特集 ●総選挙 結果と展望

「ヤマトンチュ」として沖縄「遺骨土砂問題」に向き合う

構造的沖縄差別是正と地方自治再建のための格闘

「遺骨で基地を作るな!緊急アクション!」呼び掛け人 西尾 慧吾

「遺骨土砂問題」の概略

現在防衛省・沖縄防衛局は、沖縄島南部の土砂を用い、辺野古新基地建設のための埋め立てを行うことを計画している。沖縄島南部は凄惨な地上戦となった沖縄戦の激戦地だ。沖縄住民のみならず、日本兵・朝鮮半島出身者・米兵など、様々な戦没者のご遺骨が今も「染み込んで」いる。

戦没者の遺骨収集が全く終わっていない当地から採取した土砂を新たな戦争に繋がる新基地建設に利用することは、戦没者遺族の宗教的人格権(日本弁護士連合会が2012年11月15日に出した「日本本土以外の戦闘地域・抑留地域における戦没者の遺体遺骨の捜索・発見・収容等の扱いに関する意見書」は、この権利を「憲法13条1項及び20条により 保障された基本的人権」だと指摘している)を侵害する「墓荒らし」行為でもある。沖縄戦の戦没者遺族は日本中・世界中にいるので、この「遺骨土砂問題」は外交問題にも発展しうる国際的な人権問題である。実際この問題は韓国公共放送KBSニュースでも報じられた上、Veterans for Peaceやアメリカ民主主義的社会主義者 (DSA)など、アメリカの市民団体も抗議の声を上げている。

「遺骨土砂問題」は日本全体で対峙すべき問題

「遺骨土砂問題」は、決して沖縄が作り出した「沖縄問題」ではない。2019年2月24日の県民投票で7割を超える沖縄県民が辺野古新基地建設反対の意志を示したことを歯牙にも掛けず、民主主義・地方自治の原則に反して新基地建設を強行する国が沖縄に押しつけている問題だ。その問題を解決する責任は全日本国民にあり、「沖縄問題」と等閑視している場合ではない。日本が国民主権の民主主義国家である限り、主権者たる全日本国民が国政の暴虐に抗議し、それを止めるための行動を起こす責任があるのだ。

しかし、国政のこれほどの過ちに対する市民の関心や全国メディアの注目度は低すぎる。沖縄の遺骨収集ボランティア・具志堅隆松さんは、3月・6月・8月の計3回に及ぶハンガーストライキで「遺骨土砂問題」の問題提起を行われ(特に8月14日~15日は、ヤマトンチュに直接訴えるため靖国通りでハンストされた)、防衛省や厚生労働省に対する直接行動も行われた。しかし、NHKニュースがハンストを一度も朝のニュースで取り上げないことなどを筆頭に、一部を除く大手メディアの報道は概して低調だった。市民の無関心とメディアの報道寡少が悪循環をなし、沖縄の抗議の声は黙殺され、国政に対する問題提起の負担を沖縄に押しつけることになってしまった。

国政がこれほどの人道上の過ちをしている以上、足下からそれに抗議する運動を起こさねばならない。特にコロナの影響で沖縄現地の運動に加われない今、草の根の民主主義の実践が重要になる。その考えで、私は「沖縄戦戦没者の遺骨を含む土砂を埋め立てに用いないよう国に求める意見書」を各地の地方議会で上げる運動に取り組んできた。

<「遺骨土砂問題」や辺野古新基地建設強行を問題視する市民は、アメリカや韓国を中心に世界中にいるので、彼らと国際的連帯して他国政府・特にアメリカ政府へのロビイングを行い、日本政府に外圧を掛けることを考えるべきだという意見を頂くことも多い。その重要性は当然否定し得ないが、外圧による国政変革に頼るだけでは「戦後民主主義」の二の舞になる不安があるし、内政不干渉原則のため、他国政府が出来ることには限界が大きい。本稿では敢えて主権者たる日本国民だからこそ出来る運動のあり方にこだわってみたい。>

まずは自分が暮らす大阪府茨木市議会で意見書採択を目指そうと、今年4月から運動を始めた。「遺骨土砂問題」への市民の認知・関心を高めるべく、地元で平和運動・労働運動に取り組んできた「サポートユニオン with You」の方々と共働して、沖縄映画上映会・勉強会を開催し、毎月19日の総掛かり行動でこの問題と意見書採択運動に関する周知を行った。同時に市議会に対する意見書採択の陳情や、総掛かり行動に参加する市民派市議との交流、保守系会派も含めた市議へのロビイングを行い、6月議会での全会一致採択を実現した。

