特集●戦後70年が問うもの Ⅰ

変革の思想としての持続可能な発展

『環境と開発への提言』の発刊によせて

京都大学名誉教授 松下 和夫

はじめに

今般『環境と開発への提言:知と活動の連携に向けて』( ロバート・ワトソン 編集代表・松下 和夫 監訳)(東京大学出版会、http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-033080-0.html)が発刊された(別添主要目次参照)。

本書は地球環境に関する国際賞である「ブループラネット賞」の受賞者が徹底討議した成果をもとに、多くの受賞者からの寄稿を加えてとりまとめたものである。「ブループラネット賞」は、地球環境問題の解決に向けて科学技術の面で著しい貢献をした個人または組織に対して、その業績を称えるために設立された賞で、1992年に第1回の受賞者を出して以来、これまでに合計43人、5団体が受賞しており、現在では環境のノーベル賞とも称される国際的な名声と地位を確立している。

編集代表者のロバート・ワトソンは、英国出身の化学者であり、1980年代後半からオゾン層保護のためのモントリオール議定書の制定に尽力し、その後IPCC(気候変動に関する政府間パネル)議長や世界銀行の首席科学顧問としても活躍し、現在はイースト・アングリカ大学教授および英国政府(環境省)の科学顧問として、科学者コミュニティーの科学的知見に基づく政策提言を積極的に行っている。

本書は2部構成で、第1部は、ブループラネット賞受賞者の共同執筆による、「12か条のキー・メッセージ」、「問題の所在」、「解決に向けて」から構成されている。特に12か条のキー・メッセージにおいては、冒頭に筆者たちが望む「夢」が示されている。それは、「公平で貧困のない世界、人権を尊び、貧困や自然資源に対してよりいっそう高い倫理観を持って行動する世界、気候変動や生物多様性の喪失、社会的不公正という諸事実への取り組みを成功させ、持続可能な環境・社会・経済を実現できる世界」である。まさに「平和と持続可能な発展の世紀」へのビジョンを示したものといえる。

このような夢を提示したうえで、筆者たちは、学際的な科学的知見に裏付けられた地球環境の現状に対する危機意識の表明と、高度の環境知性と倫理感に基づいて、夢の実現への道筋に向けた取るべき行動への明確な呼びかけをしている。世界が現状のままで推移すると、後戻りすることのできない地球環境破壊のティッピング・ポイントを超える恐れを示しながらも、今ただちに賢明な行動をとるならば危機の克服は可能であることを強調し、現代文明の大転換を訴えている。

「解決に向けて」の章ではより具体的に、気候変動、生物多様性、食糧と水の安全保障、などの課題に言及しながら、ビジョンの提示と行動の必要性、求められるリーダーシップとガバナンス、そして社会的なイノベーションと草の根活動、知識創出の意義を述べている。とりわけ強調されているのは、生産と消費に環境および社会的コストを正しく反映した価格付け(たとえば炭素排出に対する課税)を行うことであり、そのことがグリーン経済とグリーン雇用に新たな機会を開くとしている。

第2部はそれぞれの受賞者の専門性と知識・経験に基づく個別の寄稿をまとめた23編の論文から構成されている。本書ではこれらの論文を「現状認識」、「気候変動」、「生物多様性と生態系サービス」、「政策と経済社会との連携」に分類しており、それぞれの問題の具体的な提示と解決への方向が示唆されている。

本書の執筆者はそれぞれ専門分野や経歴はきわめて多様であるが、共通の認識としては、「有限な惑星においては、無制限の経済成長は持続不可能であること、そして持続可能な環境・社会・経済を実現できる世界という夢を叶えるには、従来のシステムには欠陥があり、これまでと同じ道をたどれば夢を実現することは不可能である」ということである。そして持続可能な発展経路への社会のシステム転換が、環境面からは不可避であると同時に、経済的にも倫理的にも社会的にも合理的で正当化されることが説得力を持って展開されている。

