論壇

「反ワクチン主義」と括ると見えなくなる

HPVワクチン接種被害はやはり薬害であると言わざるを得ない

日本社会臨床学会運営委員 井上 芳保

子宮頸がんワクチンの接種をめぐる攻防が過熱している。このワクチンは、正確には「ヒトパピローマウィルス対応ワクチン」(以下、HPVワクチン。HPVとは「ヒトパピローマウィルス」のこと)と呼ぶべきものに過ぎない。ところが、世界中で重篤な副反応が生じ、訴訟まで起きている、この危ないワクチンの定期接種を再開させようとする動きが急だ。所謂「リベラル」の論客も善意のままにそれに巻き込まれている。このワクチンの正体を知らずに「反ワクチン主義」と括ってHPVワクチンに慎重な立場を揶揄する政治学者まで出現する始末。今回は、接種推進側の動き二件と、逆にこのワクチンの危険性を訴えて最近なされた二つの催しのことを紹介しておく。

1.HPV感染症で死ぬ人がどれくらいいるのか

先にも記した(本誌11号、21号)が、HPVワクチンは2013年4月に定期接種化されたものの、重篤副反応発症の多発を重く見た厚労省によって僅か二か月後に中断されて今日に至っている。任意接種は続けられているが、定期接種実施時と比べると接種率は著しく落ち、HPVワクチンの需要も激減している。大量の不良在庫を抱える側は全女性への接種体制の再開を図りたいのだろうが、安全性を第一に考えるなら全て廃棄すべきである。

「ワクチンを中断したら子宮頸がんになってしまうではないか」との意見もあろう。しかしそれは大きな誤解に基づいている。このワクチンの効果は、子宮頸がんなどいくつかのHPV感染症の原因とされるHPVの侵入を食い止めるだけだ。その食い止めだけのために相当な無理をして身体にもっとよくないことを引き起こしている。功罪を比較して冷静に科学的に判断すべきだろう。結論としては、有害性のほうが有益性よりも遥かに大きい。

話題の新型コロナウィルスは患者の咳やくしゃみの飛沫などで感染するが、HPVは濃密な接触、つまり性交で感染する。コンドーム着用で感染はかなり防げる。しかもHPVは常在ウィルスであり、仮にHPVが子宮頸部の傷口から侵入したとしても免疫の力で殆ど撃退してしまうので子宮頸がんにまで至る人、死亡する人はごく僅かだ。日本で子宮頸がんによる死亡者は10万人あたり2.8人程度とされている。入浴中の突然死が10万人あたり10人程度。交通事故死が5人程度。それらと比しても少ない数値と言える。肛門がんなど他のHPV感染症の死亡はさらに少ない。

また東アフリカの国で子宮頸がんによる死亡者は10万人中34.6人という数値がある。栄養状態、衛生状態なども死亡率には関与するのだ。それを度外視して「このワクチンを打たないと子宮頸がんで死ぬ」と煽るのは明らかにおかしい。日本国内でこれまでにわかっているだけで3000人以上も副反応被害者が出ている危険なワクチンの全女性接種にどれほどの意味があるのかとの疑問はどうしても残る。

子宮頸がんへの対処として検診という有効な方法がある。仮にワクチンを打っても検診は必要である。全てのHPVに対応したワクチンではないからだ。この重要な事実は接種した女性たちにも知らされていないことが多かった。検診を徹底すれば済む話なのだ。日本の検診率の低さは改善されねばならない。

2.重篤な副反応がなぜ発症するのかを問うべき

重要なのは、重篤な副反応が起き易い理由である。HPVワクチンの作用機序が従来のワクチンとは大きく異なることに着目しなければならい。2020年2月9日に都内で市民にも公開して開催された日本社会臨床学会主催の学習会「子宮頸がんワクチンの正体を知り、接種被害者の声を聴く」にて神経内科医で薬害オンブズパーソン副代表の別府宏圀は、この点に関わる専門的知見をわかりやすく説明した(記録は近く『社会臨床雑誌』に掲載予定)。以下で話の要点を紹介しておく。

従来のワクチンの作用機序はこうだ。病原体またはその一部を抗原として作成したものを接種する。するとその病原体に対する抗体が産生される。その抗体はまもなく消失するが、再び同じ病原体が体内に侵入すると、メモリーT細胞に蓄えられた免疫学的記憶によって速やかに免疫グロブリンの産生が始まり、抗体価は急激に増えて疾患は抑えられる。

