特集 ● 歴史はどう刻むか2・8総選挙

ファクトを発信して、フェイクファシズム政権を潰せ

政策対立軸を明確にし、新しい政党のあり方を再構築する

慶応大学名誉教授 金子 勝 さんに聞く

2月8日の衆院選を受けて、以下の通り、2月10日にインタビューをしました。・・・編集部

 

衆議院選挙と中道改革連合の惨敗

軽々に「ファシズム」と言うなと言われていますが、それでも、この2月8日の衆院選の結果は少なくともファシズムの兆候を示しているのではないかと思います。これまでずっと言ってきたことが、ある意味で現実化してきた。私はこれを50年に一度のカタストロフだと言い続けていますが、そういう認識は与野党ともにない。メディアにもない。

明らかに50年周期のカタストロフなのです。コンドラチェフの波です。「イノベーション」という考え方を打ち出した経済学者・シュンペーターが、カタストロフ(創造的破壊)を説明しました。それによると、カタストロフは単なる崩壊ではなく、不安定な構造が壊れて次の安定的な構造をもたらすもので、資本主義はそのように不連続に変わってきている、と。

50年というのは世代循環で、15歳から65歳の現役世代が半分ずつ交代していくわけです。今の若い世代が25年後に大体中堅から幹部になっているわけで、50年すると戦争の記憶も記録も全くなくなってしまう。そして同じことが続くことになります。イノベーションもそうですが、そういう時代がやってきているとずっと言ってきました。だから、全ての発想を新しく変えなければいけない。

ところが、リベラルの人たちが特にそうですが、過去の延長上でずっとやり続け、新しいメディア、特にSNSなどが出てきてメディアが大きく変化しているのに対応できないままだった。新しい発想で新しい政策を一から作らなくてはいけないと言い続けてきましたが、誰も言うことを聞いてくれなかった。

政策との関連で言えば、かつてマニフェストを作った人たちの努力は、旧民主党幹部たちから無視され続けました。政権獲得直後にいきなり子ども手当を倍増するとか、マニフェストになかった消費税とかTPPを言い出したり、原発輸出まで主張したりする始末でした。結局、彼らの「国家のことは私が考えて決める」とのエリート意識から約束を無視した結果、民主党政権が崩壊していったわけです。マニフェストに対しては未だに否定的で、too muchつまり多すぎたと言うだけです。確かに工程表もかなり窮屈だったという弱点があったとしても、マニフェストがなければ政権交代の機運は醸成できなかった。

例えば高校授業料無償化とか子供手当とか、農家の戸別所得補償、さらに再生エネルギーの固定価格買取制度など、新しい政策を出しながら、真ん中が「コンクリートから人へ」のスローガンで全体をまとめた。一つ一つ下から話し合いながら新しい社会のイメージを作ったのです。できた政策をマスコミにフルオープンにして、それが話題になった。それで2007年の参議院選に勝ち、2009年の政権交代につながりました。

その民主党政権で、最後に見えを切って消費税増税を言って衆院解散、結局大敗を喫したのが野田さんでした。民意を全く見ていないわけですよ。エリート意識だけが残っている。政治家がエリートで、その数合わせでものを考えて、大衆は操作の道具。そういう発想でしょう。前原さんもそうで、松下政経塾出身者がみんなぶっ壊しているわけです。彼らは政策の中身がないから、永田町の数合わせの論理で動く。その失敗が民進党であり、希望の党であり、そして今日の中道改革連合に至ったわけです。だから負けた理由ははっきりしているわけです。

高市自民党ではアメリカに絞り取られるばかり

一方自民党の側がやったのは、結局トランプ政権に抱きついていく路線です。自民党の流れで言えば、元々は国民政党で、田中派・経世会ではその経済政策に加えて、対外的にはアジアとアメリカを等距離でやるようなスタンスがあった。これが70年代のオイルショックを契機にして、結局ロッキード事件で潰されていくわけです。その時竹下政治に対抗して出てきたのが中曽根政権、そしてその後は清和会が担っていく。それが安倍政治になって、新自由主義とアメリカべったりが基本路線になる。それが自民党の主流になったわけです。

