編集委員会から

編集後記(第44号・2026年冬号)

――後世の人々は昨今の日本をどのように語り歴史に刻むのであろうか

▶本号の特集タイトルを「歴史はどう刻むか2・8総選挙」としました。高市による暴挙ともいうべき解散・総選挙に対処すべく本誌も2月上旬発行号を繰り下げることとしました。執筆者の皆さんには大変ご迷惑をおかけしました。改めましてお詫びと感謝を申し上げます。その総選挙は高市効果により自民党が空前の大勝となり、俄仕立ての中道改革党は無残な大敗。“民意などエエ加減なもんや”と愚痴の一つも言いたくなるが、事態は真面目に深刻である。若者や壮年層の支持傾向がそうであり、中道支持は60代、70代が多いと。また旧来の立憲の支持層が中道に投票せず“棄権”など溶けてしまったとの調査結果もある。

▶かような状況の下で本号の各論者はどう論じられたか。巻頭の金子勝さんは「ファクトを発信して、フェイクファシズム政権を潰せ――政策対立軸を明確にし、新しい政党のあり方を再構築」と。本誌の住沢博紀さんは「政治の終焉か、世界と結ぶリベラル政党の再建か!――人々の仕事と生活を守る>国益>日本ファースト>日本人ファースト」を論じる。水野博道さんは「「中道」の旗、寒風に翻らず民主党(1998年結成)・リベラル革新の潮流は自滅へ」と分析する。他の論考でも高市に触れる筆者が多かった。毎号、どう現代という時代を認識するかを論じる橘川俊忠さん今回は「虚構の概念に縛られた思考の落とし穴――徘徊する200年前の反動思想家の亡霊について」を語る。毎号アメリカ(トランプ)をウオッチ頂いている金子敦郎さんは「『トランプ関税』は違法など最高裁の2判決が『暴走』にブレーキ」と。読者各位は今日の深刻な内外情勢にふまえ、いずれも重い論稿ですが、是非熟読下さい。。(矢代 俊三)

 

▶本誌42号(2025年8月)、有田芳生さんの「冬の時代が始まった」との言葉を、改めて思い出している。それに対する覚悟がなお浅かったのだと、今回衆院選の結果の「極寒の冬の時代」を思う。今号、金子勝さんの「長文を読まない人たちにファクトを発信せよ」との論考は、本誌のあり方を問う問題提起だろう。そこから始めないと春を迎えられないのだ。残念ながら、身の回りの労働組合でも社会への「発信」を考えるところはごく少数だ。政策の基本になるであろう、労働現場の現状を捉える議論も乏しい。自戒するところだ。

▶高市が安倍晋三から引き継ぐのは、嘘つき政治と大失敗のアベノミクス。とりわけ「嘘」について、高市本人には「嘘をついている」との自覚がないのではないかと、とても気になる。「台湾有事」発言における「戦艦」が現実の政治・軍事の領域における概念としては誤りであると同じく、今度は日本の「労働の効率性などを表す数値」と、施政方針演説で言ったのだ。「労働の効率性」は国の統計でも使われていない。強いて言えば「労働生産性」だろうが、その低さはつとに指摘されていることなのだ。これがもしかしたら今後4年間続くリーダーかと思うと、本当に寒い「冬」がきていると実感する。(大野 隆)

 

▶自民党の大勝を受けてスパイ防止法などとともに国旗損壊罪の制定がとりざたされている。もしも法律ができるとすれば、国旗だけではなく、国歌も損壊を許さないということになるだろう。学校での入学式・卒業式その他の式典で日の丸掲揚、君が代斉唱を押しつける悪名高い東京都の10・23通達以後、「日の丸・君が代」は、業務命令に対する教職員の態度という形で権力者に対する服従の指標にされてしまったが、それでも表現の自由は完全に否定されることはなかったはずだ。そんな表現の自由すらなくなるのだろうか。

▶10・23通達のあとに私が編集した『良心的「日の丸・君が代」拒否』『強制で、歌声はあがらない』(明石書店)のような本も発禁になるかもしれない。憲法の改正(改悪)以前に憲法が保障する表現の自由を破壊しかねない事態になるだろう。高市内閣は、そうやって実質的な改憲をすすめようとしているのでないか。しかもこうした動きに同調しようという野党まで勢力を拡張している。どうやって異議申し立てをするかを考えておかねば……。(黒田 貴史)

季刊『現代の理論』 [vol.44]2026年冬号
  (デジタル44号―通刊73号<第3次『現代の理論』2004年10月創刊>)

2026年2月27日(水)発行

 

編集人/代表編集委員  住沢博紀/千本秀樹
発行人/現代の理論編集委員会

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