全会一致採択実現の要因としては、市民の問題意識の高まりを市議に示せたことに加え、意見書を「辺野古」「米軍基地」に言及せず、「戦没者の遺骨を用いたあらゆる埋め立ては許されない」という人道上の観点に絞った内容にしたことが大きかった。4月15日に沖縄県議会で全会一致採択された意見書を雛形にしたことで、全会派の代表が連名で議員提案出来る意見書案を作成できたのである。

2016年に超党派の議員提案により、国会で全会一致成立した「戦没者遺骨収集推進法」は、「厚生労働省が責任を持って戦没者遺骨収集をすべきだ」と定めている。戦没者の遺骨を含む土砂で埋め立てを行うことは、同法の精神に反する。自公維新にとっても、この意見書は「自分たちが賛成した法案くらい守られるべきだ」と求めるものに過ぎず、全会一致になって当然のものなのだ。

<なお、防衛省・沖縄防衛局が進める土砂採取計画は厚労省が責任を負うべき遺骨収集事業の妨害なので、厚労省は防衛相らに抗議すべきである。具志堅隆松さんらも、直接交渉で厚労省の職員にそのことを指摘しているが、彼らは「防衛省の事業には関与し得ない」との答えに終始している。ここで露呈する厚労省の無力・無能こそ、「遺骨土砂問題」のみならず、コロナ対策・社会保障・年金といった市民の生存権に関わる政策の手落ちの根源悪のように思われる。>

6月議会では茨木市以外でも、大阪府吹田市・石川県金沢市・東京都小金井市・奈良県議会などで同様の意見書が採択された。しかし、日本政府がこうした地方自治体の抗議の声に向き合うことはなかった。国会も地方議会も閉会し、コロナの蔓延で抗議活動も出来ない間隙を突き、7月には沖縄島南部の熊野鉱山付近で重機を用いた整地作業が開始された。作業の様子を捉えた沖縄ドローンプロジェクトの写真を見ると、既に土砂搬出路が完成したような印象を受ける。

意見書採択運動の全国展開

地方自治をこれほど軽視し、市民を無力感・徒労感に陥らせて抵抗力を奪おうとする現在の国政への危機感もあってか、9月議会では予想以上に多くの自治体で意見書採択が実現した。私が把握しているだけで、北海道から鹿児島まで95を超える沖縄県外の地方議会で意見書採択がなされた。特に大阪市・堺市・福岡市という3つの政令指定都市での全会一致採択が叶ったのは意義深い。事実上、都道府県議会での全会一致採択と同じくらいの影響力を持つと考えられるからだ。大阪市議会は83議席中40議席を維新所属の議員が占めるが、そこですら全会一致が可能だったことは、今後のロビイングの追い風になる。

勿論、意見書採択運動を自己目的化するのは危険だ。「遺骨土砂問題」は、国の「安全保障」を名目に辺野古新基地建設と沖縄への米軍・自衛隊基地の押しつけを強行し、沖縄県民の人権・自己決定権を犠牲にする日本社会の構造的沖縄差別が生む諸問題の一つに過ぎない。いつまでも議論を左右を問わず合意出来る「人道上の問題」に限定することは、構造的沖縄差別の温存を意味する。

入管法・ジェンダー差別・人種差別・ヘイトスピーチなど、近年日本社会では差別問題が噴出しているが、これらの諸事象に通底するのは、包括的差別禁止法を制定しないまま差別問題そのものの直視を避けてきた日本社会の未熟さだ。全会一致採択のためのロビイングに酔いしれ、構造的沖縄差別の論点化を避けていると、日本社会が差別を許さない社会へと成熟する機会を逃し続けることになる。

辺野古新基地建設を中止し、普天間飛行場代替施設が必要かどうかの議論を本土で引き取るよう求める「新しい提案実行委員会」の訴えが、今年9月末までに全国47の地方議会で陳情採択・意見書可決という結果を生んだことは、構造的沖縄差別への抗議も徐々に広まっていることを意味する。しかし、茨木市も含め、「遺骨土砂問題」意見書を可決した多くの自治体は、未だに辺野古新基地建設や構造的沖縄差別という根本的な問題を正す意見書を上げられる状態になっていない。市民の問題意識も、辺野古新基地建設そのものの中止を迫る意見書を可決するよう地方議員に圧力を掛けられるほどには成熟していない。特に「遺骨土砂問題」意見書可決を既に果たした自治体では、この意見書をどのように構造的沖縄差別の解決に繋げるか、議論を深めるべきである。