ところがアメリカが変わってきた。アメリカは一定日本に譲歩していたけれど、その部分がだんだんなくなっていく。つまり日本側に譲るのではなく、日本からいかに絞り取るかということが始まってくる。やがてそれと清和会のアメリカべったり政治が一体化してきた。そして1986年と91年の日米半導体協定を契機にして、日本の「日の丸半導体」が潰れ、日本の産業衰退が始まっていくわけです。さらに中曽根政権は、リゾート法でバブルを進め、国鉄民営化を含めた新自由主義政策で左派をぶっ潰していく。小泉政権も基本的には同じ路線で、最終的にアメリカ通商代表部(USTR)が日本の産業を絞り取り、潰していくことになりました。

トランプになると防衛費増額もそれまで以上に非常に強く要求する。さらに85兆円の対米投資でむしり取りにきます。日米安保についても、協力して日本を防衛するよりは「お前らが自分らでやれ」となっています。「我々は南北アメリカ・大西洋中心になる」とアメリカ国家安全保障戦略で言っている。単純に言えば、高市が、アメリカが介入する「台湾有事」を言うと、トランプは怒るわけです。トランプは「力の平和」なので、アメリカと中国とロシア、強者が手を結んでお互いに分け合っていきましょうとなる。だから、アメリカが来て台湾で衝突、そこで集団的自衛権ということにはなりません。日本、韓国、オーストラリアはトランプの鉄砲玉の役割を負わされます。

予定されている3月20日の高市訪米でも、防衛費の増額と85兆円の対米投資をより強く要求される。応じないとまた関税を上げる。そういうトランプ政治についていっても展望はない。日本経済はただアメリカのために絞られていくだけなので、このままでは破綻するのが明確です。

トランプは自分の言うことを聞く者だけを可愛がる。しかもビッグテック・GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック(メタ)、アップル、マイクロソフト)を軸にして、ファクトチェックもなくし、嘘をつき放題の発信を野放しにする。それを利用した世論の分断政治で、これがフェイクファシズムです。アメリカの長い文章を読まない人たちをどんどん取り込んでいく。エビデンスもない、ある意味で感情的な排外主義的な言説や陰謀論で引っ張っていく。そしてさらにそのやり方を輸出しているわけです。例えばドイツの選挙の最中に極右のAfDを公然と支援する。今回の日本の衆院選でも3月の「高市訪米」を公言し、公然と高市を支援した。あからさまな内政干渉ですが、つまり自民党は極右政党になって、アメリカの言う通りに動かねばいけない。植民地と同じです。

日米とも選挙で勝つときにフェイクファシズムの手法を最大限使っていくことになっています。今回の2月8日の選挙につながりますが、最初にそれが上陸したのは兵庫県知事選挙だったわけです。プロの広告会社と立花孝志などが一緒になり、その周りに、アテンションエコノミーで煽って儲けようとする連中がまとわりついてきた。県知事選では10ほどのアカウントが震源地になりシェアされた。一旦ここに捕まると、コンピューターのアルゴリズムで同じようなデータを常に検索するようになるので、カルトでほとんど頭が乗っ取られる。今それが起きている。

衆院選では、先述のように、マニフェスト嫌いで、自分たちがエリートだと勘違いして、野党が政策を一から作ることをできなくなり、結局永田町の数合わせ。イメージ選挙になっているのに、イメージの真ん中が野田佳彦と斉藤鉄夫。古いおじさん2人が前に出た。結党会見は「ファイブ爺」と揶揄される始末。「生活者ファースト」は「日本人ファースト」のパクリで、政治センスも最悪。政策も何もない。とくに日本経済をボロボロにしたアベノミクスへの批判が全くなく、減税合戦になってしまったので、高市首相が食料品ゼロ税率に触れれば、一気に政策争点がなくなってしまった。政策争点がなくなれば。閉塞感を打ち破るのは「新しさ」だけになります。

相手の自民党は、親父の中から―自民党の中で高市ほど親父的な女性はいないが―女性が初めてリーダーになったという刷新感があるわけで、それを批判すればするほど「可哀そう」とSNSのメッセージを出すわけです。前橋市長選がその前兆だったでしょう。加えて準備不足で、創価学会アレルギーもあって、立憲民主党の左派的な議員ほど苦しんで、落選してしまうことになった。左派ではない小沢一郎さんもそうだ。いちいち名前は上げないが、社会的な運動と繋がりの強い人が、大量に落選した。比例復活もできないケースが多かった。