以下の本稿では、本書のこのような認識の背景について考察する。

1.経済成長がすべての問題を解決するとの神話

20世紀後半に発展した高度産業社会の到来により生じた様々な環境問題や、人口と経済の成長が地球の環境容量の限界に直面しているとの指摘はかなり以前からされている。たとえばローマクラブの「成長の限界」(1972年)、アメリカ政府の「西暦2000年の地球(グロ-バル2000レポート)」(1980年)、レスター・ブラウンが創設したワールド・ウオッチ研究所による「地球白書」等々枚挙にいとまがない。

これらの諸問題に対しては、国際レベルではたとえば国連環境計画(UNEP)が設立され、個別の地球環境問題については、気候変動枠組条約や生物多様性条約をはじめ、多くの多国間環境条約が締結され、各国内においても様々な政策的・技術的対応がとられてきた。その結果、今日の環境政策・技術の体系は格段に高度化している。

しかしそれらの対策が成果をあげているかと問われると、答えは否である。その原因は、本書の筆者たちによると、世界の指導者の大半が経済成長第一主義に固執し、経済成長がすべての問題を解決するとの神話を信奉していることにある。その結果、政府の第一の任務は経済運営であり、政府が成功したか失敗したかを測る試金石は経済成長の水準である、という考えがいまだに広く受け入れられているのである。環境対策も総じていえばあくまで経済成長の妨げにならない範囲で対症療法的に実施されてきたに過ぎず、環境問題を生起している社会の根本的・構造的な変革には程遠かったのである。

2.閉鎖系経済との認識

地球という有限の閉鎖系の中で、無限の経済成長は不可能であることをいち早く指摘したのは、イギリス出身の米国の経済学者、ケネス・E・ボールディングである。

彼は1966年に、「来たるべき宇宙船地球号の経済学」と題したエッセイを著し、その中で従来の経済学が無限に資源を利用できることを想定していることには無理があるとし、これを「カウボーイ経済」と呼んで批判した。「カウボーイ経済」とは、略奪と自然資源の破壊に基づき消費の最大化を目指す経済である。ボールディングは、「未来の『閉じた経済』は『宇宙飛行士経済』と呼ばれるべきだろう。地球は一個の宇宙船となり、無限の蓄えはどこにもなく、採掘するための場所も汚染するための場所もない。したがって、この経済の中では、人間は循環する生態系やシステム内にいることを理解する」と述べている。人類が宇宙から初めて地球をみた当時の時代背景もあり、ボールディングの警告は、多くの人に現実感を伴った衝撃を与えた。

ボールディングはまた、「指数関数的な経済成長を信じているのは、狂人かエコノミストのどちらかだ」と述べたことでも知られている。指数関数的な経済成長とは、複利による増殖システムであり、これは原理的・本質的に「永続不可能」であるというのである 。ちなみに複利で経済成長が続くことは、10%の成長率では7年で、7%の成長率では10年で経済規模が倍増することを意味する。3.5%の成長が100年続くと、経済規模は30倍以上になる。このようなことが地球規模で可能だろうか。

ボールディングの指摘が正鵠を得ているとするならば、現在の世界は狂人かエコノミストに満ち溢れていることになる。どうしてこのようなことになっているのだろうか。

なお、ここで注意すべきは、「成長」と「発展」とが根本的に異なる概念であることである。GDPの拡大に象徴されるように、「成長」は量的な拡大を意味する。GDPは、経済活動に伴う資源の消耗・枯渇による社会的費用は無視し、環境汚染が起きた場合には汚染対策費用をGDPではプラスに計上する。一方、「発展」は質的な変化を伴うものであり必ずしも量的な拡大を意味しない。本来政策目標とすべきは、人々の厚生の持続可能な維持と発展である。しかもそれを閉鎖系の生態系という生命維持システムの中で達成することが求められているのである。

3.継続的な社会変革の思想としての「持続可能な発展」

経済発展を環境的・社会的に持続可能なものにすることを意図して提唱されたのが、「持続可能な発展」であった。持続可能な発展については、国連が設置したブルントラント委員会報告『地球の未来を守るために(Our Common Future)、1987年』において「将来世代のニーズを損なうことなく、現在の世代のニーズを満たす開発」として定義されたのがよく知られている 。この定義は経済開発が将来世代の発展の可能性を脅かしてはならないという世代間責任を明確にしたものである。持続可能な発展は、本来環境的・社会的・経済的な持続可能性を維持した発展を意味し、人々の生活の質的向上と生態系の持続可能性の維持を目的としていた。

