| 表1.「香具師一派の宣伝文書調」等 | ||||||||||||||
| 号数 | 日付 | 場所 | 行為或いは未遂 | 行為者 | 内容 | 宣伝文の処分 | 無産者革命 | 普選運動 | 被差別民解放 | 反軍隊 | 娼妓解放 | 農民解放 | 暴力革命 | 歌 |
| 1 | 1922/01/06 | 鹿児島県姶良郡 | 印刷所で印刷依頼も拒絶 | 吉田耕三他2名 | (新年の辞として)窮死の無産者新生へ | ○ | ||||||||
| 2 | 1922/01/27 | 石川県金沢市、河北郡 | 金沢市で千部印刷、2/6河北郡で約千部群衆に配布、2/6金沢市で普選運動中配布せんと上西が140枚持参するところを発見 提供 | 上西芳一郎、上西芳楠、永島善一郎 | 普通選挙の歌 | ○ | ○ | |||||||
| 3 | 1922/02/21 | 鹿児島県川辺郡 | 印刷所で印刷依頼も拒絶 | 吉田耕三、北野悟 | 普選要求、社会主義的時代の創造(無産階級同盟会) | 2/2不問 | ○ | ○ | ||||||
| 4 | 1922/02/20 | 鹿児島市 | 映画館で名詞(ギモンノチュウイジンブツ 露公爵ウーロウユシダージフの名)を示し新思想の宣伝を申し出るも拒絶、4,5,6号の歌詞3種配布も拒否に合い、大島に行く船中で歌を高唱 | 藤田愁浪 | テロリストの歌(虚無党の歌) | ○ | ○ | ○ | ||||||
| 5 | 1922/02/20 | 鹿児島市 | 同上 | 同上 | 露西亜革命歌(荒畑勝三作) | ○ | ○ | |||||||
| 6 | 1922/02/20 | 鹿児島市 | 同上 | 同上 | 革命行進歌 | ○ | ○ | |||||||
| 7 | 1922/04/06 | 広島市 | 映画館、電車内にて撒布 | 荒井信道嫌疑 | 金次第の資本家的経済に対し無産者階級は団結せよ(中国無産者連盟) | ○ | ||||||||
| 8 | 1922/04/02 | 福岡県糟屋郡 | 印刷所で3千枚印刷 8枚差し押さえも残余分不明 | 吉田耕三 | どんなに働いても幸福になれないのは金持ちの搾取のせい 現実は俺達に社会主義を教えてくれた(11.4耕) | 4/4禁止 | ○ | |||||||
| 9 | 1922/04/02 | 熊本市 | 8号と9号を撒布 | 富崎赤松、福本清人、今村繁寿、竹内大五郎 | 皆さんも人間ではないか、自由廃業を法律が認めている 脱出せよ 悪魔の手を | ○ | ||||||||
| 1922/07/14 | 富山県高岡市、富山市 | 高岡市にて印刷、富山市の遊郭において撒布しようと計画するが経費都合上中止 | 徳永参二 | |||||||||||
| 1922/10/03 | 兵庫県~岡山県 | 宣伝文7百枚所持 提供 | 福本清人 | |||||||||||
| 10 | 1922/05/05 | 鹿児島市他 | 九州各都市に不穏文一斉撒布を計画し未遂(後に大石?郎の内縁妻の手により熊本市で一万枚印刷されたものと判明) | 岩佐駒吉、本田真夫、仙波正男 | 無産者に檄す 暴虐なる資本家に膺懲を 我々の運動は議会や法律や特権階級にすがらずあくまで自主的運動 | 5/6不問 | ○ | |||||||
| 1922/05/05 | 鹿児島市 | 不穏文一斉撒布を計画し未遂 | 斉藤正吉?、崔正守、藤田人志 拘留20日 | |||||||||||
| 1922/05/06 | 佐賀県佐賀駅等 | 不穏文300余り撒布、残り収去 | 二宮峯義、林田義馬 | |||||||||||
| 1922/07/28 | 長崎県佐世保市 | 宣伝文撒布 | 岩佐駒吉、林田義馬嫌疑 | |||||||||||
| 1922/08/01 | 大分県立石駅 | 移動中の列車内で配布 | ||||||||||||
