特集 ● 社会の底が抜けるのか

試練か、それとも希望か

重要な2024年欧州議会選挙を待つヨーロッパの動向

龍谷大学法学部教授 松尾 秀哉

1.オランダの衝撃

本稿の最初に1月1日の能登半島地震で被災された方へお見舞いを申し上げたい。また、亡くなられた方のご冥福を心よりお祈りする。一刻も早い不明者の発見、災害関連死が少しでも減ること、復興がなされるよう、それらの活動に携われる方々のお働きに敬意を表するとともに、皆様のご無事もまた祈っている。

昨年11月22日にオランダで総選挙が行われた。その結果、「オランダのトランプ」と呼ばれるヘールト・ウィルダースが率いる右派ポピュリストの自由党(PVV)が17議席から37議席に躍進して第一党となった。前与党のマルク・ルッテは13年間政権を率いてきたが、その中道右派のVVD(自由民主党)は10議席減らして24議席となり第3党に転落した。第2党はPDVA・GL(労働党・グリーンレフト連合)で、8議席増やして25議席となった。ちなみに第4位には、移民受け入れを制限すると主張する新党のNSC(新社会契約)が20議席を獲得した。

自由党、そしてウィルダースの主張する政策は、反移民、反EUに加え、反環境保護、さらに反ウクライナ支援である。ウクライナはともかく既存の政治に反対する主張は自国第一主義の「オランダのトランプ」にふさわしいともいえる。

オランダで反EUなどを掲げる右派ポピュリストが第一党を獲得したことは、ヨーロッパ政治にとって衝撃である。なぜならオランダは、EUの前身といえるECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)の創設時以来の構成国であり、戦後の欧州統合の歩みを進めてきた国と認識されていた。また、2014年から16年にかけてアメリカではトランプが大統領になり、ヨーロッパでも右派ポピュリストが台頭してフランスでFNのルペンが大統領選挙の決選投票まで残ったり、最終的にイギリスがEUを離脱することになったりしていた当時、オランダはウィルダース(自由党)が確かに一定の支持を得たものの、前述の中道右派であるVVDが第一党を死守し、当時の「右派ポピュリストの波」を食い止めた。

さらに地理的にもオランダはイギリス、フランス、ドイツにはさまれた「西欧の十字路」と呼ばれる中心地にある。2015-6年の「波」後も右派ポピュリストが多大な支持を得てきたハンガリーやポーランドは、相対的にEUの周縁に位置しているといえるだろう。つまり、そうした周縁国にはトルコなどを経由して難民が入ってきやすいため、シェンゲン協定やダブリン規則などEUの難民受け入れルールに従えばそれらを受け入れる負担が大きくなり、反動的に「反移民・難民」を掲げる政党やリーダーが支持を得やすい。しかしオランダはそうではなく、ドイツ、イギリス、フランス、ベルギーなどと近い中心地である。そのためハンガリーのような「反EU」を掲げる政党が勝つ理由がわかりくい。以上の点でオランダは衝撃だった。ではどうしてオランダで右派ポピュリストが今頃支持を得たのだろうか。

国際政治学者の舛添要一は、オランダで「反EU」政党が第一党になったことを「ウクライナに対する支援疲れ」によると説明している(『現代ビジネス』2023年11月29日 )が、従来オランダは小国ということもあり、自国の安全保障をNATO(北大西洋条約機構)に依存している。たとえば隣国ベルギーも同様だが、ベルギーが「ヨーロッパ」の結束を強調する傾向があるのに対して、オランダはアメリカを含めた「北大西洋」の結束を重視する傾向があり(松尾秀哉「ベルギー、オランダとNATO」、広瀬佳一編著『NATO(北太西洋条約機構)を知るための71章』明石書店、262-265ページ)、その意味でももし本当に「支援疲れ」の結果としてオランダの前政権が倒れ右派ポピュリストが第一党になったとすれば、EUやNATOの中心国にも同様の「疲れ」があることが推測され、各国への影響が懸念される。