他方、HPVワクチンではHPVの侵入を防ぐという目的だけのために高い抗体価を長期にわたって維持する設計になっており、非常に強力なアジュバント(免疫増強剤)を使って免疫をかなり無理に賦活化させている。免疫系は、軟骨魚類以来の進化の試行錯誤の系統発生史の中で「自己」と「非自己」を区別する絶妙な仕組みが作り上げられてきたもの。それゆえ人為的に無理な力を加えると不利な反応を招き寄せかねない。

ウィルス様粒子を抗原としてワクチンを作成した点について安全性への疑問を投げかける研究成果も出ている。L1蛋白を構成しているアミノ酸配列をみると、ヒトの生理機能に深く関わっている蛋白やポリペプチドと分子構造上、重なり合う部分が非常に多く、これを抗原としてヒトの免疫系を刺激すれば、これらの機能に重大な影響を及ぼすと考えられる。

開発者は、ウィルスのDNAを除去して殻だけを抗原に用いたのだから、感染の危険性はないとしているが、分子構造の共通性(分子相同性)によって、しかもそれが強力なアジュバントと共に身体に投与されるので自己免疫疾患を誘発してしまう可能性は大いにある。HPVワクチンの場合、接種される個体側の要因で左右される部分が大きいと開発者も知っているはずで、普通の医薬品の臨床試験以上に注意深くリスクを調べるべきであったが、商品化を急ぐ過程で安全性のチェックが甘くなったのではないか。

概ねそんな趣旨のことを別府は話した。別府と同じくこのワクチンの危険性に早くから警鐘を鳴らしてきた医師は他にも何人もいる。例えば、内科医で医薬ビジランスセンター代表の浜六郎が、推進派の産婦人科医とバトルをした記録が『性の健康』誌14巻1号(2015年6月刊行)に載っている。このバトルの仕掛け人は、泌尿器科医でヒトパピローマウィルスの専門家であり、東京大学名誉教授の北村唯一だ。北村は両者の主張内容とやりとりを検証した上で、浜に軍配を上げている。また後に「このワクチンは使用すべきではない。孫娘には打たせていない」と筆者に語った。

実際、HPVワクチンのサーバリックスの場合もガーダシルの場合も重篤な副反応発症は他のワクチンに比して段違いに多い。すなわち、風疹、三種混合、四種混合などのワクチンでは10万人あたり2人前後なのに対して、サーバリックスで18人、ガーダシルで15人も起きている。HPVワクチンで自己免疫疾患が起き易いこともデータからわかる。例えば、ガーダシル接種者で多発性硬化症の発症は10万人あたり15人だが、これは多発性硬化症が多いことで知られるアイスランドの12人を上回る。

3.『文藝春秋』誌に「子宮頸がんワクチンは薬害ではない」とあるが…

ところで、『文藝春秋』誌3月号に元日本産婦人科学会理事長で慶応義塾大学名誉教授の肩書を持つ吉村泰典による「子宮頸がんワクチンは薬害ではない」なる文章が載っている。接種の積極勧奨再開を促すもので、内容的に多くの問題点が見られる。

第一。このワクチンを打たないと子宮頸がん死が増えると脅している。上記からわかるように事実を歪めた誇張である。

第二。HPVは、子宮頸がんだけではなく、中咽頭がん、肛門がん等の原因にもなるとして男性にも接種を勧め、日本で未承認の九価型ワクチンの宣伝をしている。これはメルク社が販売するガーダシルの新型商品で、対応するHPVの型数を増やしたものだが、作用機序が旧型商品と同じで強力なアジュバントを使っている以上、副反応も同じように出る。

