コラム/発信
岸本さとこ(杉並区長選)圧勝――2期目スタート
2026年秋
杉並区議会議員 奥山 たえこ
2期目の選挙は圧勝
今回も投票率がアップ / 開票結果ー各候補の得票数と得票率 / 岸本選挙で行ったこと
選挙の争点とファクトチェック / 選挙の情勢分析と街頭活動 / 岸本さとこ氏の応援団
2期目の区政スタート
長期休暇をとる / 当選後のイベント / 2期目に向けた区長記者会見
2期目の議会開始 / 新しい政治団体の結成
2期目の選挙は圧勝
4年前、議員経験はない、ヨーロッパに長く住んでいた全くの新人が、帰国後3か月弱の期間で、4期目をめざす現職区長を、わずか187票差で破り”奇跡の勝利”と言われた、東京都杉並区の区長選挙。その岸本さとこ区長の2期目の選挙には大きな関心が集まった。結果はご存知の通り、岸本氏の圧勝に終わった。
今回も投票率がアップ
投票率は今回は42.54%だった。前回2022年は37.52%なので、5.02%アップ。その前の2018年は32.02%なので、岸本氏の初めての選挙出馬で5.5%アップした。つまり、この間2回の選挙で10%ほどアップした。
なお、元区長の田中良氏が区長に初めて立候補した2010年7月は、5名が立候補。次点の候補と競り合ったこともあり、57.63%まで行った。当然ながら、立候補者の顔ぶれで左右されるわけである。
開票結果ー各候補の得票数と得票率
岸本 さとこ氏、106,487票、52.74%
大和田 伸氏、46,250票、22.91%
田中 良氏、33,259票、16.47%
増田 よしひこ氏、15,877票、7.86%
合計 201,873票、100%
以上のように、岸本氏は他の候補の2倍以上の票で引き離し、かつ投票数全体の半分以上を得た。よって、圧勝と言える。
岸本選挙で行ったこと
以下記述することは、行ったことの全てではない。奥山が全てを知り得るわけではないし、行ったことのどれが得票に効果があったかの判別は困難である。そこで目についたものを挙げる。
「公正な選挙を目指します」と打ち出して、次の3点を訴えた。これは、政治ビラ、選挙公報に記載した。
(1)お金とアルゴリズムが左右するYouTube広告などは使いません。
(2)公開討論会に必ず参加し、 政策で選ぶ選挙を実現します。
(3)政治資金パーティはこれまでも、これからも開きません。
・YouTube有料広告
YouTubeでは自分が検索して指定したわけでもない動画が表示されることがある。それはたいてい自分が好んで見ている番組と似た趣向のものであったりする。このようにアルゴリズムに基づいて「お気に入り」が表示されるので、ついつい時間を忘れて見入ってしまうような仕組みになっている。またテレビのように15〜30秒程度のスポット広告が表示される。そのようにして、選挙の予定候補者が有料広告を打つことで、多くの人の目に触れさせることが可能である。
今回、大和田予定候補の広告がごく短期間で閲覧数が急激な伸びを見せた。検索して閲覧したと考えるには不自然な閲覧数であった(50万回に及んだ)ので、評判になった。すると本人がX(旧ツイッター)に、 有料広告を打ったこと、費用は80万円で自分の資金で賄ったと投稿した。なんだ広告だったのかと、むしろマイナスの評判がたった面もあることは否定できないと思う。
・公開討論会
公開討論会だがせっかく設定してくれてもしばしば流れるのは、現職候補が出席しないので成立しないからである。というのは現職は、運営の結果を他の候補から責められ批判されることが多いので、不利な場面を避けようとして、出席を断るのである。だが岸本氏は、自分は必ず出席しますと公言して、実際他の候補からの質問にも丁寧に答えた。
今回公開討論会は4回設定された。
最初は6月14日、杉並区長選挙2026 子ども若者政策公開討論会 主催:一般社団法人 日本若者協議会。ニコニコニュースで配信された。この時は応援する区民も参加して、直接質問するなどした。