| 11 | 1922/05/09 | 岐阜県羽島市 | 神社祭礼境内、付近の樹木・電柱に貼付 | 木村元七郎、水野?麿、森弥吉嫌疑 | 革命歌(ああ革命は近づけり) | ○ | ○ | |||||||
| 12 | 1922/05/26 | 京都府与謝郡 | 与謝郡にて12,13号の2種不穏文4千枚印刷依頼を取り調べ 海軍舞鶴工廠職工に撒布する計画 原稿提供 | 吉田耕三 | 金持が労働の余剰価値を略奪し労働者を搾り取り全ての機関が我々を圧迫する不条理 社会主義的時代の創造(1922.5) | ○ | ||||||||
| 13 | 1922/05/26 | 京都府与謝郡 | 同上 | 同上 | 剰余価値の奪還、手段は無産者階級の自覚と団結(1922.6) | ○ | ||||||||
| 番外 | 1922/05/26 | 鳥取駅列車内 | 無産者リーフレット『金持と貧乏人』を無料で配る者あり | 徳永何某より受けた由 | 不明 | 既に不問のもの | ||||||||
| 14 | 1922/06/07 | 青森市 | 6/7青森にて射幸的手法にての万年筆の販売を中止さるを不平の口吻 北海道に車で向かう出発に際し5百余枚の宣伝文撒布 | 山本盛夫、千光寺正義 | 徴兵適齢者諸君に檄す、軍国主義と資本主義の城砦に向かって肉迫せよ | ○ | ○ | |||||||
| 15 | 1922/06/02 | 青森県弘前市 | 不穏文約5百枚印刷依頼を拒絶さる | 真野五郎 | 資本家の為に安き賃金で働き馬鹿も甚だし、起てよ労働者 | ○ | ||||||||
| 16 | 1922/06/30 | 広島県三次市 | 宣伝文印刷中に原稿押収 | ?、森重? | 資本家という十二指腸虫のような途中で強奪する奴から欺されてきたが俺達で生産する 俺達が消失するものは鎖だけだ、得るものは全世界だ | ○ | ||||||||
| 17 | 1922/06/19 | 石川県 | 8,9,17,18号の4種の宣伝文5百枚を印刷依頼 阻止さる | 徳永参二 | 俺は穢多が誇りだ、労働者も百姓も誇りだ、我々穢多が社会改革運動の第一先鋒になる(徳永参二 リーフレットより) | ○ | ○ | |||||||
| 1922/07/25 | 和歌山県田辺町 | 宣伝文印刷依頼するも、射幸的手法にての万年筆の販売を取り締まり厳重のため売り上げなく印刷物受け取れず | 徳永参二 | |||||||||||
| 1922/08/03 | 徳島市 | 9,25号に大同小異と17号を印刷依頼も同業者は官憲から注意を受けており未遂 | 徳永参二他4名 | |||||||||||
| 18 | 1922/06/19 | 石川県 | 8,9,17,18号の4種の宣伝文5百枚を印刷依頼 阻止さる(17号の1番目と同件) | 徳永参二 | 農村は労働者を供給してさびれる 大地主は資本家で自作農も小作人に落ちる 兵役も農民が負担 労農団結 (無産者より) | ○ | ○ | ○ | ||||||
| 19 | 1922/07/17 | 鳥取県境町 | 宣伝文2千枚印刷 任意提供さす | 横山七郎 | 略奪の武器通貨を廃止、ブルジョアを?せよ、軍隊は牢獄なり 戦争に正義の軍は唯の一つもない(世界同胞主義連盟) | 全部任意提供したるをもって禁止 | ○ | ○ | ||||||
| 20 | 1922/08/01 | 豊崎線門司駅~別府駅 | 洗面所、便所出入口に3,10,20号の宣伝文3種、貼付及び撒布 車掌が破棄 | 小作人は米を遊んで食っている地主のために牛馬の如く使われている 反抗するなら団結せよ | ○ | ○ | ||||||||
| 21 | 1922/07/06 | 大分県別府市 | 電柱に宣伝文15枚貼布 | 赤野万平嫌疑 | 資本家の為に牛馬となるべく生まれて来たのか 人間と呼ばれたければ資本家に反抗せよ | ○ | ||||||||