この背景には、「経済成長と環境の保全は本来対立矛盾するものではなく、経済発展を環境的に持続可能なものにすることは十分可能である。さらに、世代内部と世代間での環境的・社会的な正義を実現することも可能だ。」との認識および期待があったと思われる。ところがその後の世界では既述のように、経済的持続可能性のみに焦点がおかれ、環境問題に対しては経済成長維持を前提とした技術中心主義的なアプローチが重視されてきた傾向が強い。

ブルントラント報告においては、持続可能な発展につき、「資源の開発、投資の方向、技術開発の傾向、制度的な変革が現在および将来のニーズと調和の取れたものとなることを保証する変化の過程である」と述べられている 。これは持続可能な発展が、社会の技術や制度と深く関わり、変化のプロセスに着目する必要を述べたものである。この定義を敷衍すると、「持続可能な発展」とは、新しい環境社会像を提示すると同時に、そこに向けた不断の変革への政策プロセスを意図した環境思想であるといえる。言い換えると、ブルントラント報告は、各国および国際社会が、その集合的な政治行為と政策設計によって、地球環境の限界を認識し、従来の経済発展パターンを再設計することを期待していたと理解できる。したがって、「持続可能な発展」の実現とは、高度産業社会の進展の中で生起している多様な環境問題を解決するとともに、ポスト高度産業社会の「新しい環境社会像」を構想し、社会的公平性を確保するとともに、その実現に向け制度、技術、資源利用、投資のあり方を継続的に変革し統合していくことを意味する 。このことは社会システムそのもののイノベーション(革新)が求められていることを示すものである。

「環境と開発への提言」の筆者たちは、冒頭で目指すべき地球社会のビジョン(「夢」)を提示し、その夢の実現に向けてとるべき道筋を制度、技術、資源利用、投資のあり方も含め、様々な角度から論じているのである。

4.定常経済論と持続可能な社会

ちなみに、2014年にブループラネット賞を受賞したハーマン・デイリーは、日本の定常経済への移行に次のような期待を表明している

「経済の規模は大きくなるものですが、地球はそうではありません。地球にはますます人間があふれ、自然はますます枯渇しています。経済の拡大は、生産で得られる利益以上に環境への負担を加速させています。私たちは、持続可能な「定常状態型経済」への移行を迫られています。日本は島国であり、人口増加は止まり、富は比較的公平に分配されており、また量的成長よりも質的改善を重視する国です。したがって日本は、世界が失敗しつつある成長経済から「定常状態型経済」への移行をリードできる立場にあります。実は、この移行は、全ての国々が成し遂げなければならないものなのです。」

「経済学における定常状態」は、アダム・スミス(1723-1790)、デイビッド・リカード(1772-1823)、ジョン・スチュアート・ミル(1806-73)などに代表される古典派経済学の時代から議論されてきた。

定常状態とは何か。定常状態とは、人的資本(人口、教育、技能など)と人工資本(機械、建物、インフラなど)のストックが一定量となる状態が毎期反復することと定義される(ただし今日では、人的資本と人工資本に加え、大気・土地・森林・地下資源などの自然資本もあわせて考える必要がある)。これは完全な静止の状態ではなく、世代の交代と資本の更新を続けながら、人口や資本量、生産量、消費量などが変わらないままに推移する状態である。古典派の経済学者たちは、経済成長プロセスで社会は利潤率が最低限にまで低下した定常状態にやがて到達するという見方をしていた。このような経済は、経済的には停止しているようなものと受け止められ、古典派経済学者の大部分は、定常状態が進歩の終わりを意味するものとして恐れた。

