特集 ● 社会の底が抜けるのか

人・未来への投資、政治資金パーティーの全面
禁止で政治を日本再生の力に

──立憲民主党・逢坂誠二代表代行に聞く

語る人 立憲民主党衆議院議員(代表代行) 逢坂 誠二

聞き手 住沢 博紀(本誌代表編集委員・日本女子大学名誉教授)

1.閉塞から脱して野党共闘の新展開のために

住沢(編集部): 逢坂さんには、2021年2月発信のデジタル版『現代の理論』第25号で、インタビユーをさせていただいています。その時には、ニセコ町長の時代からの政治家としての体験や理念、原発ゼロ政策やコロナ禍での対策をお聞きしました。今回は、立憲民主党の代表代行の一人として、党としての見解や内部事情の問題もふくめて、いくつかの質問に答えていただければと思います。

最初は、野党共闘の問題です。国会内では自民党の裏金の問題で野党共闘が再建されていますが、選挙協力に関しては膠着状態です。泉代表と玉木国民民主代表、馬場維新の会代表、それに芳野連合会長の新春会談が週刊誌やテレビ局で行われていますが、原発と憲法9条に関して、共産党との線引きをめぐりいつも同じ議論です。メディアの報道の仕方もあるとは思いますが、何か野党の協力に向けた突破口はありますか。

逢坂誠二さん

逢坂: 我々が何を考え、何を主張しなければいけないかっていうことですね。この30年あまり、日本の社会は劣化し続けているんですよね。賃金は上がらないし、経済は成長しない。それから、例えば科学技術論文のランクも、かつて世界4位だったんですね、日本は。アメリカ、イギリス、ドイツ、日本ということ。ところが今13位ですよね。それで、日本よりも韓国やスペインが上位にいるんですよ。イランも日本より上位ですよ。

GDPもわずかしか伸びていません。世界、ドイツ見てもアメリカ見ても、その伸びは飛躍的なんですね。だから、典型的に日本だけがやっぱりおかしい状況なんです。これはですね、これまでの政策が誤っていたと言わざるを得ないんですね。多額の借金をして予算組んでも個人消費は伸びません。アベノミクスやりました。いっぱい市中にお金を出しました。それでも個人消費は伸びません。株価をつり上げましたが、株価がどんなにつり上がっても、その個人消費は伸びない。経済には結びついてないわけですよ。ということは、 やっぱり今までの政権のやり方がおかしいってことなんですね。だから、その時に野党は何を考えるべきかというと、政権に迎合するとかして自分たちの政策を実現するとかっていうことでは、私は今この局面は打開できないと思っています。

だからこそ、大きな目標は何なんだ。それはやっぱり自民党に変わりうる政権を作ることだっていうことなんですね。で、本来であれば、野党は 大きな塊になるっていうのは、それは理想的なことです。でも、それぞれ出発点も違う、それぞれの野党の政党ですから、大きな塊になるのは簡単ではないとするならば、それぞれの違いをあげつらって、ダメだとか、一緒になれるとかなれないとかっていう議論をすることではなくて、そのそれぞれの違いを前提としながらも、どうやって大きな力に立ち向かっていくかっていうことだと私は思うんですよ。

だから、最初から連携ありきっていうことではなくてですね、やっぱりどうやって自民党という巨悪、と私言って良いと思うんですが、巨悪を潰すかだと思うんですね。だから、それぞれの政党が切磋拓磨をして、その結果なんとかして自民党そのものを、第1党ではない状況をどうやって作るかってことだと思うんです。

そういう状況ができた時に、今度は野党の方も多分それぞれが過半数占めている状況じゃないかもしれません。そんなことも頭に置きながら、どうやって手を結ぶかってことなんですね。その時に、 憲法の考え方が違うからとか、原発に対する考え方が違うからっていうことでまたバラバラになっていたのでは、私はそれは決していいことだとは思えないんですね。

現にですね、今の自民党の中にも原発反対って明言している閣僚もいるわけですよ。それから、憲法については 前向きな人もいれば、憲法について非常に保守的な考えを持っている人もいるわけですよね。そういう人たちが一緒になっている自民党という力に対抗しようとしているのに、対抗する側が、 例えば、憲法で考えが違うから、原発で考えが違うから、それでも一緒にやりませんねって最初から決めつけるのはですね、私は、そんなことをしていたのでは、今の巨悪を倒すことはできないと思いますね。