特に今年は6月に欧州議会選挙、11月にアメリカ大統領選挙が行われる「選挙イヤー」であり、選挙が続くゆえの2016年以来の「ポピュリストのドミノ倒し」が起こるかもしれない。そうなれば、ウクライナに対する支援が縮小ないしストップし、「反転攻勢」が十分に功を奏していないと報道されるウクライナの事態にも大きな、そして悲しい影響を及ぼすことになりかねない。

それを今予測することは難しいが、長期化するウクライナ支援が各国政治にどういう影響を及ぼす可能性があるのか考えておく必要はあるだろう。本稿では、まずこの数年のヨーロッパのポピュリストの動向を整理し、オランダを中心にポピュリストの(再)台頭の理由を考える。さらにウクライナ支援がポピュリスト勢力に及ぼす影響を考えてみたい。

2.近年のヨーロッパのポピュリスト

以上のような右派ポピュリストの台頭はオランダだけではない。少し状況をみておこう。2022年6月、フランスのRN(国民連合。かつての国民戦線)はやはり根強く支持されて下院選挙で結党以来最多となる89議席を獲得している。北欧のスウェーデンでは、その年の9月の下院選挙で、やはり右派ポピュリストのSD(スウェーデン民主党)が第2党に躍進している。さらに続く10月、ネオファシズムの後継ともいわれ、極右政党と称されるFdI(イタリアの同胞)の党首、メローニが厳格な移民規制を掲げ政権の座に就いたことは同年のヨーロッパ政治における最大の衝撃であった。

さらに23年になると、4月にフィンランドで反EUの立場のフィン人党が議会選挙で第2党となり、連立に加わった。ドイツでは6月に反ユーロや移民排斥を訴えてきたAfD(ドイツのための選択肢)が世論調査で過去最高の支持率19%を獲得した(BS日テレ『深層ニュース』、2023年12月6日放送)。

他方で、周縁に位置し、移民・難問の受け入れ問題などを理由にポーランドで大きな支持を集め続けていたPiS(法と正義)は2023年10月の総選挙で、第一党は維持したものの過半数割れで、その後野党に転落したと報じられている。8年続いた独裁的な反民主的な政権が終わりをつげ、前欧州理事会常任議長のドナルド・トゥスク率いる「市民連合」を中心とした野党連合が政権を奪取した。しかしPiS寄りの大統領アンジェイ・ドゥダが議会の決定に対して拒否権を行使できるため、トゥスク新政権の政権運営は難航するともみられている(実際に早々に政治とメディアの関係をめぐりトゥスクが苦境に立たされていることが報道されている)。

こうしたヨーロッパの状況について、ヨーロッパ政治に詳しい水島治郎は、第一にエネルギー価格の上昇とインフレによる生活に対する経済的な不安、第二に移民・難民による社会の変容に対する社会的、心理的な不安という二つの不安を煽るポピュリストの言説に理由を求める。また、ヨーロッパの移民問題など国境管理に詳しい岡部みどりによれば、域内の移動の自由を認めるシェンゲン協定などのEUの制度が移民・難民の国境移動を認めていること、そしてこうした移民・難民問題がそもそも政治化しやすい(一般の人たちにとって「自分たちを苦しめている原因」として受け入れられやすい)ということを理由に述べている(上記『深層ニュース』)。こうした移民・難民問題と、先に水島が述べたような経済問題が住宅問題に集約し、オランダでは大きな争点となった。いな、水島が述べたように、争点となるよう、ポピュリストに操作されたと考えるのは妥当であろう。この点は後述する。

それ以外にも、心理学的な指標である、仕事・家庭などによって構成される「主観的幸福感」が重要なポピュリスト支持の要因であると述べるものがある(Burger and Eiselt(2023)”Subjective Well-Being and Populist Voting in the Netherlands” Journal of Happiness Studies )。