しかしミルは定常状態を、生活の質にも配慮した安定した社会としてむしろ積極的にとらえた。ミルは『経済学原理』 の中で、「資本および人口の停止状態・定常状態が、必ずしも人間的進歩の停止状態を意味するものでないことは言うまでもない。」としている。定常状態においても、精神的文化や道徳的社会的進歩のための余地と生活の技術を改善する余地が大きいことを述べ、従来の富の増大という目的から解放され、「労働を節約させるという、その本来の効果を生むようになる」 とし、その結果、少ない資源と労働で生活するのに充分な品物が入手できるようになり、自然と余暇を獲得した人々は、より一層精神の成長を達成することが可能になるとしたのである。

デイリーは、ミルの「定常状態」について、人口と物理的な資本ストックの増加がゼロであっても、技術と倫理は継続的に改善していくような状態、すなわち今日的には「持続可能な発展」(量的増加を伴わない質的改善)を論じていたとして積極的に評価しているデイリーはブルントラント報告書によって世界的に広まった「持続可能な発展」を、環境の扶養力を超えてしまうような成長を伴わない発展と定義した。ここでは「発展」は質の改善を意味し、「成長」は量的拡大を意味する。そして国内総生産(GDP)の拡大として定義される経済成長を、量的な構成要素(資源のスループット、すなわち資源を採取し経済活動に使用した後、汚染物質又は廃棄物として排出する)の成長と、質的な構成要素(資源の効率性の改善)とに分解し、環境劣化の主要な原因がスループットの総量の成長にあること、他方、スループットの減少ないし資源の効率性の改善が環境を救うことを論じた。

ダスグプタらは「包括的富」の概念を開発し、デイリーの議論をさらに展開している。現在経済成長の指標として世界的に広く利用されているGDPは、短期的な経済変動をみるフローの指標であり、必ずしも一般の人々の生活の豊かさ(厚生)とは連動していないことが指摘されている。GDP指標によって示される経済成長の偏重が、資源の過度な利用(スループットの拡大)につながり、将来世代の発展の可能性を損なうことが懸念されている。このため長期的に持続可能な発展を計測するために、様々な資本のストック(量)を重視した包括的富指標が開発されたのである。この指標では、機械・建物・インフラなどの人工資本、人口・教育・技能などの人的資本、大気・水・土地・森林・地下資源などの自然資本を中心に資産を評価し、140か国を対象として数値化している。 デイリーの議論に戻ると、人間の経済活動の規模は年々拡大するが、その活動はあくまで物質的には閉じた生態系からなる自然に依存している。マクロ経済は、有限で成長することのない生態系の下位にあるシステムであり、無限に拡大することはできない。発展が持続可能なものであるためには、経済活動の水準を、それを包含する生態系システムが持続可能な状態にとどめておかなくてはならない 。

デイリーは、現在の社会は経済という下位システムがそれを内包する生態系と比べると著しく成長し、その結果、残された自然資本が人工資本に比べ希少になっているとしている。また、自然資本の希少性は人工資本によって完全には代替できないので、人工資本が希少で、人工資本が経済成長の制約要因であった時代と異なり、現在は、自然資本が経済発展の制約要因となっている。たとえば漁業用の高速船や高度な技術が発達したとしても、魚類そのもののストックが減少すれば漁獲量を増やすことはできない。

彼の議論は、伝統的な経済学が対象としてきた、①効率的な資源配分と、②公正な所得配分に加え、③自然生態系の扶養力(環境容量)に基づく持続可能な(最適)経済規模を達成するという第3の政策目標を明示したところに意義がある。③が政策目標として加わることにより、自由主義的な市場経済と分権的な民主主義体制の下で、これらの政策目標を同時に達成することは一層困難となっているのである。

5.日本への示唆

デイリーが日本に対して「定常状態型経済」への移行の先導役を期待した背景には、日本経済が長期にわたり低成長を続け、世界の高齢化・少子化のフロントランナーとなっていることがあると思われる。広井良典は、持続可能な福祉社会との観点から、「『21世紀後半に向けて世界は高齢化が高度に進み、人口や資源消費も均衡化するような、ある定常点に向かいつつあるし、またそうならなければ持続可能ではない』という基本認識」を示している

