現代の理論アーカイブ

現代の理論アーカイブについて

編集部

『現代の理論』アーカイブでは、第一次から第三次にいたる雑誌『現代の理論』に掲載された論文のうち、再読すべき主要論文を編集委員会が厳選して紹介いたします。また読者のみなさんのご要望にもお応えします。『現代の理論』は、発信媒体の多様化によって目先の時局論・政局に流されることのない骨太で息の長い理論や政策の発信を目指してきました。常に現実や実践への思考を内包し、理論の自立性を掲げての50年―それが雑誌『現代の理論』の歴史でした。そのような先達の営為をあらためて回顧することによって、「今だからこそ」問われなければならない現代的課題の再発見が可能となることを確信しています。

今号の特集は、資本主義の危機が進んでいることを明らかにするとともに、それが具体的にどのように社会に現れているかを明らかにする論文が揃っています。水野さんが指摘するように世界史的な観点からの変化も、また山家さんが説明するように日本の「構造改革政策」の結果としての格差社会も、ともに「資本主義の危機的状況」を示していると言えます。

その観点で、第三次『現代の理論』19号(2009年春号)に掲載された、橋本健二さんの「格差拡大と『新しい階級社会』」を取り上げました。今号の各論文で指摘されているように、今見えてきた「資本主義の危機」は、すでに20世紀末から始まっており、それが日本社会の様相を大きく変えてきていることがハッキリしてきました。掲載する橋本論文は、その様子をかなり以前にその実態を論じていたものです。

もうひとつ、この間、沖縄の辺野古移設反対の闘いや高江ヘリパッド建設反対の闘いが報じられる中で、闘いの現場で警備にあたる大阪府警の警察官が「土人」との差別発言をしたことが分かりました。この問題は根深く、私たちの意識をも問い直すことですが、それに関連して、同じく第三次『現代の理論』第14号(2008年新春)に掲載された、今号にも執筆されている千本秀樹さんの「人類館事件と差別の序列」を取り上げました。差別の深層に迫る論考は、沖縄と私たちの位相を照らしだします。

前号のこの欄でも述べましたが、これまで『現代の理論』が訴えて明らかにしようとしたことが、必ずしも力にならず、ますます悪い方向へ向かっているということのようです。本誌の内容を充実させねばならないと、改めて心から思います。

論文アーカイブ

第三次『現代の理論』第19号(2009年春)/特集「強欲資本主義からの訣別」

「格差拡大と『新しい階級社会』」武蔵大学教員・橋本 健二

第三次『現代の理論』第14号(2008年新春)/特集「日本国家の品格を問う」

「人類館事件と差別の序列」筑波大学教授・千本 秀樹

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