また、いったん(前回のオランダ選挙やマクロンがルペンに勝利したことで)終息したように映った右派ポピュリストの「ドミノ倒し」が再び戻ってきた背景として、右派ポピュリストが、自国中心主義の延長で「地球温暖化反対」を叫ぶ環境運動への反発があることを挙げるものもある(Schworer and Fernandez-Garcia(2023)”Climate Sceptics or Climate Nationalists? Understanding and Explaining Populist Radical Right Parties’ Positions towards Climate Change (1990–2022),”Political Studies, pp.1-25,)。すなわち、グレタ・トゥーンベリンらによる環境運動に対抗した、自国経済の発展を主張する右派ポピュリスト(この論文では「気候ナショナリスト」と呼ばれる)の主張が政治化されたという。

温暖化に反対するグレタらの運動に対抗して、それがこの1-2年の右派ポピュリストの原動力に結びついたとするならば、そこには経済事情、すなわちエネルギーの高騰、さらにインフレが介在していることは否定できないだろう。環境を重視してきたヨーロッパにおいてでさえ、みな、生活が苦しいから、気候温暖化よりも自国経済を優先するようになりつつあるのかもしれない。先の「主観的幸福感」にしても、経済事情という要因が通底しているように考えられる。

そしてもし、こうした、特に経済問題の根っこが「ロシアのウクライナ侵攻」、そしてロシアに対する経済制裁の結果であり、ウクライナに対する支援政策にあると、おそらくヨーロッパの多くの有権者には理解されているであろう。そのため、既存の政権が行ってきたウクライナ支援政策に反対する声が有力になる。先の「支援疲れ」という解説も一定の理がある。では、「ドミノ倒し」のヨーロッパで、おそらくまだ続くロシアのウクライナ侵攻によって、ヨーロッパは2015-6年に匹敵する、もしくはそのとき以上の「ポピュリストの巣窟」となってしまうのだろうか。

くしくも2024年は欧州議会選挙である。ポピュリスト勢力はリベラル、社会民主主義に次ぐ「第三勢力」になることを目指すと述べているが、ヨーロッパは今本当にそういう方向に向かっているのだろうか。そして世界はリベラル勢力と権威主義的な勢力に、冷戦終結30年を経て分割されてしまうのだろうか。

3.ウクライナ支援とポピュリスト――ポピュリストのジレンマ

ウクライナ支援がポピュリストの再台頭を招いているとする論考がある一方で、逆にそれがあったとしても一時的なものにすぎないとする主張もある。ベルギーのフランデレン教育相を務めるトゥーン・ポーウェルスに聞いてみよう(Pauwels, Teun(2023)”The Impact of the Russia-Ukraine War on ties between the Vlaams Belang in Belgium and the Putin Regime,” in Gilles Ivaldi and Emilia Zankina eds., The Impacts of Russian Invasion of Ukraine on Right-wing Populism in Europe, European center for Populism Studies, March 8, 2023, Brussels.)。

ベルギーはオランダ、ルクセンブルクとともに「ベネルクス」を構成する一国で、やはりドイツ、イギリス、フランスに囲まれている。最大の特徴は、北部は公用語をオランダ語、南部はフランス語とする多言語国家(北部に位置する首都ブリュッセルは両語を公用語としており、東部には一部ドイツ語圏もある)であり、しばしば政治的に対立する「言語問題」を抱えている点だ。特に2000年以降は、選挙後、双方の意見が対立し、新政権の成立までに一年以上を要する「分裂危機」を経験している。

その主な原因は経済で、1960年代を境にフランデレン地方(オランダ語)の経済が発展し、他方で19世紀以降世界大戦前まで炭鉱業によってベルギー経済を支えてきたワロニー地方(フランス語)の経済が、エネルギー革命によって低下していくにしたがって、オランダ語の優位を主張するフランデレン側と、既得権益に固執するワロニー側の対立が激しくなった。これによってベルギーは1993年に連邦制導入をともなう憲法改正を行った。

しかしそれ以降も対立は止まず、フランデレンの自治の拡大や独立を主張する勢力に対する支持は根強い。このうちフランデレンの独立を主張して1978年に初めて1名の議員を輩出したもののその後低迷し、1991年に移民排外主義を前面に出してフランデレンで躍進したVlaams Blok(フランデレン同盟)(当時。現在のVlaams Belang(フランデレンの利益)) (以下いずれにせよVBとする)は、フランスのRNと並びヨーロッパで最も古いポピュリスト政党と位置付けられている。

