特集●米中覇権戦争の行方

米中覇権戦争から世界の二大ブロック分割へ

日本は「アメリカ帝国」の言いなりで、賃金下落を続けるのか

          

語る人 法政大学教授 水野 和夫

2019年の日本経済は、10月の消費税引き上げによる景気への影響がどうでるかが焦点となるでしょう。今までは、景気不景気に沿って同じ方向で動いていたものが、このところ株価で見るのか、金利で見るのかで、「景気」の定義が変わってきています。前者はグローバル経済、後者は国民経済の良し悪しを反映するものです。

資本側、すなわち株主側からみると、ROE(総資本利益率)は10%近くまで上昇し1980年代と同水準になっていて、いま景気は絶好調です。一方、国民の生活水準を表す実質賃金は、ピークだった1996年の水準と比較して2019年1-5月の水準(季節調整済指数の平均)は14.5%も下落しており、働く人からみれば、不況が25年も続いていることになります。

日本経済「消費増税」で不況へ

ここに出てくるROEという言葉は Return On Equityの略で、自己資本利益率と訳されます。つまり企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の比率で、アメリカの機関投資家の間では「投下した資本に対し、企業がどれだけの利潤を上げられるのか」を示すという点で、最も重要視される指標です。日本では、自己資本利益率が10~20%であれば、優良企業であると判断されています。

日本企業のROEは、失われた30年の落込みを取り返して、もう意気揚々としているのです。

ですが、圧倒的多数を占める個人消費者の側から見ると、生活は年々苦しくなっています。2012年12月から始まった今回の景気回復拡大期は戦後最長となる可能性が高いにもかかわらず、実質賃金は低下し、個人を対象にしたアンケート調査(日本銀行「生活意識に関するアンケート調査」)によれば、2013年6月調査では個人の景況感、すなわち「1年前と比べて、今の景気はどう変わったか」という問いに対して、「良くなった」と答えた人の割合から「悪くなった」と答えた人を引いたD.I.(Diffusion Index ディフュージョンインデックス)がマイマス4.8%まで縮まりました。

しかし、その後のD.I.は「悪くなった」と答える人が多くなり、2019年6月調査ではマイナス25.0と、2016年9月以降では最悪の数字となっています。しかも、今期の調査で1年後の景気感の予想については、D.I.がマイナス36.1と、今景気回復拡大期を通じて最悪の見通しとなっています。この数字は前回の不況期(2012年4月から同年11月まで)の数字を上回っています。

日本経済を、対外経済関係からみると、ここ数十年のグローバル化の進展で、日本においても外国人投資家からの投資を受け入れて、外国の影響力が強まってきています。今のところは所得収支が黒字ですから、貿易収支が赤字になっても、なんとか国際収支の黒字を維持しています。ですが、日本の所得収支は、米国債への投資が大きなシェアをもっているので、米国国債の利回り低下によって、黒字が増加することは難しくなっているのです。

貿易収支が赤字となっても、いまのところは、所得収支が黒字で、経常収支の黒字を維持していますが、所得収支が減ってくると、日本の貯蓄投資バランスが崩れ、年間30兆円にのぼる新規国債の外国人依存度が高まることになるでしょう。現在の段階では、日本国債の外国人保有は短期物が多くて、長期物は残高ベースでは7.1%です(日本銀行「資金循環勘定」2019年3月末)。それでは外国人は日本の国債市場を操作しようがないから、いまのうちに、財政安定化のために消費税を上げなければならないでしょう。

日本の財政状況が悪いのは景気循環によるものではなく、構造的な問題なのです。消費税を引き上げれば景気が悪くなるから今は引き上げるべきではないとの主張は、未来永久に引き上げないと言っているに等しいのです。いまの景気回復は企業業績がいいからであって、家計の景気はずっと悪いままだからです。財政問題を市場が懸念すれば、金利上昇となって、利払い費が嵩み、歳出カットが強化され、そのとき標的になるのは社会保障関連費です。立場の弱い個人にもっともしわ寄せがいくにちがいありません。