15日は、インターネット番組のReHacQ(リハック)でだった。この番組は、再生数が数百万になることもある有名な番組である(毀誉褒貶ある)。この時の討論会は、9月末時点で再生数が14万を超えている。
3回目に予定していた東京青年会議所の公開討論会は、主催者の急な都合により中止となった。それに対して、場所を用意するから参加してくれますかと呼びかける人がいて、急遽開催にこぎつけることが出来た。
大和田氏は最初の2回には参加したが、他は欠席となった(さまざまな憶測が飛んだ)。
4回目は、FMすぎなみ【杉並のインターネットラジオ】だった。
4回の討論会は、ネットで見た人がSNSに「気さくなオヤジじゃないか」と書き込むなどして、候補者それぞれの評判を高めたようである。
選挙の争点とファクトチェック
争点というか、岸本氏のウィークポイントとも言えるものに、学童クラブの待機児童の増加。いじめ重大事態の発生において、教育委員会の懈怠と解決能力欠如の露呈。それに対する区長の介入を望む声(なお区長と教育委員会とは別の行政組織であり、教委のトップは教育長である)と他自治体の取組みの紹介。京王線浜田山駅南口改札の設置計画の停滞(現状は改札口が駅北側にしかないので南側の住民は踏切通行するも開かずの踏切で不便かつ危険である)が特にある。これらについて他候補は、私なら解決できますというふうにアピールした。これらが岸本氏のマイナスポイントになったかもしれない。
また、SNS選挙となった昨今の例に漏れず、岸本氏にも”デマ”、もしくは不確かな情報が蔓延した。それについては、自身のホームページで、ファクトチェックと称して、事実を挙げて説明した。
選挙の情勢分析と街頭活動
告示の当初は岸本氏、田中氏、大和田氏の順だった。
2人は選挙中盤に、第一子出産時に区独自の100万円を支給(田中氏)や、一世帯あたり最大10万円分のポイント給付(大和田氏)などを打ち出した。
田中氏は、中盤に他の争点を加えて、非常にわかりやすい”YES /NOチラシ”を広い範囲にポスティングした。これは巻き返しに効果があった。
岸本氏は現職なので「公務を優先します」と打ち出して、選挙中の期間に区役所を休むことなく、平日の選挙活動は朝と昼休み、それと夕方以降のみに限った。初日の日曜日は、他自治体の女性首長が応援に来てくれたり、隣の世田谷区の保坂展人区長は3回も応援に入ってくれた。最終日前の金曜日、台風が来るので避難所の開設などに公務を充当したが、台風が去って時間が一段落したため、午後から街頭に出ることができた。
岸本さとこ氏の応援団
政治活動として、今回は「区民まんなか杉並」という政治団体を作って、区内をいくつかの地域に分けて、各地でそれぞれが街頭宣伝チラシの配布や街頭宣伝を行った。やはり開催しようということで、選挙直前に大決起集会を敢行。雨の中500人が集まり、成功裡に終わった。この時は活動する市民がステージ上に集まるなどして、お決まりパターンの議員ではなくて、市民に応援される岸本さとこを存分にアピールすることができた(録画で放映した)。
選挙期間中にはボランティアが、区外どころか都外、関西や九州からも来てくれて、初日は列をなすほどだった。街頭でのチラシまき、確認団体のチラシ、ポスティング などで活躍してくれた。前回の選挙でドキュメンタリー映画『映画 〇月〇日、区長になる女。 』(2024年、ペヤンヌマキ監督)を、各地で自主上映してくれた女性たちが駆けつけてくれた。なお、ペヤンヌ監督は次のドキュメンタリーの構想があるそうで、完成が楽しみである。
2期目の区政スタート
長期休暇をとる
岸本区長は、海外に暮らす家族をケアするため7月13日から8月4日まで、不在にすることを発表した。その間副区長などの職務代理者は置かずに、デジタル技術を最大限に活用し、必要な指示や意思決定を行うことができる体制を整えて日本を出発した。もし大規模災害などの緊急事態が発生した場合には、即時帰国することとしていた。これについては、広く報道されたこともあって、首長が率先して休みを取ることは良いことだと評価する声がある一方で、首長の長期休暇などあり得ないとの声もあった。