例えば、ドイツなんかを見るとですね、選挙前はそれぞれの党が切磋琢磨してやりますよ。でも、選挙結果が出て過半数取れなくても第1党になったところが、 考え方の近いところに声をかけて、どうやって連立を組むかっていうことを相当議論をして連立政権を作っていくわけですよね。

同じことが日本でも行われてもいいはずなんです。だから、選挙の前にも、あらかじめあのことはやれないとか、ここはやれるとかっていうことではないんだと私は思いますね。その意味で言うと、最大公約数を見出していくっていうことではないかと私は思いますよ。

2.泉執行部のもと党の人材の最適配置

──ドイツなどの政党間の政権協定の例ですが、協定締結後に、それぞれのミニ党大会での承認が必要とされます。日本もそうした仕組みがあると密室政治でなくなり、連立政権交渉もより正当性を得ることができると思うのですが。

それで、2つ目の質問です。昨年の前半には統一地方選挙などで維新の全国への躍進が見られ、最大野党という立憲民主党のポジションが危ないという議論もありました。また国会運営でも、玉木代表が政府の予算案に賛成するなど、野党の足並みも乱れました。

ただその後、統一協会に対する10月の文科省の解散請求に関連して、被害者救済のための「旧統一教会財産保全法案」、また自民党派閥の裏金問題に対して内閣不信任案の提出などで野党を取りまとめ、国会運営では野党のリーダーとしての存在意義を示しています。

この野党の「攻勢」の中で、しかし前面に出てくるのは泉代表ではなく、安住国対委員長、長妻政調会長、岡田幹事長という、10年以上前の、いわば旧民主党幹部ですね。長妻さんは立憲民主党の設立者の一人ですが、確か逢坂さんは長妻さんの後を受けて政調会長も経験されています。枝野・泉と世代交代で立憲民主党が歩んできたイメージがある中で、もちろん3人とも経験豊かな実力者ですが、どうしても既視感があります。

逢坂: 政党っていうのは、我が党だってそれは 野党第1党ではありますけれども、そんなに、そんなにたくさん人数がいるわけではないですね。その中で、やっぱり 最大の力をどうやって発揮するかっていうことを考えることが非常に大事だと思いますのでね。

国会対策にかけては安住さんの右に出る人はいないと私は思っています。これは野党だけではなくて、場合によっては与党も含めて、 安住さんぐらい国会周りのことについてですね、いろいろな情報を持ち、人材のつながりもありってという人はいないと思うんですね。発信力もありますし、元々ご自身もマスコミにいましたので、マスコミへのある種のさばきも心得ていると思います。

長妻さんは選対委員長をやろうが国対委員長をやろうが、やれる方だと思います。でもその中でも、とりわけてもなお、政策に関するその思い入れっていうのは非常に強い方です。例えば、2007年の消えた年金の時だって、 ご自身が丁寧に調べて問題を探り当てて、あれをやはり国民の皆さんの大きな共感に結びつけていったわけですよね。だからいい組み合わせであると思っています。

それで政党の代表というのは 森羅万象なんでもかんでもやれるっていうものではなく、全体を見た上で、どうその最適な組み合わせを作っていくかっていうことが、私は代表の役割だと思います。

だからその意味で、 2021年の選挙の直後に泉代表がなって、あの時は随分ご本人も悩まれていたと思いますよ。それからいろんな課題もありました。でも、我慢して我慢して、泉代表がその代表の座についていることによって、 党内も安定化し、さらに参議院選挙で厳しい結果が出た後に、幹事長をかえ、政調会長をかえ、国対委員長をかえ、としてきたことがですね、そのある種の結果が、今の時期になって私は出てきていると思っているんですね。

岡田幹事長も経験豊富ですし、党内全般について目配りができていると思いますので、 もちろんそれは100パーセントいい状況ではないかもしれないけれども、いい歯車が回っているんじゃないかなという風に私は思いますね。

──11月発信の『現代の理論』36号では、前代表の枝野幸男さんにインタビューしました。枝野さんも最近では「再始動」というか、立憲民主党と政治家枝野のビジョンや理念を掲げてメディアで登場しています。その枝野さんは、現在の立憲民主党では役職に就いていないですが、党内ではどのようなポジションでしょうか。