そもそも経済の目的はGDPに示される経済活動のフローの増大にはなく、一人あたりの生活の質(厚生)の向上にある。その点を踏まえ、ダスグプタは、持続可能な発展を、「生活の質、すなわち社会的福祉(social well-being)の持続的向上が実現する発展のこと」とし、「ある地域社会の生産的基盤が人口一人当たりでみたときに縮小していない場合、その地域社会の発展は持続可能であるといえる。」としている。そして「生産的基盤」とは、地域社会の資本ストック(自然資本、人工資本、人的資本、知識)とそれらを活用する制度(市場・政府・コミュニティー・家計・人的ネットワークなど全体の資源配分メカニズム)の組み合わせであり、これが生活の質を作り出している、としているのであるまたダスグプタらの「包括的な富に関する報告書2014」では、各国の資本ストックの趨勢の評価に基づき、自然資本と人的資本を向上させる政策を提唱している。具体的には農地と森林、そして再生可能エネルギー、そして教育への投資である。

日本では2050年に向け急速な高齢化・人口減少が進むと予測されている。このような趨勢の中で、温室効果ガス排出量をはじめとした環境への負荷を抑えながら、一人あたりの厚生を持続的に維持・向上させることが求められる。

そのためには、労働生産性と資源生産性の向上、自然資本を維持する農林漁業、地場産業・観光産業、教育への投資を優先していくことが有効であろう。再生可能エネルギーや燃料電池車などのグリーン産業への投資による産業構造・ビジネススタイルの転換、福祉・教育 ・ 芸術等への投資によるライフスタイルの転換、さらにはゼロエネルギー住宅への転換を含む住宅投資とそれにより誘発される太陽光発電、家庭用コジェネレーション設備、家庭向けエネルギー監視システム用スマートメーターなどの普及によって、質が高く豊かで活力に富んだ社会を目指すことができる。

また、気候変動対策の推進とそれに伴うイノベーションの展開は、日本経済の基盤と国際的な競争力の強化にも繋がる。気候変動対策に先導的に取り組み、より省エネで省資源型の経済構造(スループットのより少なく資源の効率性の改善された経済)を構築することは、国際的な低炭素市場での競争力をつけることにつながり、資源高騰による交易条件の悪化にも対処できることになる。低炭素競争力をつけた企業は、拡大していく世界の低炭素市場でも優位な地位を確保し、発展途上国や新興国の低炭素社会づくりに寄与することも期待できる。

『環境と開発への提言』
A5判/280頁 本体3200円+税

第I部 ――叡智の結集 いま私たちがなすべきこと

12か条のキー・メッセージ

1 問題の所在
1.1 はじめに
1.2 変化を引き起こす基本的な要因
1.3 世界的環境および地域的環境の現状と将来予測

2 解決に向けて
2.1 私たちのビジョン
2.2 行動の必要性
2.3 低炭素経済に移行するための技術上の選択肢
2.4 気候変動への適応
2.5 生物多様性の保護とその持続可能な活用に向けたアプローチ
2.6 食糧の安全保障
2.7 水の安全保障
2.8 リーダーの能力・適性
2.9 優れた統治(ガバナンス)の重要性
2.10 地域協力
2.11 革新と草の根の活動
2.12 知識の創出と評価

3 結論

第II部――「夢」の実現に向けて

[現状を認識する]
1 回復力のある人々,回復力のある地球―選ぶに値する未来(グロ・ハルレム・ブルントラント)
2 地球および地域の環境の現状と予測―環境,経済,社会的持続可能性への示唆(ロバート・ワトソン)
3 知られざる緊急事態(ポール・R・エーリック/アン・H・エーリック)
4 BRICSの台頭と気候変動(ジョゼ・ゴールデンベルク)
5 変化の動因としての人口動向(ロバート・メイ)
6 地球温暖化と水資源(真鍋淑郎)
7 農業と食糧安全保障(ロバート・ワトソン)

[気候変動]
8 気候変動――生物多様性を守り,自然の気候解決策を利用する(ウィル・R・ターナー,ラッセル・A・ミッターマイヤー,ジュリア・M・ルフェーブル,サイモン・N・スチュアート,ジェーン・スマート,デビッド・G・ホール,エリザベス・R・セリグ)
9 海水を利用した炭素隔離――気候変動軽減と順応への鍵(ゴードン・ヒサシ・サトウ,サミュエル・N・ウェルデルファエル)
10 人為的な二酸化炭素増加に起因する気候変動の不可逆性(スーザン・ソロモン)
11 気候変動への適応(サリーム・ハク)