第三。接種後に被害を訴える人が出ていることに対して「苦しむ方々へのサポートが必要」と書いてはいるが、その苦しみの内実に踏み込んでの検討はしていない。「ワクチンのせいで症状が起こったと思っている人に「そうではない」というのは非常に難しいことです。「それは思春期特有の症状です」と言っても、その人の症状が軽くなるわけではありません」(284頁)との、接種被害者が読んだら激怒しそうな記述もみられる。たぶん吉村は接種被害者と直接会ったことがなく、彼女たちの苦しみの実態を知らないのだろう。先に触れた2月9日の日本社会臨床学会の学習会では、別府による医学的な説明と被害当事者らの訴えの合間に、全国被害者連絡会が編集した、被害者たちが副反応で苦しむ様子を集めたユーチューブの動画(https://m.youtube.com/watch?v=BGjn1ZOnRiY)が上映された。ぜひ多くの方に見てもらいたい。

第四。重篤副反応発症メカニズムについて全く触れていない。強力なアジュバント使用による自己免疫疾患の誘発というリスクに対して吉村は殆ど何も関心を払っていないのだろう。7万人を対象として行われた大規模疫学調査(名古屋スタディ) のデータについて、接種者と非接種者とで「有意差なし」とする鈴木貞夫の分析結果を無批判のまま紹介している。本誌21号で紹介したが、鈴木の分析結果について八重・椿論文が精密な再検討を行い、病者除外バイアスなどを指摘して鈴木の結論を覆した。八重・椿論文の主張を日本看護科学学会が尊重し、鈴木からの異議を却下した。昨年アカデミズムの世界で起きたこうした一連の重要な出来事を吉村は黙殺している。

第五。吉村は「過去に薬害をもたらしたスモンやサリドマイドでは疫学研究でも薬剤と症状の因果関係が明確に出ました。HPVワクチンではそのような因果関係が見出せなかったのです」(284頁)とあっさり書いているが、ここには科学的な認識として大きな誤謬がある。HPVワクチンの特性についてだけではなく、ワクチン接種によって生ずる薬害の他の薬害と比べた場合の特性についても吉村はよく理解していないと思われる。

先の別府は、食中毒との対比でワクチン(HPVワクチンとは限らない)の接種被害を説明していた。食中毒では、皆が同じように下痢や腹痛を起こすから汚染食品が原因だったとすぐにわかる。だが、ワクチンの副反応は、その発現が接種された個体側の要因によって大きく左右される。全集団の中で感受性の高い、つまり自己免疫疾患に罹り易い人々が占める割合は少ないため、個々の患者の疫学的特性を無視して単純に疫学的手法を適用すれば、彼ら少数者は大勢の中に埋没し、ワクチンに問題があることが気づかれずに終わってしまう。薬害とは、医薬品の有害性に関する情報を国や製薬会社が軽視または無視した結果、社会的に引き起こされてしまった人災だが、ワクチンの薬害を見逃さないためには別府のような注意深さが求められている。

吉村の文章は「「ニセ科学」医療に騙されるな」特集に掲載された。いささか皮肉なことだが、吉村の主張こそは「「ニセ科学」医療」に該当しそうだ。それにしてもこれまでまっとうな過剰医療批判を数多く載せてきた『文藝春秋』誌にこのレベルの文章が掲載されたのは筆者には意外であった。同誌編集部は、HPVワクチンの作用機序の特異性をもっとよく調べ、「HPVワクチン接種被害事件」と真正面から向き合って欲しい。

4.「反ワクチン主義」と括ることで何が達成されてしまうのか

政治学者で北海道大学教授の吉田徹が、毎日新聞2019年12月26日付に「反ワクチン主義:行き詰まる民主政治」なる記事を寄せている。「子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウィルス感染防止のためのワクチン接種率が低下している」と始まり、HPVワクチン接種の停滞はよくない、日本はワクチン嫌いが多くて困るとする論調であり、推進派の主張をなぞったものである。

「反ワクチン主義」が民主政治を阻んでいると言いたいらしい。HPVワクチンに特有の作用機序に基づく副反応発症には全く触れていない。短い文章なのに吉田は話を拡げて昨今のはしか症例の世界的増加にも言及し「科学と公権力への不信は、近年の地球温暖化懐疑論やトンデモ科学論の広がりとも通じ合う」とまで述べている。粗雑で精度の低い議論をしていると言わざるを得ない。

特に許し難いのは、「反ワクチン主義」という括り方によって様々な重大な問題を十把一からげに扱い、HPVワクチンに懐疑的な立場を非科学的でカルトのようなものと印象づけようとしている点だ。これではこのワクチンの作用機序や含有成分を慎重に吟味し、自己免疫疾患の誘発可能性を危惧して警鐘を鳴らしている誠実な医学研究者に対して甚だ失礼であろうし、HPVワクチンの薬害が隠蔽されてしまう。