逢坂: 枝野さん自身は、昨年の夏でしたか、枝野ビジョン2023といったようなものも出してですね、考え方を整理して、全体を見通して貯めている時間っていう感じがするんですね。それともう1つは、例えば憲法審査会とかですね、そういった非常に重要な局面では、やっぱり枝野さんの知恵っていうものを、みんなが勉強させてもらっています。 今後どう臨むべきかなんていうこともやっていますし、節目節目では、いわゆる枝野イズムみたいなものを発揮してると私は思いますよ。枝野さんの存在が、ある種の全体をこう包含するような、見えない力になっていると私は見ています。

──この26日に、辻元清美さんが代表代行に起用され、立憲民主党は泉代表と西村・逢坂・辻元の代表代行が3人体制になりました。男女比は2対2です。共産党は田村智子さんが委員長になり、自民党も上川陽子さん、高市早苗さん、小渕優子さんなど存在感を増しています。これを意識されたことですか。それとも異なる理由がありますか。ちなみに『現代の理論』は、2021年の立憲民主党の代表選の時から、男女共同代表制を訴えています。

逢坂: 辻元さんは、参院では1年生ですが、衆院での経験は豊富です。全国的な知名度もありますし、行動力も発信力もあります。今回の人事は、そんな辻元さんに、次の総選挙を念頭に全国を睨んだ活動をして貰うことを、代表が期待してのものだと思います。

私のこれまでの経験の中でも、色々な会議体、議論の場での女性の存在は極めて重要だと認識しています。男性だけの会議だと、お互い相手の腹を探り合って、空気を読み必要最小限のやり取りになる場面が多々あります。その結果、真の問題解決につながらず活力を失うことがあります。反面、女性は、結構ズケズケとものを言い、場壊しになるような発言を男性よりもしがちです。しかしそれによって問題の輪郭がクリアになって、取り掛かり難い問題にも真正面から向き合わざるを得ない状況を生み出すのです。それが活力につながります。辻元さんも、そんな存在になるはずです。

3.日本衰退を招いた自民党政治からの決別 ― 人と未来への投資

──岸田政権への20%少々という低い支持率にもかかわらず、また派閥と巨額の裏金問題というリクルート以来の自民党のスキャンダルにも拘わらず、NHKの1月の調査では、立憲民主党の支持率は5.3%と前回よりもマイナス2.1%です。能登地震という政府に関心が行く災害があったせいもあるでしょうが、やはり立憲民主党のイメージが国民には伝わっていないと思いますが。

逢坂: そこはですね、やはり2012年の12月以降のですね、やっぱりある種のネガティブイメージの、レッテル張りって言うんでしょうかね、それがやっぱり相当大きく作用していると思うんですね。特に、安倍元総理の悪夢の民主党とかですね。

ところが、当時、民主党政権がやったことが、それでは本当にそれほどひどいことだったのかというと、例えば、子供中心の政策をするとか、人へ投資をするっていうことは、10年以上経って、今、慌てて自民党がやらなきゃならない政策になっているわけです。だから、私は、我々に課せられたある種の重荷だとは思うんですけれども、やってきたこと、やっていることは正しいのに、でも、それが国民にちゃんと受け止められていないっていうところはですね、どうやって乗り越えていくのかっていうことはですね、非常に大きな課題だなと思っています。

その場合に世代の格差ですね。例えば、今の10代、20代、30代ぐらいの方は、我が党に相当ネガティブなイメージを持たれているんじゃないかと。ある一定程度の年齢、50代後半から60代、70代っていう人は、いやいや必ずしも立憲民主党がそんなひどくはないよっていう印象を持たれているようなので、若い皆さんに対して、どうやって我々がこれからアプローチをすべきなのかっていうところは大きな課題だと思っています。特にネットなどを含めです。ここは重要なポイントだと思いますね。

──質問リストにも書きましたが、就職氷河期の時代から安倍政権のもとで若者の雇用が改善されたということで、若者のほうが自民党を支持していると少し前までいわれていました。しかし最近では、コロナ危機があり、非正規雇用の問題も明るみに出て、さらにインフレや日本の衰退がいろいろなデータで示される時代になり、若い人の方が、むしろ政権に不信持ってきているという分析もあります。その辺の実感はないですか。

逢坂: それはですね、やっぱりこれほど非正規が増えてですね、自分の収入も安定しないような状況で、最初はそれを若い皆さんあまり実感してなかったかもしれないんですが、ずっとその状況が続いているわけですよね。それでそれを作ったのは誰だっていうところにですね、少しずつ気がついて来たんじゃないのかなという風に私は思うんですね。