一方、具志堅隆松さんらは、12月議会以降も「遺骨土砂問題」意見書の運動を継続し、例え「辺野古」「基地」に踏み込まないものであっても、とにかく一つでも多くの自治体で意見書可決という「実」を取って欲しいと訴えられている。そもそもこの意見書は全会一致採択されなければおかしいものなので、まだ意見書を上げられていない自治体へのアプローチを強め、意見書可決の事例を増やし、国への圧力を強めたい。

「遺骨土砂問題」に取り組み続ける意義

「遺骨土砂問題」に絞った運動を行うことにも一定の意義がある。第一に、沖縄戦没者の遺骨の多様な背景を学ぶことは、沖縄戦の歴史を学ぶことのみならず、日本の戦後処理・植民地責任の問題に対峙することにもなる。特に、現在の日本政府が朝鮮半島出身者の遺骨収集・返還を不可能にする土砂採取計画を進めることは、朝鮮に対する植民地責任を放棄したことを意味し、東アジアでの歴史的和解を不可能にする。

遺族の心情を思えば、「遺骨土砂問題」を戦争史・戦後史学習の「教材」のように扱う訳にはいかない。一方で、この問題が、日本の戦後処理・植民地責任の問題を議論する入口としての価値を持つことも事実だとは言えよう。

加えて、「遺骨土砂問題」の運動は国民主権の担い手として、民主主義・市民自治を実戦する訓練となる。日本では「政治=選挙」だとの誤解や、政治運動に関わると「政治的」だとのスティグマを貼られるという悪習が蔓延している結果、草の根の市民運動が低調だ。その結果、市民生活と政治との乖離が進み、権力側の横暴が看過される。しかし、憲法の定める国民主権を現実化するには、「自分の社会は自分で作る・動かす」という市民自治の実践の日常化が不可欠だ。

意見書採択運動に取り組む中で、私自身、市民学習会や総掛かり行動での街頭宣伝を通した市民運動体の組織や、議会への陳情・ロビイングなど、市民自治を実践する方法を学ぶことが出来た。一人の大学生ですら、幅広い市民と運動体を組織し、憲法第16条が保障する請願権や地方自治法第99条の規定を活用することで、国政に参与する力があると実感できた。市民運動自体が、国民主権に基づく民主主義を実践するのに必要な法律上・制度上の知識を民主化する過程なのだ。

戦後日本の国政選挙は保守派の勝利が圧倒的に多く、国民は首相を直接選べない。デモやオンライン署名などの市民運動を行っても、政権が耳を貸すことは稀だ。特に最近の自公政権による市民の声の黙殺は酷く、「市民は何をやっても無駄」と感じがちだ。その点、「人道上の問題」に的を絞った「遺骨土砂問題」意見書は、採択という具体的成果に繋がる可能性が高い。少なくとも意見書への反対をその場で明言する会派は滅多にないので、ロビイング時に門前払いされることは少ないだろう。従って、「遺骨土砂問題」に関する運動は、市民を無力感で苛もうとする国政への抵抗力をつけるエンパワーメントの好機になる。

とはいえ、「遺骨土砂問題」意見書すら順風満帆に可決に繋がるとは限らない。私自身、9月議会でのロビイングでは多くの失敗を味わった。ただ、逆説的ではあるが、当然全会一致で可決されるはずの意見書が通らないことが、国政・地方自治の腐敗の現実を見せつけ、ますます市民自治の実践の必要性を実感させてくれる。

意見書が通らない最大の理由は、市議団の中央への忖度だ。特に保守系会派は、「本部に相談し会派内で調整する」と言ってロビイング時にすぐ態度を明らかにしないことが普通だ。そして判断保留を続け、議論がまとまらないことを理由に継続審査でお茶を濁そうとするか、最悪の場合は「遺骨の問題を辺野古新基地建設反対のために政治利用している」「安全保障に関する議論は地方議会に馴染まない」として本会議で否決してしまうこともある。そうなれば、一事不再議の原則に従って同一会期中に同じ意見書を議論出来ないことになり、「遺骨土砂問題」のような緊急の人権問題すら次年度まで棚上げされる。

「遺骨土砂問題」意見書は、国会で全会一致成立した戦没者遺骨収集推進法を根拠にするものなので、本部がその意見書にすら賛成しないよう地方議員に圧力を掛けているのなら、立憲主義・民主主義の蹂躙だ。加えて、意見書に関する判断を本部の意向に委ねる地方議員の現状は、地方自治の観点から大問題である。

