヘリパッド」群建設、鹿児島と台湾の間をつなぐ南西諸島における奄美大島、宮古島、石垣島、与那国島といった島々の加速する要塞化により、沖縄は基地システムを強化する国家政策の重圧に面してきた。

2014年の声明に署名したのは、言語学者で思想家であるノーム・チョムスキー、映画監督のオリバー・ストーン、マイケル・ムーア、ジャン・ユンカーマン、ノーベル平和賞受賞者のマイレード・マグワイア、歴史家のノーマ・フィールド、ジョン・ダワー、アレクシス・ダデン、ハーバート・ビックス、元陸軍大佐のアン・ライト、作家のナオミ・クライン、ジョイ・コガワ、元パレスチナ占領地域における人権特別報告者のリチャード・フォーク、元国防総省・国務省高官のダニエル・エルズバーグらであった。今回の声明は4年前の声明および、その後2015年の1月と8月に行った声明の形態に倣うもので、2014年声明に賛同した署名者を多く含んでいる。

私たちが当時懸念していた状況は良くなるどころか悪化しているので、今再び私たちは声を上げる。日米の専門家は、軍事戦略的にも、計画されている新基地の機能が存在する場所は沖縄でなければいけないということはないと言っている(もしそのような機能の必要性があればの話だ。多くの人はそれにも疑問を呈している)。政府が沖縄に固執する主な理由は、県外にそのような基地を造るのは「政治的に不可能」だと思っているからなのである。

2017年から18年にかけて、日本政府は、大規模な機動隊と海上保安官を動員して非暴力の反対を弾圧し、辺野古崎側に埋め立て用の護岸を建設した。この6月、政府は、この大規模な海兵隊新施設を造るための160ヘクタールに及ぶ埋め立て計画の一環として、土砂を投入する計画を発表した。完成時には、海抜10メートルに及ぶ、1800メートルの2本の滑走路と272メートルの係船機能つき護岸を伴う基地となる。

環境面においては、大浦湾は日本でももっとも生物多様性に恵まれた豊かな海洋区域であり、沖縄県の「自然環境の保全に関する指針」においても最も厳正な保護・保存を要する区域に分類されている。絶滅危惧種 262 種を含む 5,300 以上の生物が生息しており、サンゴ、ナマコ、海藻草類、エビ、貝類、魚類、亀、ヘビ、哺乳類、特別に保護されている海洋哺乳類であるジュゴンがいる。大浦湾は、環境省が2017年に、沖縄と鹿児島の他の3つの島と共に国連教育科学文化機関(ユネスコ)に世界自然遺産として推薦したやんばるの森の生態系と直結している。この推薦は、ユネスコの諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)が、米軍北部訓練場が存在する状況でどのようにやんばるの森を世界遺産として保全・確保するのかを明確にすることを求め、「登録延期」をしたのち、2018年6月に取り下げられた。

日本政府が行った環境影響評価(アセスメント)は欠陥だらけのものだった。2012年2月、沖縄県環境影響評価審査会は前年末に提出された政府の環境影響評価書に対し、150もの「環境の保全上問題と」なる点を指摘した。それを受けて当時の仲井真弘多知事は、政府に対し「評価書で示された措置では生活、自然環境の保全を図ることは不可能」と意見した。しかし、仲井真知事は2010年の知事選において普天間基地の「県外移設」を求めるとして当選していたにもかかわらず、2013年12月、東京の病院に身を隠している間に国の重圧に屈し、沖縄県民の圧倒的な反対の中、埋め立てを承認した。知事の説明なき変化は多くの沖縄県民を怒らせ、県民は2014年11月、「あらゆる手段で」基地を阻止するという公約で知事選に立った翁長雄志候補を10万票差で選出し、仲井眞氏の裏切りに報いた。