当選後のイベント
当選後受けたインタビューの一つ。「【岸本聡子杉並区長に聞く】民主主義の修復は可能だ――「対話の政治」で都市を変える 月刊『地平』編集部 2026/08/06 」。
地元での、第2期スタートイベント「みんなで行こう杉並NEXT 〜杉並区長選挙でのつながりを未来へ〜」、8月9日開催。選挙に関わった人たちが地域グループに別れて、取り組みの報告をした。
LIN-Net (Local Initiative Network。岸本氏が世田谷の保坂展人区長や自治体議員などと2022年12月結成したグループ)を宝塚市で、9月6日「全国から地域主権とコモンの波 市民派首長大集合!一人ひとりにやさしい持続可能なまちづくり」、関西で初開催。
2期目に向けた区長記者会見
7月9日(火)。いつもは年4回の区議会定例会の開催8日前に行うことにしている。9月議会に向けてのいつもの会見は9月1日(火)に行った。
2期目の議会開始
9月9日(水)、第三定例会の初日。傍聴席の定員をオーバーする人数が来庁したので、その方たちには別室でライブ配信を傍聴していただいた。
岸本氏にとって2回目となる、所信表明「区長就任にあたって」に対して、議会では初日から3日間、各会派が代表質問を行った。その後は一般質問が続いた。
振り返るに4年前の9月、岸本氏の初めての議会の議事録、当時の自民党会派の代表質問を読み返すと、新しい区長に対する質問は、私には戸惑いとも反発とも受け止められるものであった。たとえば、区内で行われた安倍晋三元首相の国葬に反対するデモにプラカードを掲げて参加した岸本氏に対して、「今回のデモへの参加は区長として適切であったとお考えか。その上で、国葬反対は杉並の総意とお考えか。」という質問を投げかけた。自民党の2つの別会派(この当時自民党は3つの会派に分かれていた)からも同様の質問があった。岸本氏はその度に「私は国葬に疑問を感じておりますので、一人の市民として自分の意思を表現するために参加いたしました。」と答弁した。このように私的な行動について議会の場で問いただすことは通常行わないものなのだが、岸本氏に対しては、この初回の議会に限らず、また他の議員からも度々なされてきた。今回2026年9月の代表質問では、通常の議会質問になったと思う(何を以て通常と言うかの説明は難しいが)。
政策で言うと2期目の今回、所信表明に盛り込んだ政策は、本人が作ったので、岸本カラーになっている。4年前はまだ候補者も見つからない頃から市民団体が用意したものがあって、それに岸本氏が手を入れたものであった。現在はすでに区政を十分知る経験と政策を練る立場にあるので、それは自分の納得のいくものとなっているように見える。答弁する態度も私には、堂々としていて自信に満ちたものと映った。
新しい政治団体の結成
前回2023年4月の区議選で、自民党は現職議員15名のうち7名が落選し、一方岸本氏と政策を通じる議員が増えた。そのおかげで、議会運営上、岸本氏の政策は通りやすくなった。
来年2027年4月に次の区議会選挙がある。それに向けて今回、10月3日に「地域政治の新しい景色をつくろう! 「コモニングすぎなみ」設立発表&特別トーク」を開催する。いわく「このたび、区長選を闘ったメンバーが中心となり、統一地方選で候補者を応援するための『ローカル政治プラットフォーム』を立ち上げることになりました。」だそうである。どのような選挙結果になるかは、半年後に判明する。
おくやま・たえこ(妙子)
1957年別府市生まれ。実家は八百屋で看板娘。東京都立大学法学部卒業。金融会社、派遣社員、出版社勤務。2003年杉並区議に初当選(無所属)。 23年5月から5期目、単身高齢者の貧困問題に取組む。趣味は焼き鳥屋で読書。
コラム
- 沖縄発/植民地支配への抵抗――比屋根照夫さんを悼む歴史研究者・ライター・与那嶺 功
- 発信/東京・杉並区政と区議会のいま杉並区議会議員・奥山 たえこ
- ある視角/ある幼稚園の園長だより「うふふのふ」(その4)本誌編集委員・池田 祥子