吉田は強引に自己決定権と公的福利という対立図式に話を持ち込もうとしている。打たない自由が前者なら、打たぬことで感染症や疫病の蔓延につながってしまうなら打つべきというのが後者というわけだ。この対立図式自体は政治学的に有意義なのだろうが、公的な場でこのワクチンについて何か語るのならその作用機序の特異性やそれゆえの危険性や被害者の訴えにもう少し注意を払ってからにして欲しい。

吉田の記事は「月刊 時論フォーラム」欄に掲載され、そこには「今月のお薦め三本」も紹介されていて、その一冊にポール・オフィット(Paul.A.Offit)著『反ワクチン運動の真実――死に至る選択』(ナカイサヤカ訳、地人書館、2018年、原著=DEADLY CHOICES : How the Anti-Vaccine Movement Threatens US All,2011)が挙げられている。オフィットは、ウィルス学が専門の小児科医で、ロタワクチンの共同開発者の一人のようだ。

同書で彼は、米国内でHPVワクチンを批判する人たちを激しく攻撃している。そして「安全性の問題としては一つだけ、HPVワクチンで時折失神する人がでるということだけだ」(邦訳7頁)と断言している。他方で「安全性の問題」として気にかけるべき、強力なアジュバント使用や自己免疫疾患の誘発の危険性はどこにも書かれていない。

吉田やオフィットが前提とするのは、ワクチンというテクノロジーへの無条件の信頼のようだ。確かにワクチンは天然痘の撲滅などには成功した。しかし、このテクノロジーは万全なのだろうか。あらゆるものを取り込んで膨張するグローバル資本主義が進展する中で、金回りのいい医療も取り込まれる代表的一領域となっている状況を考えるべきだろう。そこに落とし穴はないのかと熟慮する姿勢が今求められているのである。

生-権力とは、我々の生自体に見えにくい形で働きかけてくる力だ。「健康」を義務化した2002年の「健康増進法」などは好例だ。現代の生-権力は、イギリスの医療社会学者、ニコラス・ローズ(Nikolas .Rose)が『生そのものの政治――21世紀の生物医学、権力、主体性』(檜垣立哉監訳、法政大学出版局、2014年、原著=The Politics of Life Itself ,2007)で説くように、今や健康そのものの身体にまで介入しようとする。ローズによると、「21世紀における分子的政治(molecular biopolitics)」にあっては、病気と健康とのなじみ深い区別は曖昧になり、予防医学や先制医療が過剰に正当化され、それらに不熱心な人たちは批判される。つまり「ワクチン嫌い」を「不道徳」とみなして批判する力が強まっているのだ。

今や「未病」状態の掘り起こしが積極的に行われている。その典型的な一例がHPVワクチン接種と言えよう。感染症全盛の時期に有効性を発揮したワクチンと、生活習慣病に人々の関心が向く時代にがん予防用に微細な「悪」の兆候に対処すべく、新しいコンセプトで開発されたHPVワクチンとではその意義が大きく異なる。高い抗体価を長期間維持させ、免疫系を狂わせる原理の後者をもはや「ワクチン」と呼ぶべきではないとの意見さえある。吉田ら所謂「リベラル」の論客は両者の差異に早く気づくべきだ。また「反ワクチン主義」という粗雑な括りが副反応被害を見えなくさせてしまう効果についても。

5.2月5日の院内集会で接種被害を知り、態度変更した国会議員たち

2月5日、参議院議員会館講堂でHPVワクチン接種被害者の声を聴く、「知ってください!わたしたちの今」という集会が開かれた。参加者によると、証言した3女性の話の重さに心を動かされて議員たちが次々と発言した。「アナウンサー時代にこの「ワクチン」を推奨する特集を組んでしまったことを悔いています」などの懺悔の言葉も出たようだ。以下の引用は、当日傍聴しフェイスブックに投稿した方が紹介する、被害女性の語った深刻な体験談(文字起こしは投稿者)の一部である。