| 22 | 1922/07/24 | 鳥取県米子 | 米子駅列車中にて墨香せる宣伝文7枚撒布 | 横山七郎嫌疑 | 暑いのに真っ黒になり働くが金持は温泉や氷や扇風機、芸者 資本家を〇○して復讐しよう我々の復讐は神の与えた道徳だ(1922.7 社会主義宣伝会) | ○ | ○ | |||||||
| 23 | 1922/07/15 | 広島県芦品郡 | 戸寺村天王例大祭にて曲神楽中に23,24号の宣伝文2種を8,9枚撒布 | 三宅磯吉嫌疑 | 金持ちは遊んで何故金が増える 貧乏人には与えられたる権利はないか 社会制度に欠陥があるか調べてみなければならない | ○ | ||||||||
| 24 | 1922/07/15 | 広島県芦品郡 | 同上 | 同上 | 皆さんも人間ではないか、皆さんの手で鉄鎖を切れ | ○ | ||||||||
| 25 | 1922/07/30 | 岡山市 | 宣伝文千枚印刷依頼拒否 | 福本清人、太田伝太郎、島田文次郎嫌疑 | 金持特権階級のおそれる社会主義はどんなものか労働者や貧乏人に幸福を与えるにちがいない 目覚めよ兄弟諸君 | ○ | ||||||||
| 1922/08/19 | 愛媛県今治市 | 25号大同小異と9号の宣伝文3千枚印刷依頼、通報、中止 | 徳永参二 | |||||||||||
| 1922/09/08 | 高知市 | 賭博の嫌疑で取り調べの際25号1枚、8号3百枚所持 | 福本清人 | |||||||||||
| 1922/09/25 | 鳥取市 | 映画館で2階より約20枚撒布 | 福本清人嫌疑 | |||||||||||
| 26 | 1922/07/31 | 大分県宇佐町 | 4号、26号の2種宣伝文40余枚撒布 | 吉田耕三、荒井武雄、二宮峯義、本田真夫、赤野万平嫌疑 | 我々の敵は資本家だ 官憲の迫害に苦しめられても同志無産者の為に益す考えだ | ○ | ||||||||
| 1922/10/03 | 岡山市 | 宣伝文印刷依頼拒否 | 菅原真二 | |||||||||||
| 27 | 調書の記録なし | 危険危険資本家の横暴は 危険危険無産者諸君よ云々(左側宣伝) | ○ | |||||||||||
| 28 | 1922/08/27 | 福山市 | 電柱に宣伝文貼付発見 | 神戸の惨敗(注:1921 年の川崎・三菱造船所争議を指すか)に憤怒したが、諸君の立派な行動に躍り上がった 資本家に対抗する労働者の行動は正当防衛である(アクマデヤレ) | ○ | |||||||||
| 29 | 調書の記録なし | 俺達の前には何もないのだ、唯革命があるばかりだ 資本家の暴力に対抗する労働者の行動は正当防衛である | ○ | |||||||||||
| 30 | 1922/09/01 | 広島県安芸郡 | 印刷依頼拒否 | 福本清人 | 金持や特権階級の為に一片のパンを得るを永遠の心配 幸福な社会主義時代へ急ごう 目醒よ兄弟よ | ○ | ||||||||
| 1922/09/05 | 広島市 | 宣伝文印刷依頼を発見 翌日受け取りに来た2名取り押さえ | 岩中、上西(芳楠?) | |||||||||||
| 31 | 1922/09/14 | 広島県山県郡 | 山県郡街道で十数枚、安佐郡で数枚、可部町で70余枚撒布 | 吉田耕三、本田真夫、崔正守 | 労働者階級を骨子とした国家の政治は労働者の選挙によって国是を宣しなければ幸福は永遠に望まれぬ 自由と平等の社会を作る事は諸君の責任にある | ○ | ○ | |||||||
| 1922/10/01 | 兵庫県豊岡町 | 人家板壁等に宣伝文を貼付 | 藤田人志、他同伴者田村、野間嫌疑 | |||||||||||
| 1922/10/15 | ? | 170枚所持を差し押さえ | 藤田人士(志) | |||||||||||
| 32 | 1922/09/17 | 広島県安佐郡 | 宣伝文を作成、印刷しようとするところを中止、原稿提供 | 内堀益亀 | 鉄道の旅に(混雑で)往生している 我々は荷物ではない 遠慮なく1,2等に乗れ | ○ | ||||||||