日本で1番 出生数が多かったのは1949年なんですね。この年、270万人生まれています。今はこれが一昨年72万程度になるという風にいわれています。だから、200万人も少ないんですね。で、もう一方で、婚姻数ですね。これが、1972年当時は100万組、年間婚姻しているんですね。今、これ50万組ですよ。

なんでこんなに婚姻が少ないのか、みんな結婚したくないのかって言えばですね、そうじゃないんですね。望んでいても結婚できないような状況になっていると。それは何に起因しているか。まず1つは、年収と婚姻率には相関関係がある。年収が高ければ婚姻率が高い。それから、働き方と婚姻率にも相関関係があり、正規職員の方が婚姻率が高くて、非正規が低くてアルバイトの人はもっとそれより下だということですよね。

だから自分たちが望むような暮らしができない社会をこの30年余りの間に作り込んでしまった、その 責任はどこにあるんだと。それはやっぱりずっとこの間、ごく一部の時期を除いて政権を担ってきた 自民党じゃないのかっていうことにですね。気がついてきたっていうよりも、そう思わざるを得ない局面に私は来ているような気がしますね。

あと教育の問題もそうですね。OECDの中で、教育について最も税金を使ってないのは日本だといわれているわけですよね。最もお金を使っている国の大体半分から半分よりちょっと下回るぐらいですね。それによって今何が生じているかというと、家庭の所得の状況に応じて教育の格差が生まれているわけですよね。教育の格差というよりも、教育の選択肢の格差ですよね。お金がたくさんあれば望むいろんな教育が受けられる。お金が少なければ、能力があってもその選択肢が限られるっていう時代になっているわけですね。

これが単なる教育の格差ではなくて、子供たちのやる気の格差に繋がっているわけです。最初からもう 僕なんかダメなんだとか私の家なんかダメだ。ま、こういうことを学校の先生は非常に危惧するわけですね。だから、なんでこんな社会になったんだっていう思いがですね、もしかすると若い皆さんの中に芽生えてきているのかもしれないなっていう風に思うんです。

だから、足元のその政策がいいとか悪いとかっていうよりも、じわっとこう、 自民党政権に対する、なんていうか危機感みたいなものが、少しずつあるんじゃないかなって気が私はします。ただ、その時に、じゃあその危機感に対して野党がこうだと言い切れてない現状はですね、私は非常に寂しいんですね。しかも、野党同士がどちらかと言えば 足を引っ張り合うような場面、そんな雰囲気に見られたりするわけですよね。だから、そこをどう乗り越えるかっていうのが、1番目の質問にも私は関わってくると思うんですよ。

4.野党の政策を正面から扱わないメディアの責任

──2009年の民主党政権の時代から、「コンクリートから人へ」というスローガンがいわれており、それを現在でも評価する評論家も多くいます。ただ民主党を継承する立憲民主党が、「人への投資を優先する政党である」と広く国民の間で承認されていないのではないでしょうか。それはなぜでしょうか。

逢坂: 公共投資予算を増やせばすぐにでも変化が見えるんですね。人への投資っていうのはすぐには変化が見えないんですね。でも、それを放置しておけば、長い間のうちにいつの間にか劣化していきます。つまり公共投資は、短期間で政策の効果が見えるのですが、人への投資はすぐには効果が見えないのです。しかし人への投資を怠ると、いつの間にか社会が劣化し、それを取り戻すためには膨大な時間がかかります。

岸田さんは経済、経済って連呼しますね。その時に我が党がやるべきことは、教育、教育と連呼するっていうようなですね、そのある種のがむしゃらさんみたいなものが、足りてないのかもしれないなって私は思うんです。すぐに効果が出ないが、社会に絶対必要な政策を訴える際には、粘り強さ、がむしゃらさが必要です。

──泉代表がその教育格差問題、教育、教育と連呼しているようには思えないのですが。確かに、今、維新や小池都知事、岸田政権などが唱える高校授業料無償化は、民主党政権の時代に流れができたわけですが。

逢坂: 人への投資っていうことですが、今、私たちは、「人へ、未来へ、まっとうな政治へ」っていうことを言っているわけですよね。これは泉代表になってから、我々が目指す社会の姿っていうのを しっかりさせようということで、改めて作り直した言葉です。 民主党政権の頃に始めた政策について、それを継承している部分もたくさんあります。