VBは、2009年の地方議会選挙の得票率24%を頂点としてその後支持率は低下し2014年の国政選挙では過去最低の支持率に落ちる。主な原因は、やはりフランデレンの自治強化を訴えるN-VA(新フランデレン同盟)が、「フランデレン独立」というVBの非現実的な主張にとってかわった(実際N-VAは2010年の国政選挙以来、国政でも第一党を維持している)からだとされる。

さて、このVBも、以上の低迷期を経て、2022年11月の世論調査では大きく支持を回復している。ポーウェルスによればその理由は、第一に2016年に生じたテロ以降、移民問題が再び争点化していること、第二に、有権者に支持されてきたN-VAが第一党を維持して政権入りを果たすことで、逆に穏健化した既成政党とみなれるようになり、右派を支持する有権者が再びVBを支持していることにある。

では、ロシアのウクライナ侵攻、特に「支援疲れ」とVBの支持率上昇との関係はあるだろうか。先のポーウェルスは、そこに明確な因果関係はないと考えているようである。というのも、そもそもVBには確固たる外交政策がない。よって2014年のクリミア併合の際も目立って何か主張することはなかった。むしろ一部の構成員がEUの官僚主義を批判し、ロシアの一体性、保守的なキリスト教的価値をまもり国家主権を維持するプーチン体制を支持する声をあげていた。

しかし2022年のウクライナ侵攻後、VB(の一部)はその立場を変えざるをえないという。党首のトム・ヴァン・グリェケンはロシアについて、当初「反多文化主義」を主張する同胞とみていたが、現在は自身のプーチン観が誤っていたことを認めている。90年代以降のVBの躍進を支えたときの党首、フィリップ・デヴィンターでさえも今やプーチンを独裁者と批判するようになった。

すなわち反EUを掲げる右派ポピュリスト政党は、その支援政策に対して批判的なスタンスをとってはいるが、そのスタンスが「プーチンに対する支持」とみなされることは避けている。効果の薄い制裁を続けるEUを批判はするが、プーチンを支持しているとみられることは避けなくてはならないのだ。それだけまだヨーロッパの平和を願う人々の祈りは強いのだ。ウクライナ支援に対する批判はインフレのなかで確かに一定の支持を得るが、しかしそれが「プーチン支持」を意味する可能性がある限り、ポピュリストは思い切って「反ウクライナ支援」を訴えることはできないはずだ。EU批判とプーチン批判のジレンマのなかにポピュリストはいる。

すなわち今なお、ヨーロッパのデモクラシーの強靭性をここにみることもできる。2023年夏、コロナ禍が空けて久しぶりにゆっくりとベルギーを訪問したが、そのとき筆者は、2014年国政選挙後の連立政権交渉でキーパーソンであったと筆者自身が評しているグゥウエンドリン・ルッテン元フランデレン自由党党首(現アールスコット市長)(松尾秀哉(2016)「ベルギーにおける多極共存型連邦制の効果」、松尾秀哉・近藤康史・溝口修平・柳原克行編著『連邦制の逆説? : 効果的な統治制度か』、ナカニシヤ出版、を参照のこと)と対談することができた。

そこでルッテン市長が繰り返し強調していたのが、なおヨーロッパには異なる主張をもつ政治リーダー間であってもその間の対話を重要しているという民主主義への信頼、信念が残っているという点であった。いわばヨーロッパに特有の「合意」を重視する民主主義は決して失われていないことを市長は力説していた。詳細な対談内容の紹介と分析は、ややこのテーマと異なるため別で論じることとするが、市長との対話のなかから主要な政治リーダーたちのヨーロッパを守るという力強い宣言を聞いた。まだヨーロッパは、ポピュリストの反デモクラシー的、親プーチン的言説や行動を許さないはずなのだ。

では、なぜオランダなどでポピュリストが支持されてしまうのだろうか。その鍵が先に挙げた「戦略」にある。

4.なぜ扇動されるのだろうか?――その先にある希望?