大変なことになって、結果としてフェイクと排外主義を煽り、国会が機能しないようになる、ある種のファシズム的な初期局面になった。トランプを見ると、ICE(移民・関税執行局)を使って暴力化しているわけです。それ以前には、学者を名指しして追い出し、思想統制を始めている。その上での暴力化です。

日本はそこまではいっていないものの、裏金議員ほぼ全員43名が当選です。旧統一教会系の議員も。もうこれは発展途上国以下の国になって、民主主義国家ではなくなったという認識が必要でしょう。つまり、民主主義のルールのもとでどう回復するのかという戦略では勝てないということになる。有権者は、はっきり言えば、どんな不正をしても、腐っていても、その自民党に投票したわけだから、これは重たい現実だと思うのです。もう一つは、フェイクやり放題で、例えば電通が動いたというふうにも言われていますが、選挙中に高市のショート動画と切り抜き動画のコマーシャルが1億5千万回以上という驚異の再生回数を記録した。アテンションエコノミーで「高市かわいそう」など、めちゃくちゃな動画が山ほど出てきたわけです。

しかもこれほど嘘をつく首相は今まで1人もいなかった。そこはトランプと全く同じ。総裁選の「外国人が鹿を蹴った」とか、「警察には通訳がいないから外国人の犯罪は野放しだ」というようなことから始まって、「台湾有事」も、本来国会で説明してきた範囲をはるかに超えて、中国に激しく反発されることになった。トランプからも「俺は習近平主席と仲良しなんだ」とか言って怒られたようだ。すると、自身の「台湾有事発言」を質問した野党議員のせいにする。それから、これまで緊縮財政だったのが積極財政に初めて転換すると言う。では財政出動してジャブジャブの金融緩和で支えたアベノミクスは一体何だったのか、という話になる。みんな嘘です。

円安ウハウハ論も、円安で苦しんでいる庶民のことは全部吹き飛ばす話ではないですか。NHKの党首討論をエスケープしたのも、そのあと地方遊説しているから、左手に怪我をしたかどうか関係なく、嘘だった。テレビの討論に出て、いつもフェイクばかり言っているのを追及されると、それがダメージになって、またそれが動画で流されるのが嫌だっただけでしょう。「討論に出なくても大丈夫。SNSで世論が味方しているから、自身が逃げたと言われても大丈夫」と思ったわけでしょう。そういう発想ですよね。まさにこのSNS依存やIT戦略による選挙政策が非常に鮮明に出てきている問題です。

高市「積極財政」は成長どころか日本経済を破綻させる

では、高市政権はこのままうまくいくのだろうか。多分うまくいかないで、破綻します。これまでのアベノミクスでこの国の経済はボロボロになったからです。違いはジワジワ衰退するか、ショックで潰れるかだけです。

GDPはドイツに抜かれて世界4位になり、さらにインドにも抜かれ5位になり、やがてイギリスにも抜かれそう。1人当たりGDPが2000年代の初めには世界2位だったのが、今はついに38位で、韓国、台湾に抜かれているわけです。日本はすごく貧しくなっている。これに対するルサンチマンが嫌韓、嫌中のエネルギーになっている。だけどうまくいかないわけ。実質賃金も4年連続マイナス、その前もずっと10何年マイナスだったわけで、結局、アベノミクスの結果は惨憺たることだった。

先端産業では、情報通信、医療、医薬品、医療機械、それからエネルギー転換、あと電気自動車、自動運転、みんなダメなわけです。負けてしまっている。世界のトップ100の株式価値総額の企業を見ても、日本の企業はトヨタ1社しかない。かつてはトップ50のうち30社が日本の会社だったわけで、もう衰退は明らか。なおかつ財政、金融はボロボロ、財政赤字(国の借金)は1300兆円を超えて、もうどうしようもない状態になっている。日銀は金融政策の自由を失い、円と国債の価値が下がり続け、円安インフレが止まらなくなっています。それでも権力にしがみつきたいと、アメリカのトランプに抱きつき、フェイクファシズムへ突っ走っているというのが現実だと思います。