例えば、少人数学級始めたのも民主党政権ですし、高校の授業料無償化を始めたのも民主党政権です。あの時、本当に口汚くののしられてですね、ばらまきだ、ばらまきだ、子ども手当に至っては「愚か者めが」とまで罵倒されたわけですよ。

だからその意味で言うと、本当は国民の皆さんに、いわゆる民主党の流れを組む政党こそが、それは立憲民主党、それに国民民主党さんも多分そうだと思うんですけど、その政党こそがですね、人に投資をする源流なんだって、本流なんだっていうことをやっぱりわかってもらいたいと思います。

例えば給食の無償化とか、高校の授業料を所得制限なしに無償化し、それから国立大学の授業料も無償化。さらに、私立については、国立大学の無償化をすると同じだけの財源を私立大学に渡すというようなことで、これで年間3兆円半ばでこれやれるんです。

だから、私は昨年、11月24日だったと思いますが、予算委員会で総理に質問したのです。国民1人当たり4万円の減税をするとなると、大体 4兆円かかるんですね。4兆円財源がへこむわけですよ。だから、それと同じ財源があれば、 給食も高校も大学も無償化できるんですよ。で、どっちが有効でしょうか。

1人4万円減税して、その減税して可処分所得増えた分が貯金に回るっていうことであれば、これは経済には効果がないわけですね。ところが、教育費の無償化っていうのは、物が入りような世代の皆さんの可処分所得を増やすことですから、 それは経済にお金が回る可能性が高いんですね。限界消費性向が高いっていう言い方をしますが、その方が経済にプラスになるんですよと。

なので、そこも含めてですね、さらに発信力を強めていきたいと思います。もっと言うなら、今回、異次元の少子化対策3.6兆円余り、 あるいは防衛財源、5年間で43兆円余り。こういうこと政府も言っているわけですよね。そうであるならば、果たしてその今やろうとしている政策の妥当性があるのかないのかも含めてですね、それほど財源が確保できるっていうことであるならば、それらを政策の妥当性を見た上で、教育の無償化に振り向けるっていう議論だって私はあると思うんですね。

5.民主主義に立ち「政治とカネ」の抜本解決を

──それでは次に自民党の裏金問題と政治資金規正の問題に行きたいと思います。逢坂さんは党の政治改革推進本部の本部長代行ですが、これから始まる国会で、他の野党と連携して、立憲民主党はどのように岸田政権の追及や政治資金規正法の厳格化を提言してゆきますか。

逢坂: 政治にまつわるお金は、入りも出も透明化するっていうことが基本ですよ。そうしないと国民の信頼は得られないと思いますね。だから、旧文通費についても、 使途を明らかにして、その説明責任を果たすっていうことに私は尽きると思うんですね。

それから、この間ずっと政策が歪んでいるというふうに指摘せざるを得ないのは、企業団体献金です。先日も、ある与党議員の方と一緒にテレビに出たらですね、企業も民主主義に参加をするっていうようなことをいっていましてね。企業献金もその1つの形だっていうようなニュアンスのことをおっしゃったんですね。私、それを聞いて唖然としましてね。

民主主義の基本というのは、 お金がある人もない人もみんな公平に1票を持っているから、それは民主的だと言われる1つの所以なわけですよ。じゃ、お金のある企業がいっぱい献金して、お金のない企業は献金できなくて、お金のある企業の分野だけ政策がその企業の思うがままになっていくなんていうのは、これは政策が歪んでいる。だから、そういうことを考えてみると、やはり企業団体献金は廃止するっていうことが私は原則だと思います。

我が党には政治改革推進本部があるんですが、政治改革実行本部というテンポラリーな本部、臨時の本部とし立ち上げました。トップには岡田幹事長についてもらってですね。政治改革本部というのは、選挙制度に関することとかですね、森羅万象、政治にまつわることをやっているので、 やっぱりスピード感あげてやろうということです。

政治改革に関して言うと、岡田幹事長はわが党の中でも、立憲民主党になる前からも相当に力を入れてきた方です。その方自らが本部長をやって、とにかく前へ進めるんだって思いですので。そこでの議論で出てきたことは、各党の皆さんにも一緒にやりませんか、という呼びかけをしていくことになると思いますね。

── 改革実行本部長が幹事長の岡田の呼びかけでできたという事ですが、確かに岡田さんといえば、90年代初頭の自民党の時代から、佐川事件など「金と派閥政治」をめぐる若手の政治改革の旗振りだった人です。彼であれば超党派的な、自民党の一部に対しても働きかけは可能なのではないですか。