「このワクチンを受けて失ったものが沢山あります。高校にももっとちゃんと通いたかったし、大学に進学したかった。友人と出かけたり、好きなこと、10代20代だからできることをもっともっとしたかったです。学校も学校行事もまともに参加できませんでした。現在23歳です。友人もほとんど就職をしています。体調が悪いとはいえ、私は家でじっとしていなくてはならないことに罪悪感を覚えます。私は何もできない人間だ。そんなことを思ってしまう日があります。」

「もともとは、運動が大好きで3歳から体操教室に通い、器械体操が得意な活発な子だったと母は言います。読書が好きで学校の図書館の本を読破したりするほどでした。中学2年の冬に1回目を打った直後くらいから、酷い頭痛に悩まされ、耐えかねてよく失神しました。その後直ぐに、腰や肘、膝、指など、全身のありとあらゆる関節が痛み出しました。趣味のピアノが痛みで弾けなくなり、それどころか200mlの牛乳の紙パックも持つのが大変になりました。歩く時も、足を引きずるようになり、階段の上り下りが大変で、意識が遠のくほどでした。手足に、ひどい痺れや、震えが出てきて文字を書く事もままならないほどでした。また、この頃から記憶障害や視力障害、聴力障害がだんだんと出始めました」

「2回目の接種を行なった後には、左半身の痙攣が起こりました。自分の苗字だけでなく名前や、自分の生年月日や、好きな物を思い出せないようなことが増えてゆき、同じ単語を1000回書いても覚えられないというように記憶障害が酷くなっていました。そして、何の前触れもなく急に失神するような事も増えました」

「大好きだった小説だけでなく、文字自体を認識できなくなってしまい、外国語を見ているような気分でした。一番ひどいときには、母や家族、自分の家までわからなくなったりしました。現在、文字は認識できるようになり、このように文章も書けるようになりました。しかし、この原稿は5回失神しながらなんとか書き上げたというのが実際です」

不勉強で心ない医師たちの様子も語られている。例えば、「診てもらえる病院が少なく困っています。痛みや生理不順で2年近く診てくれていた産婦人科の先生に、子宮頸がんワクチンの副反応だと診断されたと話したら「ウチではもう診れません。」と、急に診療を断られました。右目の視力がどんどん落ちていき全く見えなくなってしまったので、眼科を受診してワクチンの話をすると「いやいや、ワクチンの副反応?聞いたことない、ありえない。演技なんじゃないの?何か嫌なことでもあったんじゃないの?」と言われました。ろくに検査もせずに、声を出して笑いながら」とある。

投稿によると、5日は18名もの国会議員が真剣に発言したという。9日の日本社会臨床学会の学習会では、なんとなく推進派のような立場の医師も会場に来ていたが、別府の説明で副反応発症メカニズムを知って驚愕した様子であった。認知行動療法などで対処できる症状では到底ないとわかったのだろう。マスコミが正確な情報を伝えていない中、5日も9日も貴重な場であった。

なお、日本社会臨床学会は、6月6日午後に神奈川県立保健福祉大学(横須賀市)で開催の総会シンポジウムでも別府らをパネラーに「HPVワクチン接種被害事件」を改めて取り上げる。詳しくは同学会HP参照のこと。

いのうえ・よしやす

1956年、北海道小樽市生まれ。1998年4月から2012年3月まで札幌学院大学教授。現在、日本社会臨床学会運営委員、北海道教育大学函館校&苫小牧駒澤大学非常勤講師。社会学者。社会意識論・知識社会学専攻。主要な研究テーマは、人間の高尚ではない諸問題。著書に『つくられる病――過剰医療社会と「正常病」』(ちくま新書)、『犠牲になる少女たち――子宮頸がんワクチン接種被害の闇を追う』(現代書館)、編著に『健康不安と過剰医療の時代』(長崎出版)、『「心のケア」を再考する』(現代書館)など。最近の論文に「先制医療への意志は「正常病」の症状かもしれない――HPVワクチン接種被害事件を糸口として」(日本保健医療社会学会編『保健医療社会学論集』28巻2号、2018年1月)、最近のインタビューに「正常であらねばならない「正常病」から逃れるために」(『季刊社会運動』No.435 、2019年7月)。本誌11号(2017年2月)に「接種の積極勧奨を再開させてはならない」、21号(2019年11月)に「医師たちはHPVワクチンをどれくらい知っているのか」を執筆。

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