これは残念ですが、今最大の「野党」が国際金融市場なのです。例えばその兆候が見えたのは、1月19日に高市が財源なしのまま食料品の消費税ゼロを2年実施と言った時。ミニトラスショックが起きて、国債の買い手がなくなった。それで超長期債の利率が4%を超え、435億円しか取引がなくて、結局評価損が415億ドル、6.7兆円値崩れして損をした。で、先物取引をするファンドはべらぼうに儲けた。そのあと日米協調介入の準備段階のレイトチェックをやったと、口先介入をやったわけで、152円まで円高に振れたけれど、その後、高市首相の円安ウハウハ論でまた157円に戻った。極めてボラティリティが高い状況です。

こういうことがいつでも起きうることがはっきりしたわけです。日銀が細かい国債買入や為替介入をしている可能性もあるようですが、今はまあ落ち着いています。でも3月20日に高市がトランプから、多分防衛費をGDPの3.5%にすることを飲まされると思います。

コルビー国防次官は対GDP防衛費5%と言っているので、それを吹っかけられて2%との間の3.5になると思います。そうすると、2025年の名目GDPは669兆円、その3.5%は約23兆円です。今既に防衛費は9兆円まで膨らんでアップアップなのに、23兆円なんて財源がないわけです。小出し小出しで発表をして逃げるか、社会保障の名前で国民会議で増税を決めて、食料品の消費税ゼロをやり、給付付き税額控除に変えますと言いながら2年後に消費税を10から12%にするとか。そういうごまかしの手法で、多少反対があってもそれで乗り切るしかないというようなことが色々見えてきます。

それでも23兆はあまりにも多いので、これが安保3文書でどの程度書き込まれるか、それから骨太の方針でどれだけ書き込まれるか、さらに8月末の予算概算要求でどのぐらいになるかなど、次々に問題が出てくる。しかも、結局それによって成長すると高市は言うけれど、間違いなく成長はしない。民需に基づく産業と違って、防衛産業も原発も税金や料金で国民を収奪するもので、市場で循環しながら成長するわけではないからです。裏金・政治献金による仲間内資本主義で、重化学工業のまま遅れてしまった経団連企業を救済するだけなのです。

高市は新しい産業について名前を色々言いますが、具体性が全くない。結局何が残るかというと、危機管理投資という名前の防衛費、エネルギー資源、安全保障投資という名の原発、それから国土強靱化という名前の公共事業、食料安全保障という名前で農業対策―大規模化と農業土木。要するに国を滅ぼしてきた産業に特化していかざるを得ない。だからこそ裏金問題にも政治献金問題にも取り組めないのです。

裏金や政治献金を通じた仲間内資本主義で経団連企業を支えるのは、世界の中で通用しているのがトヨタ1社だけというこの現実を、国家財政を使って救済しようとしているからです。官民投資などとごまかしていますが、官民ファンドが全部失敗しているのに、経団連企業に税金をつぎ込んでこれを救済していこうという路線なわけです。これがどうして「強い経済」になりますか。なるわけありません。結果的に財政依存でやっていくから、先述の通りひょっとしたらミニトラスショックのような経済破綻が起きる危険性が高まります。

円安と長期金利の上昇、加えて中国レアースの輸出規制が進むと、円安はインフレ、長期金利上昇は中小企業や住宅ローンの負担者には非常に苦しくなる。レアースの規制が強まれば、半導体から自動車、様々な医療機械などの生産そのものにブレーキがかかるので、深刻な不況になる。さらに日中経済戦争が起きてくれば、また防衛費の増大に悪用しようとするでしょうが、結局財源がないので、アベノミクスの最終的な断末魔が訪れる。根本問題はそこでどう反転するかということでしょう。

ところが、このフェイクファシズム路線では、経済がダメになるのは中国のせい、外国人、中国人や韓国人のせいにしていく。もう一つはスパイ防止法で、メディアに対する圧力を猛烈に強めていく。アベノミクスが「2年で2%」に失敗した2015年に総務大臣の高市が放送法の解釈変更をし、2016年に電波停止発言をして、メディアが完全に忖度するようになり、ダメになった。その延長上にスパイ防止法があると思います。私も中国のスパイにされるでしょう。反中国を進める中で憲法9条を変えていって、防衛も、もう集団的自衛権ではなくて、直接自分たちで防衛するという話になり、どんどんエスカレートさせていくのは目に見えているシナリオです。