短期的な日本の景気は、既に落込み局面に入りはじめており、今後緩やかに低下していくと見ておいたほうかいいでしょう。

金融バブルから米中リスクへ

2012年末以降、景気が大きく落ち込まなくてなんとか持続してきたのは、アベノミクスの効果と言うよりも、基本的には、世界全体に広がる超金融緩和のもとでの金余りによって、日本の資産価格、すなわち株価と土地が値上りしているからです。

銀座鳩居堂の最新の地価が最高値を更新したのは、日本経済が資産価格の上昇に頼って資産バブル経済になっている、象徴的な事例です。日本銀行の事実上のゼロ金利の始まりは、1997年7月の政策決定会合で「物価が過度に下落した場合の経済に及ぼす影響をも念頭におきつつ」という、いままでにない表現で、デフレ対応型の金融政策に踏み込んだときです。それから22年間は、基本的には、金融緩和によって日本経済は深刻な不況を免れていると言えます。

世界経済についても、基本的な構造は日本と同じです。その世界的な金融緩和の継続に関しては、とくにリーマンショック後は、日米欧共同で量的緩和政策に歩調を揃えてきていますが、さすがに2010年代半ば頃からは緩和政策の「出口」を探ろうともしています。しかし、米国の二ユーヨーク連銀が保有国債の削減をしようとしたものの、当初目的に達することができないまま中途半端で終わってしまいました。だから結局のところ、次に来る世界リスクに備えての「利下げカード」を確保するための、予防的な利上げに備えることがせいぜいで、政策金利の正常化はできません。基本的には、超緩和の金融バブルという基本構造は変わらないまま、今日にまで来ているわけです。

そこに、米中貿易衝突からファーウェィへの制裁発動、また日韓関係悪化もサプライチェーンに影響が懸念されるなど、国際経済関係が厳しくなってきています。こうなると、日本経済を取り巻く環境は、内外共に不安定要因が目白押しで、今年の夏から秋にかけて懸念がますます拡大してくることになることが予測され、2019年の世界経済も日本経済も、その後半から下押しリスクが迫ってくることになると見られます。

米中間のAI・5G戦争

今年の世界経済でもっとも大きく話題になったのは、米中貿易戦争とそこからエスカレートした、ハイテクAI・5Gをめぐる米中戦争です。この問題の本質は、「21世紀の『帝国』が米国になるか中国になるか」の戦いであることです。

マイケルドイルの帝国論によれば、覇権というのは外交で他国に影響力を行使することです。また「帝国」とは、相手国の内政問題にも影響力を行使し、その相手国はそれを拒否できない関係にあることを言います。だから、覇権は帝国への道のりの一里塚にすぎないのです。いま、米中新冷戦として戦われているのは、21世紀においていったいどちらが帝国なのかということに決着をつける戦いをしている、ということでしょう。

トランプは、中国に対して、内政面で知的所有権の法律を作り、中国が自らそれに従えと言っているわけです。世界経済史において、国民国家の時代であれば、他国に法律を作らせるようなことは、普通はWTOなどの国際機関が行うべきことです。それをトランプは、国際機関を通すのが嫌なものだから、「パリ協定」も離脱し、TPPも離脱するなど、直接に相手国に影響力を行使しようとしています。これはまさに「公式」の帝国そのものです。これに対して、国際機関を通じて他国の内政問題に影響力を行使するのは「非公式」の帝国です。

要するにトランプは、他国に対して直接に、知的財産権保護の法律を作れと言っているわけですから、これはアメリカが帝国であるということの表明です。今までは、どこの国でも非公式にこれをやってきました。19世紀には、国民国家イギリスが非公式の帝国でした。20世紀は米ソもそれぞれ非公式な帝国でした。21世紀はどうかというと、アメリカがもう非公式だとまどろっこしいので、直接の二国間交渉で決着をつけるようになっているのです。TPPのような12カ国の多国間交渉だと、11対1で、ああだ、こうだと、それぞれが1票を持っていて、アメリカの要求が通らないので、1対1のバイの関係で帝国の威光を通すようにしてきているということです。