逢坂: そうですね。ただ、残念ながら今の与党はですね、自分たちしか知らないこと、それを明らかにもしようともしないで、とりあえず処方箋だけを書こうとしているわけです。こんなまやかしはありません。やっぱりこうこうこういうことで実態はこんな風になっていましたと、この点は反省しなければなりません。だからこういう処方箋が必要ですっていうことならわかるけれども、なんか処方箋の方だけ先に書いてですね、その患者の実態はどうなんですかっていうこと言わないわけですよね。これはやっぱり信用できないですね。

──ただ順番からしますと、安倍派の裏金問題は昨年12月初旬に東京地検特捜部が捜査を始めメディアで大きな問題として採り上げられ、自民党は1月10日に政治刷新本部を立ち上げています。今日は1月16日ですので、自民党の対応を追っている感じがします。遅くはないですか。

逢坂: その点で言いますと、我が党は既に様々法案を出しているんですよ。企業団体献金廃止の法案なんかも出してますから、取り組みは前からずっとやっているんですね。ただ 残念ながら、今の日本のマスコミっていうのは、野党のそうした取り組みについてはなんか反対してるものとかですね、あるいは与党の動きが出て初めて野党の動きを報ずるみたいなところがあります。そこは残念なところで、我が方の責任というよりも、日本の政治や報道のあり方にも問題があると思います。

旧文通費は、これは維新さんも含めて一緒に国会に法案を出しています。だけど、全く取り合ってこないのは与党であり政府でした。だからそういうところにもっとスポットライトを当てて、実は野党が連携してこんなにやってるんじゃないかと、それに対してやらない与党や政府は何なんだっていう、その声をもっと大きくなるように私は報じるべきだと思いますね。

──自民党は1月25日に、政治刷新本部の中間報告をとりまとめました。

野党も29日段階で政治資金規制の改革案が出そろい、新聞報道では、立憲民主党は野党案の一本化を模索すると報道されています。立憲民主党案では、パーティー開催自体の禁止、連座制導入や政治資金隠匿罪新設など政治家の罰則強化、政策活動費の廃止など、抜本的な改革案を提出しています。野党提案の一本化の可能性とその意義や、この問題での2月からの国会での立憲民主党の展望を述べてください。

逢坂: 立憲民主党は政権交代を見据え「次の内閣」を設置しています。その上で次期総選挙で政権交代を果たすため、既に経済、金融、エネルギー、子育て支援、教育、外交防衛、などの主要政策を揃えています。

さらに泉代表は「ミッション型内閣」を提唱しています。ミッション型内閣とは、古い価値観や不祥事体質を変えられない自民党政権に代わり、国民のための「ミッション(共通政策)」を掲げ、選挙に勝ち、その政策を実現する内閣です。

次の総選挙で立憲民主党が比較第一党、つまり全ての政党の中で一番多くの議席を得ることを目指すのです。

今回の自民党裏金事件のようなことを防止するために、立憲民主党は「収支報告書の代表者を国会議員本人にする」「連座制の採用」「政治資金隠匿罪の新設」「全ての収支報告書のデジタル化とオンライン提出」「政党の政策活動費廃止」「旧文通費の使途公開と返還の実現」「政治資金パーティー及び企業団体献金の全面禁止」などを提案しました。しかし自民党の中間報告を見ても彼らのやる気はゼロです。

だからまず野党が共通政策を掲げて、国会でともに闘うことが重要です。政治改革だけではありません。野党各党は「防衛増税は不要」という政策でも、自民党と闘ってきました。「ガソリンのトリガー条項凍結解除」もそうです。自民党政権で遅々として進まなかった「教育の無償化」「第一子からの児童手当増額」なども同様です。野党各党の違いをあげつらうことではなく、共通政策を掲げ野党がともに闘うことで、自民党一強に風穴を開けたいと考えています。

6.インフレ下の「人からはじまる経済再生」の政策的思考

──立憲民主党は「人からはじまる経済再生」を掲げ、最初に逢坂さんがいわれたような、人への投資、子ども・子育てへの支援により、中堅層の可処分所得を増大させ、経済を回し発展させるという政策を提示しています。