人々の命を守る新しい政策アジェンダを作る

ではそれをどう阻止するのかが私たちのテーマです。

私には今、残った細々とした野党の人たちで何かができるとは思えない。国会のチェック機能は著しく低下する。古手のダメな政治家が、政治家エリート論という勘違いをして、しっかり政策アジェンダを作るという当たり前の政党の姿を無視してきたツケが全部出てきたので、発想を新しく革新しなければいけません。昔の数合わせの論理は全く通用しないことがよくわかった。しかも新しいアジェンダでは、50年周期のカタストロフが起きたこの時に、「教え子を戦争に送るな」のようなスローガンは、全然若い人には通用しない。

まず落選した人たちが批判を一番強く浴びているはずなので、その話をきちんと聞いて、世の中がどうなっているのか、確認しなければなりません。今感じているのは、社会的な関心がすごく偏っていて、問題のポイントが見えない。排外主義・ヘイトスピーチにも鈍感で、どうやって共生できる社会を作るかというところに全然目が向いていない。老若男女含めて、有権者がどういう感じだったかということを冷静に確認したい。そして、非正規雇用など非常に厳しい状況にいる若い人たちや、色々苦境にある人たち、あるいは外国人で強く差別を受けている人たちがいて、その声に共感する感覚を持っている人たちの意見を吸い上げて、それをメディアとして声にして伝えていく。そういう新しいツールを一所懸命考えなければいけない時代に入ったと思います。だから、気分的には反ファシズムに近いですよ。

高市は、中身を何も言わないで、私を支持しろ、信任しろと言って、それにみんなが答えてしまったわけです。独裁者のようです。情報を広げて、みんなで考えながら抵抗していかないと、このまま勢いに飲まれてしまうでしょう。前述のようにシナリオは見えていて、経済的に破綻すればするほど、高市は反中国とか憲法改正を言って、結果的に経済はますます低迷していくことになる。

新しい感覚で、例えば防衛費の増大が国際金融市場にどういう影響を与えるのかとか、あるいは社会保障を削減していきながら高額療養費の問題をどう解決するかとか、いろんな形で国民の命をいかに大事にするのかと、人々の生活実感に基づいた新しいアジェンダを組み立てていかないと、反戦平和一つとっても維持することはできないだろうと思います。だとすると、落選した議員も含めて、町場の人たち、労働組合、市民団体などとしっかり対話しながら、一つ一つ政策アジェンダを作っていくべきだというのがまずは最初に出てくる。こうした人々が資金を出して落選議員を支えながら、政策づくりに参加する、新しい政党を作らないといけません。

どういう人たちで進めるのか。既存の中間団体、市民運動や労働組合の人たちと結びついていくのがとても大事でしょうが、やはりそのためのプラットフォームをしっかり作っていかなければいけない。そして新しい局面にふさわしい新しい政策理念や政策を論じることができる中核になる若手の研究者集団を作るべきです。戦後啓蒙の時代を生きてきた古い世代―私も含めて、丸山眞男さんの弟子など―がやっていた時代はもう来ないので、新しい30代、40代を中核にしながら、50代、60代が一緒にやっていけるような、新しい研究者集団が、そこのブレインになってくる、そんなプラットフォームでなければいけない。

要求は多少高いが、そうしない限りこの状態は克服できない。その試金石は、経済政策を中心にアベノミクスが何をもたらしたのかを批判して、そこからしっかり立て直していくこと。そういう政策論が必要です。そうしないと、このSNSを使ったイメージ選挙を脱却することは不可能です。

私たちのメディアを作って正しい情報を発信する

まずは、文字媒体で理屈を理解しないと難しい。長文を読まないと頭の組み立てができないから、これは大事なのですが、多くの人がそういうことをできなくなっているわけです。そこは、若い力でその中に届くようなメディアを作っていかないと人々を集められない。参加してくれて話をしていけば、考えるきっかけになって、変わっていくと思います。それはやはり世代交代とセットでしょう。

その上で、さらにSNSに我々が真面目にどう取り組むかを考える。既存のメディアが壊れて、オールドメディアと言われて批判されている現状の中で、ネット上には良質の発信も多い。例えばアークタイムズ、デモクラシータイムズ、ビデオニュース・ドットコム、あるいは津田大介さんのポリタスTV、佐藤章さんの「一月万冊」、日刊ゲンダイの動画サイトなどもある。