環太平洋経済連携(TPP)は、当初はアメリカが対中国経済包囲網に利用する目的で採用した経緯があります。したがって、トランプのアメリカが離脱した現在でも、安倍政権や日本の財界には、RCEP(東アジア地域包括経済連携)と併せて、太平洋大西洋の巨大経済圏の一翼を担おうという発想があります。しかし、情報社会となり、世界の各地に分散的なサプライチエーンの構築が可能となり、また石油がおそらく100ドルを超える希少資源となる21世紀後半には、帝国内の巨大な物流はあまりにもコストがかかるものとなって、不必要になってしまいます。

それらは過去の帝国の遺物であり、とりわけ日本では、貿易収支の赤字の基本をなす20兆円の石油輸入代金を、国内での再生エネルギーに投資することにより、赤字を限りなくゼロに近づけることが大事になります。TPPよりもそのエネルギー転換のほうが重要だということです。

覇権国家と帝国

帝国の要求をもとに他国に内政干渉できるという条件は、アメリカが作った基準に他国が従うことです。それは債権国が債務国を指導するという20世紀の支配の正当性原理に基づいているのです。それが帝国の神聖なる使命だということでしょう。その理屈は、民法の私的財産権は侵さざるものであるけれども、世界でいちばん外国に財産を保有している国はアメリカで、アメリカはその財産を守らなければならない使命を持っていると言われると、大半の国はどこもそれを認めざるを得ないという関係になっているわけです。

しかし、アメリカが債権国か、債務国かということになると、毎年経常収支赤字を続けてきた結果、それの累積概念である対外資産負債残高(NIIP)で見れば、世界最大の債務国なのです。このNIIP基準は「明日には店じまいする」という基準で、あまり適切ではありません。債権と債務のいわゆる支払いと受け取りの収支、すなわち所得収支が黒字か赤字か、これは継続基準ですが、毎年のキャッシュインとキャッシュアウトのどちらが大きいかの国際収支発展段階基準で、それによって、債権国か、債務国かを決めています。

アメリカの凄いところは、対外債務が世界最大で、キャッシュアウトは低く抑えて、キャッシュインは高いことです。このからくりは、ROE経営を世界各国に求め、アメリカは先進国の企業の株主となって、高配当で収益を上げていることにあるのです。

日本にもアメリカ系資本がどんどん入ってきて、ROE経営を要求しています。経済産業省は2014年に公表された「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト報告書(いわゆる伊藤レポート)で、企業に対してROEを最低でも8%に引き上げるよう迫ったのです。これはアメリカの間接的な内政干渉で、アメリカ的経営を称賛する学者を座長にして、アメリカが望むような、すなわちアメリカの投資収益収支黒字を増やす政策なのです。

いまでも、アメリカ国民が世界に所有している財産を守らねばならないとの考えに基づいて、その理屈を世界で通しています。それを各国は受け入れざるを得ないのです。単純計算してみても、世界で最も多額のアメリカの所得収支が赤字になるのは、20~30年後となります。

他方、中国は、所得収支でみると下から数えて5~6番目くらいで、巨額の債務国です。中国は、1990年以降、世界の工場にまで台頭してきて、その分アメリカに対して巨額の配当を、ナイキとかアッブルとかの米企業に対して払う形で、支払っています。一方、中国の投資先はというと、アフリカまで投資先として進出しているのですが、これはいわば、不良債権のうちでも、第3分類とか、最近では第4分類ばかりの、収益を生まない案件がほとんどなのです。

ところが、中国は5Gで、金のなる木を見つけたと言い始めています。これは、世界各地に通信基地を配置してネットワークでつなぐことになると、高い収益を投資益として流入させて、所得収支が改善して、巨大な債務国から債権国へと転換するチャンスをつかんだと言えるだろうということです。

こうなると、2030年頃から40年にかけて、米中のどちらが債権国でどちらが債務国になるか、訳の分からない状態になります。どちらが世界を主導するのか決まらない真空状態、いわゆる国際秩序に責任をもつ主体が消滅することになります。それがいちばん危ない時期です。良くも悪くも中心になる国があって、はじめて国際秩序が保たれているということになるからです。