非正規などの就業者の雇用や生活ができる賃金保障はもちろんのこと、勤労者の多数を占める中小企業で働く人々の給与も、インフレ以上に上がっていかないと実質賃金は下がります。自民党のアベノミクスが加速させた格差拡大が、インフレでさらに拡大することになります。ただ欧米に比較すると、ストライキを頻発させるような状況にはなっていません。どのように公平な経済社会に変えていく政策でしょうか。

逢坂:  1972年、狂乱物価というのがありました。あの時、街中からトイレットペーパーがなくなったり、物価は10パーセント以上上がったっていうようなことがありましたよね。ところがその翌年、 賃金が2割とか3割とか上がって、あの狂乱物価は一気に収まったわけですよね。

そういう状況ほど今の日本では物価は上がってはいないんですけれども、ただあの時みたいに、今は2パーセントか3パーセントか、物価が上がってる状況に応じて賃金が上がるかっていうと、上がる状況でもないですね。 今、経済が伸びない中での物価上昇であり、経済が伸びない中での賃上げっていうことが求められているわけですね。我々としては、だからこそ教育費の無償化なんですね。可処分所得を増やさないことには、経済へお金が回っていきませんので、これ繰り返しますけれども、教育費を下げればその分、可処分所得が増える。しかも、教育にお金を要する世代の皆さんは、お金を使いやすい世代なんですね。だから、そこが1つの私はスイッチになると思っています。そのことによって国民の購買力を高め、他の産業の皆さんも物が売れるってことがわかれば、設備投資も進んでいく可能性は高まるわけですよね。

今、労働分配率見るとですね、大企業は4割とか5割ですよ。でも、中小企業、零細企業では、労働分配率7割、8割です。だから、中小企業に賃金上げなさいって言っても、上げることはなかなかできないんですね。なんでこんな構造になったかっていうと、ずっと賃金を抑える政策がこの20年以上続いてきて、低い賃金の中で会社経営をするのが当たり前の状態になっているんだと思うんですね。

だからそういう意味では、何らかの形で、給付や可処分所得を増やす。それも単にばらまきのように給付をするんではなくて、社会に効果のある形でやる。それはやっぱり教育を無償化することだと思います。教育面でもプラスだし、経済の面でもプラスだしっていうことではないかと、私はそう思っています。だからこそ、年末にですね、この、人から始まる経済再生っていうのを出したんですね。やはり人への投資があって初めて産業も伸びてくるっていう考え方を基本的に持っています。

税制、これも直していかなきゃいけないと思っています。今の日本の税制っていうのは、所得の低い方にどちらかというと、重税感がある。社会保険もそうですね。それから、中小企業に重たくて、大企業にどちらかというと軽い仕組みになっている。所得の少ない方に重くて、所得1億円超えると税負担率が下がっていくというような実態もあります。

それから働き方、こういったことも総合的に見ていくっていうのは、それは当然のことだと思いますね。特にこの間、非正規を増やしてきたことが日本の社会に相当に悪い影を落としています。非正規、それから最近ではインターネットを介して単発の仕事を請け負うギグワーカー的なものとかとですね。だからそういう労働のあり方、税、社会険料を含めた所得の再配分のあり方もセットで見直していくことになると思いますね。その時の判断の基準はやっぱり人です。

──立憲民主党といえば人への投資であると、それを象徴するような立憲民主の人物なり、党のイメージが重要になりますね。泉健太代表はできますか。

逢坂: それは泉代表にやってもらわなきゃなりません。

──お忙しいところありがとうございました。

編集部注:このインタビユーは1月16日に行われたが、政治資金規正法の法改正をめぐり、与野党の提言がそろい、国会での議論が始まる前であったので、一部は、2月1日の時点での見解を加えていただいた。

おおさか・せいじ

1959年ニセコ町生まれ。北大薬学部卒業後、ニセコ町役場勤務。1994年ニセコ町長(~2005年・3期)。 2005年衆議院議員初当選(現在5期目)。総理大臣補佐官、総務大臣政務官、立憲民主党政務調査会長などを歴任。現在/立憲民主党 代表代行、立憲民主党北海道総支部連合会代表。資格など/薬剤師、行政書士、龍谷大学客員教授。

すみざわ・ひろき

本誌代表編集委員。日本女子大学名誉教授。専攻は社会民主主義論、地域政党論、生活公共論。著作に『グローバル化と政治のイノベーション』(編著、ミネルヴァ書房)、『組合―その力を地域社会の資源へ』(編著、イマジン出版)など。

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