日本国憲法は地方自治に独立した一章(第8章)を割いている。それほど地方自治を重視するのは、戦前・戦中の地方自治体が中央の下請けに堕した結果、国政の全体主義的暴走を止められなかったという、戦争体験の反省に基づいている。逆に言えば、地方自治の担い手として独立した意志決定を行わない地方議員と、彼らの意志決定に介入する国会議員は、憲法違反を犯し、過去の戦争の教訓を無視していることになる。憲法第99条は公務員に「憲法を尊重し擁護する義務」を負わせているから、地方自治の原則に外れた議員らにその地位にいる資格はない。

地方自治は平和主義の守り人である。例えば「非核神戸方式」で知られる神戸市は、市議会決議により、神戸港に寄港する外国軍の艦船に核兵器を搭載していないことを証明する「非核証明書」の提出を義務付け、非核三原則を貫徹してきた。林茂夫はジュネーヴ条約第一議定書に基づく無防備地域宣言運動を行うことで、自治体単位の「戦争不参加宣言」が出来ると主張した。「安全保障は国の専管事項」などと言って地方自治を軽視することは、戦争回帰だと言っても過言ではない。国家が戦争を起こして最も苦しむのは所謂「一般市民」なのだから、市民運動で「国の全体主義化・軍事化は許されない」と声を上げるのは全く正当な行為だ。

全国に先駆けて「遺骨土砂問題」全会一致採択を果たした自治体の一つである茨木市すら、地方自治の状況は安泰ではない。茨木市を含む大阪9区を拠点とする日本維新の会の足立康史議員は、茨木市での意見書採択を報じた朝日新聞の記事を引用リツイートし、「維新市議団の判断ミスです。自公に引っ張られたらダメだという事例です。反面教師にして、対処いたします」と投稿した。維新の市議一人は「当事者の私達に取材もなく、また意見書に一言も書かれていない辺野古問題に絡めて一方的に報道する無責任な報道機関があることを想定しきれなかった事を真摯に反省し、今後はより慎重な対応を心掛けます」と応答し、既に地方議員の忖度・萎縮が始まっている。9月議会で大阪北部の北摂地域で運動した際も、足立議員の発言を理由に意見書に後ろ向きになったと推測される自治体も少なくなかった。

このような人物に国権の最高機関の座を与えてきたことは、国民が国政に無関心・無批判になることの罪深さと恐ろしさを象徴する。地方議会での運動は、国会議員の腐敗に気づく契機にもなるので、日本全体の立憲主義・民主主義を立て直すための市民自治の必要性は今改めて強調されるべきだ。

10月5日、松野博一官房長官は「遺骨土砂問題」意見書採択の全国展開に関し、「地方議会における個々の取り組みについて、政府としてコメントすることは差し控えたい」と答弁した。地方自治を無視する姿勢を明確にしたのである。地方自治の再建がこれほど求められる今、「遺骨土砂問題」の運動を自分たちで起こす意義は大きい。

最後に、「遺骨土砂問題」に取り組むことで、国の沖縄分断政策への免疫力を付けることが出来る。「遺骨土砂問題」は、「沖縄県知事が沖縄島南部から土砂採取を行う沖縄県内の業者に、その業務を制限する命令を下す」との構図を取る。非人道的計画による辺野古新基地建設を強行する国が根源悪だが、表面上は沖縄県内の対立として演出される。実際、土砂採取業者は知事による措置命令を不服とし、国の公害等調整委員会に裁定申請した。分断統治は植民者の常套手段だが、沖縄の分断を演出する印象操作に欺されず、沖縄で起こる矛盾は国が押しつけたものだとの認識を持ち続けるためにも、「遺骨土砂問題」を学び続けることは肝要だ。

岸田文雄首相は、最初の沖縄出身の沖縄担当大臣として西銘恒三郎氏を任命した。「沖縄に寄り添っている」とのイメージ戦略かも知れないが、首相は所信表明演説で辺野古新基地建設推進を明言しており、構造的沖縄差別を止める気はない。そればかりか、沖縄県知事が沖縄出身の大臣と面会・時に対立する場を作ることで、沖縄の政治家内部の対立を印象づけることさえ企んでいるのかも知れない。沖縄に対する植民地主義的分断政策を強める国政に抗議し続けることは、ますます重要だ。

「遺骨土砂問題」を通して見えてくるのは、同じ国内の一地方を構造的差別の対象にし、数多の憲法違反を犯す国政の腐敗の有様だ。「沖縄問題」と等閑視している場合ではない。沖縄戦も、偶然地上戦が沖縄でしか起こり得なかっただけで、九州や高知県などでは住民を巻き込んだゲリラ戦が想定されていたし、沖縄戦の組織的戦闘が終結した1945年6月23日は、皮肉にも鉄血勤皇隊のような少年兵徴用を合法化する義勇兵役法の公布・施行日だ。