一方で、相手側は、例えばドトールの鳥羽一族などが石丸伸二に資金を提供するなど潤沢だが、さくらチャンネル、虎ノ門ニュースのように巨大メディア化した部分もあれば、小さいメディアもたくさんある。そこには結構お金が回っている。それは電通などから請け負っていたりもしているわけで、そこにまた視聴者が群がって、アテンションエコノミーが広がります。その周辺に自発的に来る部分もある。そちらが100だとすると、我々の側は10分の1か、ひょっとすると20分の1ぐらいの力しかない。そうすると、長文を読まない層には、いくら良い政策を作っても届きません。そのくらい形成不利な状況をどうやって立て直していくかという戦略がないといけない。

しかし、今までは善意の寄付や会員制でやっているので、規模が小さく対抗できない。多くの団体は、月1回に印刷したニュース・新聞を出すという程度なので、このままでは勝負にならない。例えば1個の動画を1週間に1個作るとして、映像を編集する人や出演者に多少支払い、あとボランティアでやっても最低でも1回に3万円はいる。年間150万円ぐらいです。これを会員一人あたり月500円、年6000円で考えると、250人から300人が必要です。そこまで具体的に考え、しかし広げなくてはならない。

もっと頻繁にコンテンツを出すには、桁違いのことがいります。何より自分たちが作っていて楽しくなくてはできません。しかし、取材の能力がある程度あって、編集もできるという人材が必要ですが、この面ではそうした世界のOB・OGがいるので、そういう人を探すことが必要です。そうしないと、相手に対抗などできません。そんな問題意識をみんなが共有していかないといけないし、その上で、もう一度いろんな形で政策を立て直しながら反転させていく。上からいきなり一発逆転なんてことはありえない状況です。50年ぶりのカタストロフだから、古いものが一掃されるのは必然なので、そう思いながら一から立て直していく。憲法改悪が行われたら再改正をするぐらいの心構えで、一から立て直していこうじゃないかと、そういう形でしかこの状況は克服できないと、強く思っています。

労働組合でも、例えば全国一般東京南部のように、労組としてはあまり大きくなくとも歴史的にネットワークをもっている所も多い。複数の労組が基金を作って、労働組合の要求―例えば非正規雇用問題―を専門にやるようなチャンネルを作るとか。必要なのはそういう動きでしょう。

自分たちが一人でやろうとしても、資金的にも人材的にも無理だとすれば、もう一度下から、できる範囲で輪を作り、繋がりを作って、参加者・会員を募る。そして「よそだったら500円だけどね、月200円でいいよ」というくらいに、細々と集めていきながら、やがてたくさんの人を集めて自己回転できるようにしていく。言うは易く行うは難いですが、そういうことも考えなければいけない時代がやってきているのだと思うのです。

 

皆さん、今の政治を見てガックリしているでしょうが、私は起こるべくして起こっていると思っているので、「あー、来ちゃったかな」という感覚に近いのです。何をするべきかも、淡々と落ち着いて考えることが必要だと思います。一からやり直す気概で頑張っていきましょう。

かねこ・まさる

1952年東京都生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。慶應義塾大学経済学部教授を経て、同大学名誉教授。立教大学大学院特任教授の後、2023~25年に淑徳大学大学院客員教授。専門は、制度経済学、財政学、地方財政論。著書に『金子勝の食から立て直す旅』(岩波書店)、『閉塞経済』(ちくま新書)、『新・反グローバリズム』(岩波現代文庫)、『新興衰退国ニッポン』(共著、現代プレミアブック)、『「脱原発」成長論』(筑摩書房)、『資本主義の克服「共有論」で社会を変える』(集英社新書)、『日本病―長期衰退のダイナミクス』(岩波新書・児玉龍彦との共著)、『平成経済 衰退の本質』(岩波新書)、『メガリスク時代の「日本再生」戦略』(ちくま選書・飯田哲也との共著)、『人を救えない国』(朝日新書)、『現代カタストロフ論』(岩波新書・児玉龍彦との共著)、『高校生からわかる日本経済』(かもがわ出版)、『裏金国家』(朝日新書)、『フェイクファシズム』(講談社)など多数。

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