現代の理論アーカイブ

現代の理論アーカイブについて

編集部

『現代の理論』アーカイブでは、第一次から第三次にいたる雑誌『現代の理論』に掲載された論文のうち、再読すべき主要論文を編集委員会が厳選して紹介いたします。また読者のみなさんのご要望にもお応えします。『現代の理論』は、発信媒体の多様化によって目先の時局論・政局に流されることのない骨太で息の長い理論や政策の発信を目指してきました。常に現実や実践への思考を内包し、理論の自立性を掲げての50年―それが雑誌『現代の理論』の歴史でした。そのような先達の営為をあらためて回顧することによって、「今だからこそ」問われなければならない現代的課題の再発見が可能となることを確信しています。

今号の特集は「歴史の転換点に立つ」です。世界的には、イギリスのEU離脱やアメリカのトランプ現象に見られるように、政治がポピュリズムに動かされ、身近に敵をつくって排外的に小さく固まるという傾向が強くなっています。世界経済ももはや安定することを想定もできないような状況です。日本の政治はポピュリズムの傾向ははっきりとは見えないながらも、しかし実際には民主主義が押しつぶされようとしているかのようです。参議院選挙の結果「改憲勢力3分の2確保」で、戦後のパラダイムが大きく変えられる条件ができています。そして日本経済もまた、日銀がお札を刷って国債を買っている状況ですから、いつハイパーインフレが起こってもおかしくない状況でしょう。

今号の小林さんの「経済先読み」が指摘しているように、システミック危機がじわじわと近づいてきているようです。そこで本号のアーカイブでは、第三次『現代の理論』15号(2008年春号)の特集「グローバル資本主義の終焉か」から水野和夫さんの論文「サブプライム危機がグローバル経済の本質的危機を露呈させるか」を取り上げました。水野さんが、本誌デジタル版3号で紹介した『資本主義の終焉と歴史の危機』を刊行されるのはもっとあとですが、すでに「労働者の黄金時代」を終わらせる「価格革命」の時代がきて、世界は大転換すると述べられています。「グローバリゼーションは民主主義を基盤とする主権国家システムとは基本的には相容れず、帝国システムと親密性を有する。中世帝国システムがそうであったように、二一世紀において権威と権力の分離が行われ、イデオロギーの統一が必要となる。グローバリゼーションが不可逆的現象であると考えれば、サブプライム危機は、国民国家と民主主義の危機でもある」との同論文末尾の指摘は、今の世界を見通しています。

いま一つは、同じく第三次『現代の理論』19号(2009年春号)に掲載された、連載「労働運動の明日を探る」の第一回「結成二〇年 連合に未来はあるか」のうち、当時の前連合会長・笹森清さんのインタビュー「社会運動としての連合再生を」を取り上げました。「組合が変わる、社会を変える」と見出しがついています。今号の要さんの論文が触れている「連合評価委員会提言」も重要な文書として取り上げられています。今回の東京都知事選では連合は「自主投票」でした。とても「社会運動」に向かっているとは思えません。連合に限らず、労働運動全体もまた大きな転換点に立っているということであり、残念ながら笹森さんの目指した方向へは進んでいないということです。

過去に『現代の理論』が訴えようとしたことが、いずれも逆方向へ向かっているということのようです。そのままでいるわけにはいきません。本誌の内容を充実させねばならないと心から思います。

論文アーカイブ

第三次『現代の理論』第15号(2008年春)/特集「グローバル資本主義の終焉か」

「サブプライム危機がグローバル経済の本質的危機を露呈させるか」
三菱UFJ証券 チーフエコノミスト・水野 和夫

第三次『現代の理論』第19号(2009年春)/特集「強欲資本主義からの訣別」

「社会運動としての連合再生を」前連合会長 笹森 清さんに聞く

論文アーカイブ

第9号 記事一覧

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