編集部から
編集後記
――総選挙 戦い済んで・・一条の光は
●アベ総理が自己都合としか言いようのないどす黒い解散表明、同日直前に極右ポピュリスト小池百合子による希望の党の名乗り。民進党衆院議員の希望への“踏絵”を踏まされてのなだれ込み。“排除・選別”された面々の瓢箪から駒が出たような立憲民主党の結党。あの“排除致します”“さらさらありません”の発言は、ぞっとするような小池の性悪の本性を満天下に見せつけた。独裁者・ファシストもさもありなんと思わせるもので、心ある有権者はドン引き状態になった。一夜にして希望が失望・絶望に転化した。大義なき解散と身内からも批判されながら今なら勝てると解散を策謀したものの、小池希望の党出現で、都議選惨敗の悪夢再来かと大敗も覚悟したとされるアベや自民。生きた心地がしなかったようだ。が、本性が露呈してしまった作・脚本・演出・主演の小池百合子が自業自得で舞台から転がり落ち、支えるべき周辺もお粗末集団。結果はご承知のとおり。まあ自民党も勝った気がしないとか、麻生の“北朝鮮のおかげ”の本音発言。アベも“自民はいいが安倍はいやだ”の支持者の声が多く耳に入り元気がなく、総裁の選挙応援が公表できない恥ずかしい隠密行動、地方からの応援要請も少なかった安倍、野党の敵失によっての大勝。心底喜べないのも当然か。
●一方自公の対抗勢力も前途多難で深刻だ。民進党の三分解、四分解や数においても大いに劣勢。一条の光は、突如誕生し躍進した立憲民主党の存在か。当りまえの政治、草の根からの政治、立憲主義に立脚した政治を掲げ、憲法9条の改正に反対など、単なる風ではなく、それなりに旗色を鮮明にした確かさを持った結党といえる。選挙区の立候補者は63人と少なかったが比例で1100万の人が支持したのは大きい。確かに選挙戦中の各地での街頭集会の熱気と参集者の真剣さはかってないものだった。今後は、日本的リベラルとは、日本的社会民主主義とは何かなど自らの立ち位置を綱領的に深めることが課題。一言、日本共産党について。今回の立憲民主の躍進の議席獲得を支えたのは共産票であることは間違いない。結果として自民批判票の多くは立憲に流れ議席減となった。自党の候補者を降し共闘を推進した立場として痛し痒しであろう。それを乗り越えてリベラル+革新の陣形を大きくできるかが試される。“ルビコン川を渡った”と言われる共産党、どこまで自己変革するかも注目だ。当面するアベ打倒への野党の連携、政権交代への日本に適応するオリーブの木的統一戦線も課題となる。総選挙分析―日本政治の今後への問題提起は巻頭の住沢、橘川論考の一読を。また今号で初めて本誌に寄稿頂いた大阪市大の野田教授の「保守的政界再編論と日本政治の停滞」は、巷間話題となっている保守二党論や新たな保守勢力論に対して編集屋的には、「保守的再編論の幻想を破る契機になるか」の貴重な提起。乞う熟読を。
●それにしてトランプ来日の自民・メディアの喧騒は何だ。多くを語るのも不愉快だ。もうほとんど、あの“ならず者”トランプのポチであることを晒したアベ。オスプレイなど役に立たない武器の“爆買い”。極め付きはガラガラ(テレビは全く映さず)の「国際女性会議」に参加したイバンカ(基金)に57億円供出。それ誰の金だ。私は単純なアメリカ従属論は取らないが、もう“アメリカの属国”であることを内外にさらけ出したのが今回のアベニッポン。“自民大勝は北朝鮮のお蔭”とめずらしく正しく語った麻生。恩人・金正恩とならず者・トランプの本当のところはどうか。今回も国際問題ジャーナリストの金子敦郎さんにご無理を願った。(矢代 俊三)
●選挙前の9月にはあれほど騒がれていた「働き方改革」だが、今や噂にもならない。しかし、安倍政権と資本は、すでにまとめた法案を来年の通常国会には提出するという。近藤論文と遠藤論文は、その事実とそこに含まれるとんでもない事態を明らかにしている。究極的には、労働法制で守られるはずの「労働者」というあり方を無くし、人々は資本・経営と「対等な」個人事業主にされることになる。これは我々だけの問題ではなく、将来世代(我々からすれば、孫子の世代)にとっての重大問題だ。
●世の中では,労働者とか労働組合は既得権益を守ろうとする守旧派であると見られているらしい。特に、若者の間ではそれが顕著で、だから自民党が改革・革新派であり、護憲を言うものは時代遅れの保守派なのだそうだ。こうした見方を打ち破ること、そのための突破口が安倍の「働き方改革」を裸にすることだと思う。近藤論文は法律専門家の文章で取っつきにくいかもしれないが、安倍のインチキを暴き出している。遠藤論文は、安倍の描く将来の労働者像を批判しているし、小林論文も同様の問題点を指摘している。ぜひ読んでいただきたい。(大野 隆)
季刊『現代の理論』2017秋号[vol.14]
2017年11月12日発行
編集人/代表編集委員 住沢博紀/千本秀樹
発行人/現代の理論編集委員会
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