[生物多様性と生態系サービス]
12 生物多様性――持続可能な開発の基礎を守る(ウィル・R・ターナー,ラッセル・A・ミッターマイヤー,ジュリア・M・ルフェーブル,サイモン・N・スチュアート,ジェーン・スマート,ジョゼフィン・M・ラングリー,フランク・W・ラーセン,エリザベス・R・セリグ)
13 環境問題を理解し解決する生態系アプローチ(ジーン・E・ライケンス)
14 生態系サービス――自然が人類にもたらす利益(ウィル・R・ターナー,ラッセル・A・ミッターマイヤー,レイチェル・ニューガーテン,ジュリア・M・ルフェーブル,サイモン・N・スチュアート,ジェーン・スマート)
15 われわれの遺産と生命維持システムの保護(ハロルド・ムーニー)

[政策と経済社会との連携]
16 炭素排出料と配当の必要性(ジェームス・E・ハンセン)
17 化石燃料の先へと移行する世界(エイモリ・B・ロビンス,ジョゼ・ゴールデンベルク)
18 気候変動,経済学,新しいエネルギー産業革命(ニコラス・スターン)
19 グリーンで公正な経済の追求(エミル・サリム)
20 政策と科学のネクサス(連環)――リーダーシップ能力の改善分野(カール=ヘンリク・ロベール)
21 優れたガバナンスの重要性(カミラ・トールミン)
22 革新と草の根の運動(バンカー・ロイ)
23 リオ+20――包括的成長によるグリーンエコノミー(M・S・スワミナサン)
『環境と開発への提言』によせて(松下和夫)

ⅰ Boulding, K. E.(1966), The Economics of the Coming Spaceship Earth,
http://www.ub.edu/prometheus21/articulos/obsprometheus/BOULDING.pdf#search='economics+of+coming+spaceship+earth'

ⅱ 環境と開発に関する世界委員会、大来佐武郎監訳(1987)、『地球の未来を守るために』、福武書店

ⅲ http://www.af-info.or.jp/blueplanet/introduction.html

ⅳ J.S.ミル、末永茂喜訳(1961)、『経済学原理(4)』、岩波書店、p109

ⅴ ハーマン・デイリー、新田功・倉本忍・大森正之共訳(2005)、『持続可能な発展の経済学』、みすず書房、p4-5

ⅵ 同上、p13

ⅶ UNU-IHDP and UNEP (2014), Inclusive Wealth Report 2014. Measuring progress toward sustainability. Cambridge: Cambridge University Press

ⅷ 馬奈木俊介(2014)、「問われる環境政策㊦ 経済運営、『新国富』向上軸に」、日経新聞2014年12月31日朝刊、UNU-IHDP and UNEP (2014)

ⅸ 広井良典(2009)、「持続可能な福祉社会の構想―定常型社会における社会保障とはー」、『会計検査研究』、No32(2005.9)p6

ⅹ 植田和弘(2008)「環境サスティナビリティと公共政策」『公共政策研究』8号、2008.11による。ダスグプタ、P.、植田和弘監訳(2007)、『サステイナビリティの経済学』、岩波書店も参照。

ⅺ UNU-IHDP and UNEP (2014)

まつした・かずお

1948年生まれ。京都大学名誉教授。(公財)地球環境戦略研究機関シニアフェロー。国連大学客員教授。環境経済・政策学会理事、日本GNH学会常務理事。専門は環境政策論、環境ガバナンス論。環境省で政策立案に関与し、国連地球サミット事務局やOECD環境局にも勤務。環境問題と政策を国際的な視点から分析評価。著書に『環境政策学のすすめ』(丸善)、『環境ガバナンス』(岩波書店)、『環境政治入門』(平凡社)。『地球環境学への旅』(文化科学高等研究院)。最新刊に『環境と開発への提言』(東大出版会)など。

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