翁長知事は埋め立て承認について「第三者委員会」を設置し、委員会が2015年7月にまとめた報告書も、基地建設に必要とされる環境的要件は同様に満たされていないということを明らかにした。国防総省の専門家が、ある連邦裁判所の裁判[訳者注:ジュゴン裁判]に関連して、沖縄防衛局による環境影響評価を調べたところ、「非常に不十分であり」、「科学的検証に耐えられるものではない」という報告をしていたことも後になってわかった。その時、私たちは知事に、決定的な行動を取るよう促した。その後10月に、知事は埋め立て承認の「取消」を行った。

しかし、長引いた裁判闘争の後、2016年末、最高裁判所は、国の主張を支持し、「取消」が違法であるとの判決を下した。翁長知事はその判決に服従し、結果として埋め立て承認を復活させ、国は2017年4月に工事を再開した。辺野古での工事がだんだん勢いを増すにつれ、翁長知事は国の建設計画に協力しているかに見える時もあった。2017年末、沖縄北部の港の資材海上輸送のための使用を許可した。2018年7月には、絶滅危惧種のサンゴを埋め立て予定地から特別採捕する許可も出した。夏期の移植は危険であるという強い証拠があるにもかかわらず。

しかし、翁長知事は埋め立て承認「撤回」の選択肢を保持していた。時機が訪れたら行うと、くり返し約束していたことだ。結果的に、2018年7月27日、知事は「撤回」を正式に表明し、そのための準備手続きを開始した。しかし2週間後、8月8日に知事は急逝した。9月30日に予定されている知事選が差し迫る中、謝花喜一郎と富川盛武副知事が知事の役割を引き継ぎ、予定されていた「撤回」を8月31日に行った。

基地建設は、国民主権、自治権といった憲法の原則に反して行われている。新基地建設に対する沖縄県民の反対は一貫しており、世論調査でも8割を超えるときもある。その民意は選挙でも繰り返し示されてきている(とりわけ2014年の翁長知事のとき)。沖縄では、明確に基地建設賛成を公約に掲げて選挙に勝つ候補者は今までいなかった。沖縄県議会は、2016年5月と、2017年11月に、海兵隊撤退を求める決議を通している。

今こそ、歴代の日本政府、米軍と戦略立案者は沖縄の「要塞」的役割を考え直すときであり、離島も含めて、東シナ海周辺につくるべき非武装共同体の中心としての役割を語り始めるときだ。辺野古の計画を断念し、南西諸島の軍事化をやめることは、何よりもそのような新たな秩序の形成へのコミットメントを示すことになる。

私たち署名者は、沖縄の人々の平和、尊厳、人権、環境保護のための闘いを支持し、日本の人々が、その闘いが正当なものであることを認め、支持することを求める。

私たちは、翁長知事が7月27日に正式に表明し、謝花副知事が8月31日に遂行した辺野古・大浦湾埋め立て承認の撤回を支持する。

私たちは、トランプ大統領と安倍首相がすぐさま辺野古の海兵隊基地建設を中止し、沖縄の米軍基地を大幅に削減し最終的には撤去するために交渉を開始することを求める。

私たちは安倍首相が、奄美大島、宮古島、石垣島、与那国島における日本の軍事施設の建設または拡張の中止を命じ、沖縄島と南西諸島を、地域の平和と協力の中心地に転換させていくための議論を始めることを求める。

私たちは、沖縄県知事選候補者の人たちに、沖縄の人々が表明した普天間基地閉鎖と辺野古基地中止という民意を実行に移す意思を明確にすることを促し、南西諸島の要塞化を考え直し、沖縄の政策全体の優先順位を、軍事化から平和、環境、地域協力に移していくことを促したい。

私たちは、世界中の人々と政府に対し、沖縄の島々を非軍事化し平和に生きるための沖縄の人々の闘いを支持することを求める。

以下133名の署名(略) *なお署名者全員の氏名・肩書きは、例えば琉球新報9月8日付けの朝刊10面に声明文とともに掲載されている。

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