第二次大戦後を見ても、米ソ両陣営の対立の時代は、東西それぞれまとまってブロックを形成して、力の均衡が保たれてきた時代から、東側の崩壊が始まってソ連が後退する。その後中国が力をつけてきて、5Gというお金のなる木を獲得して、米中が対峙する時代に入っている。この米中の激突が、これから20~30年にわたって続き、どちらが世界を支配するのか、訳の分からない時代に入っていくのだろうと思います。

米中貿易戦争と言われますが、このままほうっておくと、アメリカは今のところは投資リターンがもの凄く高いとは言え、基本的には過剰消費なので、貿易赤字が常態になっています。外国企業への投資利回りを高く維持して、今の米国債の低利回りを維持したとしても、所得収支はいずれ赤字になります。その裏返しの現象として、中国は所得収支を黒字化することができます。それを防止するために、「中国の貿易黒字を止めろ」というのが今回の貿易制裁措置で、トランプとしては良く考えたいい作戦だと思います。

30年後にどちらかが覇権をとるまでは、米中は喧嘩してもらっては困るので、中国の対米黒字を止めさせ、あるいは止めなくても分散させればいいわけです。たとえば米系企業の工場を、中国からフィリピンやミャンマーに移転させれば、そこからアメリカ向けの輸出が増えます。アメリカが貿易赤字はそのままであったとしても、ミャンマーがアメリカに挑戦してくることはないのですから、それでいいわけで、対中国だけに関税の25%課税をすれば済むことになります。

米国債を売れない日本、売る中国

残る問題があります。アメリカは過剰消費を続けたいでしょうから、それでは対輸入赤字国を中国から他国に変えるだけで、アメリカの貿易赤字は巨大のままになります。すると、それだけROEを増加させるプレッシャーを強めることができるでしょう。アメリカは実力以上の生活を続け、すなわち貿易赤字のままで、所得収支黒字を世界最大に保つには、米国債利回りを低くすることに加え、投資先の外国企業にはROEを一段と高くすることを要求してくることになるでしょう。

それは、日本国内においては、企業に「稼ぐ力」を求め、リストラが継続されることになります。景気の良し悪しに関係なく、賃金は下落することになります。

さらにひとつ、アメリカ国債がいずれゼロ金利になると思っているのですが、そうなればアメリカは利払いが急激に減少して、過剰消費を抑制しながら投資収益収支の黒字を維持できることになります。トランプが国債金利をゼロにしろと言っているのは、どういう理屈なのかを考えると、長期で見るとアメリカはゼロの方がいいということです。日本は1兆ドル(約100兆円)の対米債権を所有しています。中国も1兆ドル持っていますが、ゼロ金利になればいずれも利払いがゼロになります。

中国はドル資産を徐々に減らしてきていますが、日本はおそらく減らすなと言われているのでしょうから、1兆ドルくらいを持ち続けます。そうすると、それだけ収益を生まない第3分類の不良債権を抱え込むことになります。

日本は、投資収益収支で、世界で2番目の20兆円くらいの収益を上げています。だから、貿易収支で多少の赤字を出しても問題ないわけですが、所有する米国債1兆ドル(100兆円)で平均3%の収益率とすると、米国債の利回りがゼロになれば、3兆円くらい受け取り収支が減ることになります。それでもまだ昨年で20兆円位の収益をあげていますから、しばらくは経常収支赤字にはならないでしょうが、自動車産業の輸出競争力がいつまでも続くとの保証はありませんから、化石燃料の輸入を減らし、再生エネルギーに切り替えていくことが大切だということになります。

そうなると、ゼロ金利の米国債などに投資する魅力はなくなってくるので、アメリカはニューヨーク連銀などに米国債を買い取らせて、いわゆる財政ファイナンスをすることになります。これは、日本がアベノミクスでしたことを下敷きにしてやろうとしているわけです。日本が実験場だったことになります。アメリカは、新しいことをする時には、新自由主義政策実施の時には、まず1973年9月11日にチリにシカゴ学派のエコノミストを送り込んで、実際に新自由主義政策をやらせてみて、それから自国で導入したように、いつもそうやってきたのです。