構造的差別に曝される沖縄は日本社会の構造矛盾が最も早く過酷に露呈する、「鉱山のカナリア」にされてしまっている。裏返せば、沖縄で起こる問題はいずれ日本全体で起きるということで、その問題について取り組むことは決して「沖縄のため」ではなく、「日本のあらゆる市民のため」なのである。

11月以降の行動提案

最後に、日々切迫感を増す沖縄の状況に応じた取り組みをヤマトで育むため、読者一人一人が出来る行動をいくつか提起し、結びとしたい。

まずは「遺骨土砂問題」意見書採択運動を全国展開して欲しい。議員提案や市民請願による本会議での可決に向け、市民の運動体作りと議会でのロビイングを行えると理想的だが、それが難しければ、意見書採択を求める陳情書を送るだけでも良い。陳情は紹介議員も不要で、住民票がない自治体にも郵送するだけで出せる。陳情者は外国人でも未成年でも良い。陳情書は議員に回覧されるだけなので、意見書可決という実質的成果に直結する可能性は低い。しかし、60年安保の時のような国民的な陳情運動が起きれば、陳情書が「数の力」を獲得し、「遺骨土砂問題」意見書を議員提案しようと考える地方議員を増やせるかも知れない。まずは自分が暮らす市町村議会に陳情書を郵送することから取り組みを始めて欲しい。

陳情書や議会でのロビイングは、自分が暮らしていない自治体でも当然行って良い。特に、これまで「遺骨土砂問題」意見書を採択した沖縄の自治体と友好関係を結ぶヤマトの自治体への働きかけは重要だ。既に可決済みの岩手県北上市と、本会議で否決された大阪府枚方市を除けば、意見書採択を果たした沖縄の自治体と友好関係にあるのに未だ意見書案の提案すらされていない自治体が少なくとも28ある(注1)。そうした自治体で運動を起こすことは、意見書採択の全国展開のために重要である。

意見書採択運動を自ら起こすのが難しい場合も、内閣府や防衛省宛に抗議文を出すとか、大手メディアに投書するとか、各メディアの問い合わせ先に「遺骨土砂問題をもっと報じて欲しい」という意見を送るとか、一人一人が今から出来ることは多い。少なくとも琉球新報・沖縄タイムスなどの在沖メディアのオンライン記事を見るとか、沖縄で運動する方々のブログを読むとか、大手メディアが報じない沖縄の日常を追い続けるだけでも当事者意識を高められると思う。

 

(注1)滋賀県高島市 (伊江村と交流事業)・愛知県岡崎市 (石垣市の親善都市)・徳島県上板町 (石垣市の友好都市)・北海道稚内市 (石垣市の友好都市)・神奈川県厚木市 (糸満市の友好都市)・北海道網走市 (糸満市の友好都市)・宮崎県都農町 (糸満市の友好都市)・岩手県盛岡市 (うるま市の友好都市)・愛知県蒲郡市 (浦添市の友好都市)・北海道石狩市 (恩納村の友好都市)・長野県川上村 (恩納村の友好都市)・岡山県吉備中央町 (恩納村の友好交流縁組)・岩手県葛巻町 (北中城村の姉妹町村)・愛媛県内子町 (宜野座村の姉妹都市)・茨城県境町 (国頭村と友好交流)・宮崎県高千穂町 (豊見城市の姉妹都市)・高知県土佐清水市 (豊見城市の姉妹都市)・宮崎県美郷町 (豊見城市の姉妹都市)・鹿児島県知名町 (今帰仁村の友好都市)・鹿児島県和泊町 (今帰仁村の友好都市)・千葉県旭市 (中城村の姉妹都市)・福岡県福智町 (中城村の兄弟都市)・北海道滝川市 (名護市の友好都市)・群馬県館林市 (名護市の友好都市)・岩手県八幡平市 (名護市の友好都市)・神奈川県川崎市 (那覇市の友好都市)・宮崎県日南市 (那覇市の姉妹都市)・高知県香南市 (八重瀬町の姉妹都市)

にしお・けいご

1998年生まれ。米イェール大学在籍。哲学・人類学専攻。2017年4月より沖縄戦遺骨収容国吉勇応援会・学生共同代表として、関西を中心に毎年10カ所程度沖縄戦遺品の展示会を開催する傍ら、国吉勇氏から遺品に関する聞き取りを進め、地上戦の「動かぬ証拠」としての遺品の活用・継承に取り組んできた。現在は「ヤマトにおける沖縄戦平和学習」の研究と実践に励む傍ら、「遺骨で基地を作るな!緊急アクション!」呼び掛け人として、「遺骨土砂問題」意見書採択運動にも尽力している。

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