先に紹介したように、社会的、経済的不安を背景に、ポピュリスト側の争点操作によって再びポピュリストが台頭したとする論考は多い。他にも、イタリアのカシラギらは、ポピュリストに投票する有権者が、その政策を理解して支持しているわけではなく、言説、そのレトリックに流されているという(Casiraghi et al.(2023)” Populism in the eye of the beholder? A conjoint experiment on citizens’ identification of populists,” European Journal of Political Research, Vol. 63, (1) pp. 214-235.)。 

同様にグローバリズムに関心を持たない有権者たちが、反グローバリズムを掲げる右派ポピュリストを支持する理由として、やはりポピュリストの言説(ナラティヴ)に左右されていることを主張する論考もある(Metten and Bayerlein(2023)” Existential anxieties and right-wing populism in Europe—why people uncovered by globalization vote against it,” Zeitschrift für Vergleichende Politikwissenschaft,(17) pp.1-30.)。こうしたサプライサイドの戦略などを強調する論考があることは従前からだが、ここには一定の「警告」が含まれているように思われる。

それはヨーロッパの有権者の流動化である。かつてヨーロッパの政治社会は歴史的に形成された社会的亀裂を含んでおり、それは20世紀初頭に各国政党システムを「凍結」した。しかしその後この亀裂は「解凍」され、たとえば環境政党や極右などの新党が台頭してきたという議論は多い。

筆者がここで述べる「警告」も同様である。たとえばギュットとネルソンによれば、表現が微妙だが、かつての右対左という亀裂は今なお存続しているという。しかし、伝統的な政党政治の社会的土台となってきた亀裂は衰退している。今や若年層、労働者階級、低学歴層に支持される右派ポピュリストと、さらに若く、また学歴も低く、経済的展望に悲観的で政治的エリートを敵視する左派ポピュリストとの、新しい右派と左派の対立にとってかわられたという。そしていずれもヨーロッパ(EU)のエリートを敵視している(Guth and Nelsen(2019) “Party Choice in Europe: Social Cleavages and the Rise of Populist Parties,” Party Politics, pp.1-12, )。

こうした社会的亀裂の変化を論じるものは枚挙にいとまがないが、改めてヨーロッパの亀裂の変化と、それにともなう有権者の政治的志向の流動化を思わざるをえない。すなわち確固たるものがないからこそ有権者はポピュリストの言説や戦略に、いとも簡単に流されてしまっているのではないか。オランダの人びとは、一時的に――と考えたい――その波に飲み込まれた。

政党システムの変容は、有権者、フォロワーの問題でもある。特に現在は経験したことのないような危機がすぐ目の前にあり、先に「合意」を強調する既成リーダーの力強い宣言を紹介したものの、その危機感、生活苦がすぐ克服されるものでない限り、人びとは既成のリーダーたちを支持できないかもしれない。かといってウクライナ支援に反対することは非人道的である。今まさにヨーロッパの人びとは、このジレンマのなかで試されている。自分の生活に目を向けた投票行動へと流されるか、それとも長期化しているが、プーチンに対抗する姿勢を崩さずにいるのか。

もし戦況がこのまま長引くなら、今年6月の欧州議会選挙の結果は、世界の人びとに右派ポピュリストの躍進、勝利という「試練」か、それともその敗北というデモクラシーの「希望」を示すことになろう。きわめて重要な選挙となることは間違いない。

 

*本稿は、科学研究費補助金(基盤(C))「ベルギーの多層的な政治空間における同時並行的な連立交渉の過程と帰結」(研究代表者 松尾秀哉)の成果の一部である。

まつお・ひでや

1965年愛知県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、東邦ガス(株)、(株)東海メディカルプロダクツ勤務を経て、2007年、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。聖学院大学政治経済学部准教授、北海学園大学法学部教授を経て2018年4月より龍谷大学法学部教授。専門は比較政治、西欧政治史。著書に『ヨーロッパ現代史 』(ちくま新書)、『物語 ベルギーの歴史』(中公新書)など。

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