米中覇権戦争の決着は

米中のうちどちらが世界の覇者になるかということで言うと、中国は「2049年に中国の夢を実現する」と言っています。これは、バブル全盛期にソニーの盛田さんや橋本総理がアメリカに向かって豪語したのと同じですが、勢いのある方は虎の尾を踏むようなことは言わない方がいいと思います。日本は米ドル国債を100兆円も保有していて、それを売れないし、アメリカも売らせません。

安倍政権の浜田内閣官房参与は、2016年8月30日、ロイターのインタビューで、円高が進行したときに「政府の市場介入が難しければ、日銀による外債購入の選択肢」もあるとの見解を示しました。要するに米国債を買うということでしょうが、こういう話が出てくるのは、もうアメリカの帝国の体制に入っているということの証明です。米国債がゼロ金利であっても、保有し続けるというところが、アメリカの陣営に入っているということを示すことになります。

それでも、アメリカも中国だけにはそう言えないので、だから中国つぶしに向かっているのでしょう。

しかし一方で、アメリカは石油を国産で確保できれば、石油をドルで決済しなくてもいいわけですから、ドル基軸を維持する必要がなくなってきています。中東が戦場になっても、アメリカの第7艦隊が駆けつける必要はもうなくなっているわけです。そうなると、基軸通貨ドルを無理して維持しなくていいし、ドルで外貨準備を維持する意味もなくなってきます。

いま、世界の中央銀行の資産残高は、6割くらいをドルで保有しています。それでも世界の安全保障の観点から帝国としての使命を果たしていくというなら別ですが、既にユーロという通貨圏ができたこともあって、アメリカの中にもアメリカだけで世界帝国を維持するのはもう無理だという考えが出てきています。実際、このオーバーストレッチの状態から、徐々に徐々に撤退していく過程にあるのです。さすがにアメリカの経済力からしても、一国で世界帝国を張るのは無理になってきています。

世界を二大ブロックで線引き

私が考えているのは、スペインとポルトガルの世界分割統治(1494年のトルデシリャス条約)に至ったように、米中が最後に決戦をするのかということです。しかし、決戦で熱い戦争をすることはないでしょうから、双方でどこかで線を引こうじゃないかと、そういう妥協を図ることになるでしょう。

スペインとポルトガルの時に、決戦を避けて条約に基づいて分割統治に合意したのは、もう一つの強国イギリスがいたからです。だが、いまアメリカと中国とで境界線を引いたときに、それを無視して自国の利益を得ようとする強国はないのです。

ではどこに境界線を引くかというと、中国はシルクロードを西に進んでイタリアのローマまで鉄道で結ぶ構想を発表したことで、EUは中国と結びついてユーラシアのひとつのブロックになるでしょう。いまだかってユーラシアがひとつにまとまったことはなく、ロシアのプーチンが「オレも帝国だ」と名乗りを上げた時には、ロシアをG3に迎え入れて、巨大なユーラシアブロックでまとまることになるのでしょう。

これに対して、イギリスは大陸から離れて、アメリカを主軸に、日本とともにG3として、太平洋大西洋をまたぐ巨大ブロックのもとに結集することになります。

この二大ブロックの体制が、双方の決着がつくまでの2000年代半ばまで続くことになると思います。

みずの・かずお

1953年生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。元三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、2010年9月より内閣府大臣官房審議官、2011年11月内閣官房審議官(~2012年12月)。2013年日本大学国際関係学部教授。16年4月より法政大学法学部教授。著書に、『人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか』(日経ビジネス人文庫)、『資本主義という謎』(NHK出版新書)、『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)、『株式会社の終焉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』 (集英社新書)、この6月に山口二郎との共著『資本主義と民主主義の終焉』(祥伝社新書)など多数。

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