| 33 | 1922/09/01 | 長野県豊科町 | 射幸的手法にて万年筆の販売をした上野義雄他1名を検挙、拘留のところ両名放還を申し出た者厳重視察したところ、豊科町にて宣伝千枚印刷したのを発見 | 千葉昌則 | 365日正直に働いて何で貧乏する 十二指腸(虫)のような悪魔のような資本家がいるからだ | ○ | ||||||||
| 34 | 1922/09/12 | 佐世保市 | 遊郭付近の路上で宣伝文約4千枚撒布 | 乙号特要松尾清吾、吉利磚一、江頭一樹 | 善良な泥棒は警視庁へ 真実の大泥棒は帝劇へ 起て労働者 奴隷労働は既に過去の遺物だ(暴には暴を報ぜんと の『吾党の唄』歌詞あり) | ○ | ○ | ○ | ||||||
| 35 | 1922/09/18 | 佐賀県唐津市 | 万年筆の抽籤販売を中止 その際宣伝文多数所持 提供 | 甲号特要 大西昌(福岡で2千枚印刷 6,7百枚を三野啓に、大西7百枚を福岡自宅に所持を提出) | 『九州労働者』発刊に際して 君等の黒い尊い手によって造り出された富は何処へ行ってしまうのだ じいっと気を落ち付けて「富のゆくえ」を探求すべきだ ここに我々の声を掲げん(1922秋「九州労働者」李全伯、大西昌、ベノフスキー、三野啓) | ○ | ||||||||
| 36 | 1922/09/23 | 福井市 | 約20枚撒布 | 勝西恵次郎、鈴木富近嫌疑 | メーデーの歌+ドイツ労働者の敵は資本家・大地主 日本も同じ(共産党員) | 9/26不問 | ○ | ○ | ||||||
| 1922/09/24 | 福井市 | 遊郭内において宣伝文5,60枚撒布 | 吉村宗斉、鈴木富近他1名 | |||||||||||
| 1922/09/24 | 福井市 | 遊郭街路にて宣伝文数十枚撒布 | 勝西恵次郎25日、鈴木富近15日勾留 | |||||||||||
| 1922/10/04 | 富山県高岡市 | 印刷5百枚注文 取り調べの際39号を石川県で印刷 490枚広野栄一に郵送、2枚巡査へ、8枚所持と供述 | 鈴木虎雄 拘留7日罰金25円藤野?25円罰金完納せずば拘留百日 | |||||||||||
| 37 | 1922/09/27 | 広島市 | 電柱其の他に31,37号の2種貼付 | 門脇久馬、内藤正 科料19円禁錮20日 | 一番大切なものは自分の命だと三才の子でもいう 資本家の横暴は我々人類の生存権さえ蹂躙する 敵である資本家と走狗の官憲を血祭にして幸福を得よう | ○ | ○ | |||||||
| 1922/09/28 | 広島市 | 新天地の映画館にて宣伝文を階上から階下の観客へ約百枚撒布 | 崔正守 | |||||||||||
| 38 | 1922/09/24 | 鳥取県米子町 | 宣伝文貼付 | 福本清人嫌疑 | シベリア出兵批判 ロシア労農政府の承認と北樺太からの撤退ロシアの経済封鎖解除要求 | ○ | ○ | |||||||
| 39 | 1922/10/11 | 石川県金沢市 | 39号を所持、破棄させる その他31号を所持 | 斉藤武男 | 凱旋?悲哀?国恥?(注:シベリア出兵への批判か?) | |||||||||
| 40 | 1922/10/04 | 岡山市 | 宣伝文印刷依頼拒否 | 来月中旬 ? 頭脳ある者は社会〇○○と共に共鳴団結 | ○ | |||||||||
| ? | 1922/10/18 | 愛媛県松山市 | 宣伝文電柱其の他に百余カ所に貼付 | 三好重平、石川万平、指示者山崎徳士郎嫌疑 | ||||||||||
| 表1 警保局保安課「香具師一派の宣伝文書調」「香具師一派の利用したる宣伝文」大正11年1月より10月(『1920年代社会運動関係警察資料』廣畑研二編、不二出版刊のマイクロフィルム)より要約したもの(作成:大場ひろみ) | ||||||||||||||